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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第14譚{護衛の任務}
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⑤ Guerrilla


「何も無かったね。」


 バース村まで残り2時間。アラタは不安そうな顔をしている。


「護衛任務で年がら年中襲われてたら、悪党の多さを褒めざる負えない。本来の護衛任務ってのは襲いづらいだろっていうアピールの役割も有るから襲われた時点で舐められてる。特に今回は護送、タイムリミットも安全なルートも選び放題。何も無いのが普通なんだよ。」


 俺はフラグになりそうなことをペラペラと喋ってしまう。まぁ実に正しいことばかり、検算しているに過ぎない訳だけれども。他の護衛隊の状況は見えないし、俺たちは名の馳せたクランじゃない。それなのに本隊の俺たちが無事でいられるのはミックの優秀な計算のおかげか。時に彼の不安の種は悪党ばかりでは無いのだろう。


「俺はこんな長い距離通うのか!?」


――あぁ、そういうことか。


「それは安心しな。城下街あっちの学校が始まれば機関車で一跳びだよ。」


「機関車が出てるの?っていうかソレ使えば良いのに。」


――それは知ってるのね。


「まぁ。公共の乗り物を貸し切って“魔法で制御している機関車”で護衛するのはリスクが有るんだろ。この世界は化学が発展しない、水やただの重力ですら魔素が絡めば日頃から不安定。石炭ですら爆薬になる。それに指揮官にはいつだって予算の制限が有るから、現状はこれが最適なんだろ。」


「なるほど…。」


 アラタの理解は実に早くて助からない。むしろ困る。


「それにその歳でそれだけ賢ければ特待生にでもなるんでねぇの、そしたらあの素晴らしい城下街で有名な勇者様と肩を並べて街を歩くような、夢の寮生活が待ってるんでねぇの。知らんけどさ。何にせよ俺はお前の活躍を期待しているよ。」


 俺の言葉にアラタは嬉しそうに鼻を鳴らして笑った。


「ナナシ。」


 テツがまた顔半分を出し屋上を覗いてきた。


「何だね。」


「天候が変わる、かもしれない。」


 車内の空気が先に変わる。


「了解した。」


 魔素が絡めば大気の状態も無論不安定だ。そして魔素量は地方によって異なる。だから旅人は先手先手で行動する。ここテストに出ます。


「さて、中に入ろう。優秀な魔法使いがいれば天気なんて操れるんだけどな。」


 俺は飯だの道具だの散らばっていたものを風呂敷にまとめて縛っていく。


「セカイ…さん、は優秀じゃないのか。」


 さん付けに格の違いを思い知らされる。高貴っぽいからですかね。


「もちろん優秀だよ。ただ優秀のベクトルが違う。例えば……、俺は魔法が使えなくなる前までは炎の魔法が使えていた。」


 荷物を抱えて階段を降りながら、アラタと一緒に各々が談笑するキャラバン内へ、しかしいつもより狭く感じる。というか狭い。


「ただ、魔法は極めれば極めるほどに幅が利かなくなってくる。つまり、炎魔法に特化した人間になっていくってこと。でも魔法を特化させるような人間は主に戦いで飯を食べている。俺たちみたいな旅人や普通の生活をする人はもっとマルチに浅く広く魔法を習得するのが一般的らしい。」


「誰も使えないじゃん。」


「痛い所をつくな…。魔法は難しいんだよ、炎魔法特化にさせるため鍛錬させられていた俺でさえ小さな火の玉を24時間維持し続けるのは難しかった。でもそこにいるセカ、アリス…。いや昨日会ったセカイさんは1つの装備を四六時中身に付けてるだろ。ああいうのは魔法量が多いから安定しているワケで、上級者の証拠だったりする。」


「へぇ、そんなのもあるんだ。」


「とにかくいっぱい習うと良いさ。人生短し悪党多し。」


 俺がせっせと動く中、外では強い雨が降り始める。この勢いならゲリラ的だ。直に止むだろう。


「そうそう、魔法で生み出す雨もこんな感じ。予兆なくサァっとね。なぁ、テツ?」


 にこやかに話しかけた俺に対してテツの表情は硬い。


「どうした?」


「敵だよ。」


 俺の鈍り方を皮肉る様に仮面の中のセカイが笑った。






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