97話
~「天風壁」って書くと可愛げがあるんだけど「怒髪天壁風」ってかくと激おこ感でるね~
ぁぁぁぁぁぁぁ――……
クレイブの断末魔が治まると、ドゥエスの拳を受けたところからボロボロと崩れていくその肉体のまま身を捩って、まだ何かこちらに向かって手をかざしてきた。
まだやるつもりか!
「ふん!同じ術は効かんぞ」
「エリー(仮)ちゃん」
今度は別の術を展開しようとしたところだ。
風に乗ってある声が聞こえてきた。
「お待たせしましたわ、【天風壁】!」
ガゴォ!!
精霊王と、俺とドゥエスの間に風の壁をつくり、精霊王の力を防いだらしい。
勢いが強かったらしく、その身体ごと、瓦礫の壁の奥へと追いやっていた。
「その声は、レニア?」
声のした方向を振り仰ぐと、中空から風を纏って一つに結わえた髪をはためかせるレニアの姿があった。
「レニアちゃん!飛びながら風の魔法だなんて、高難度の魔法使えたんだ」
ドゥエスはびっくりしてレニアを見上げる。
確かに、飛びながら精霊王の力を防ぐほどの防御魔法を繰り出したとあれば、
「――っと」
レニアが風を纏って降りてくるのを見届けると、ドゥエスが近づいてきて、レニアに詰め寄ってきた。
「レニアちゃん、その力は?」
その勢いに押されてか一定の距離を保とうとして、俺と目が合うと、俺の後ろに隠れた。
その動きたるや素早すぎて。目で追うだけだった。
当のレニアはなぜか俺を盾にして、勝ち誇ったとばかりに、隠れながらも返事をした。
「これは、風の精霊さんの力ですわ」
纏っていた風はどこかいき、落ち着いたようだ。
「風の精霊?俺たちを嵌めようとしていたじゃないか。なんでまた?」
「あれは私たちの勘違いですわ。風の精霊さんは、精霊王を倒そうとするドゥエスさんから精霊王を護ろうとしていただけじゃないですか」
勘違い?
いや、俺は……
「風の精霊が精霊王を『護る」だって?そんなのでまかせに決まっているじゃないか。いいか、風の精霊ってのは、口先だけで人を惑わすような悪女なんだよ!見た目に騙されちゃだめだよ!」
【ひどいわ、わたしはただ――、精霊王を滅ぼして、世界のマナの均等を崩そうとしている悪者から精霊王を護りたいだけなのに】
「私だって騙されているわけじゃありませんわ!ちゃんと同意のもとで風の精霊と契約しましたもの!」
「契約?」
「ええ、精霊石を口に入れて……まだ違和感がありますけど」
云って胃のあたりを軽くさすっているレニアに内心驚いたが、そこまではひどくないらしい。それにしても石を口に……とは、とんだ度胸だな。
「えぇ、なんだそりゃ!?」
「契約のために精霊石を呑んだ?何を言ってるんだ――」
緊張したようなドゥエスの声
「そ、そんなことしたら……って、レニアちゃんいますぐソイツと契約解除して離れてくれ!」
ドゥエスは焦っているようだが……
「ドゥエス?何を焦っているんだ?」
【……誰があなたのいうことなんて聞くもんですか】
ぽつりと風に流れてどこからか冷気を纏ったかのような声が聞こえてきた。レニアの口から出たようにも聞こえたが、気のせいか?
ブワッ
突如現れたつむじ風はドゥエスの周りを取り巻いて、やがて土埃で覆い隠してしまった。
「うわっ!っ前が!いや口に砂入ったんですけどこれ地味に嫌なヤツ……!?」
土埃に閉じ込められたドゥエスからは文句が聞こえてきていることから、若干余裕そうだなとはわかるが……
ドゥエスの後ろの方で、精霊王クレイブがゆっくりとだが、起き上がっているのが見えた。
流石に致命的にはならないらしいな。
―ゥグぃえぐヴー
なにか喋っているが、相変わらず何をいっているのか分からないな。
【雷鳴】
これを拳に……
ッチ―…ドン!!
一瞬、閃光が視界を遮ったかと思ったら、土煙が爆発した。
……
…………
「ド、ドゥエス、すまん成仏してくれ……」
「げふん」
ドゥエスの拳に魔法を込めていたやり方に近いが、俺の得意分野はあいにく火ではないため、見よう見真似ですぐ出来そうな雷を落とす術でやってみたんだ。
まあ、うっかり火事の素になったが。
「粉塵爆発か―」
「いや、さすがにドゥエスさんに同情しますわ」
レニアは俺の後ろに隠れていたため爆風を受けずに済んだらしい。
「……大丈夫かドゥエス?」
「うん、――とっても過激な☆救出?ありがとうエリー(仮)ちゃん……げほっ」
砂でむせてるドゥエスの腕をつかんで引っ張っていやると、あっさりつむじ風の中から出て来た。
その紅髪も焼けてすらいない。
流石だな。
「頑丈でなによりだ」
【簡単に死なないとか、厄介ね】
ぶつくさ云う風の精霊の声はレニアの方から聞こえてきている。
「お兄様……」
「レニア……今すぐそいつとの契約を切れ」
「え、でも」
「俺はドゥエスと敵対するつもりはないぞ」
「……はい。……あれ。」
戸惑いながらも胸に手を当てて、なにやらぶつぶつ呟いている。
「どうした」
「どうしましょう?上手く制御できない……?」
「おいおいおい」
手をこちらにかざしたかと思うと、
【風迅】
「って、私なにして―ーよ、避けてください!」
人ほどの大きさもある『かまいたち』が俺たちに向かってきた。
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