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精霊通信録  作者: 襾犲 邑
また来たドゥエスのターン
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89話

おひさしぶりのドゥエスのターンです

ドゥエスサイド*





あいつら、オレがいなきゃ精霊王のところなんて行けっこないし、封印も解けないっしょ。ヨユーヨユー☆


いくらオレがいろいろと頑丈な体を持っているって言っても、こんな瘴気まみれの場所に長居なんてしたくないし。

気分的に嫌なんだよな。


風の精霊である『あの女』とまともに対面したのはははじめて会ったけど、さすがに精霊王の封印を解こうだなんて考える精霊なんていないしな。

あの二人が交渉する時間は暇になると思うから、今のうちに先回りしておけば……とエリー(仮)ちゃんとレニアちゃんたちの広場から少し離れたところを歩いていた。



「兄さん!どこ行くのさ?」


「カーヤ、ついてきたのか」


水の精霊もカーヤと一緒にオレに付いて来ていた。オレがこれからすることを説明しようか、安全なところに避難してもらった方がいいのか、悩んでいるとカーヤは、怪訝そうにオレを見つめている。

そんなに見たら穴が空いちゃうって☆女子限定でだけど。


「エリー(仮)ちゃんとレニアちゃんは?」


「あの二人なら風の精霊と話していたよ。兄さんも風の精霊と交渉すると思ってたのだけれど、どうして諦めたの?」


【どうせアンタに都合が悪い事情あんでしょ?】

流石に水の精霊にはバレてるか……

オレがなんて言って誤魔化そうか悩んでいると、水の精霊にはバレているのか


水の精霊はニタリといたずらな笑みを見せてきた。

【風の……あの子は精霊王を復活させたいんじゃないかしら】


「は?」

なんで?


【アタシにも本心は分からないけれど、精霊王の封印を解く方法を知っているみたいだわ】


解く方法?

お、オレは誰にも言っていないぞ?!

教会の奴らにも、魔導士の奴らにも……

あ、いや、そうじゃなくて……



*




「カーヤ、水の精霊(ソイツ)とここにいてくれ。すぐ戻るから」

【その必要はないわよ】

踵を返そうとしたところ、水の精霊とは違う声が聞こえた。



ビュウーー


目の前につむじ風が沸き上がり、やがて女の身体になる。

さっきよりも少し実態がはっきりしているようだ。


「風の精霊……、さっきまで向こうにいたんじゃなかったか」


【それなら大丈夫よ】

水の精霊の美しい顔に険しいしわが寄る。

どんな顔をしていても美人に変わりは無いっていうけれども、そんなに目尻が吊り上がったら、美人さんが台無しだぜ。

むしろちょっと怖いなぁ、夢に見そう。


【久しぶりですね、お姉さん。さっきのお二人なら、冷たい誰かさんと違って、誰よりも親切なこの私が目的の場所へ向かわせました】


オレに一瞥をくれながら水の精霊に向きなおる。

冷たい誰かがいたのか、ひどいやつだなぁ。

なんとなく目線を逸らしたのは……ご愛敬ってやつさ☆


あいつのいる『ゆりかご』の場所なんて、そう簡単にたどり着けるわけないだろって自身はあるんだけど、なんだか嫌な胸騒ぎがあるなぁ。

できるだけ表情に出さずに、内心慌てて先ほどの広場に戻ると、二人はすでにいなかった。



*



【言ったでしょ、案内したって。もちろん私特性のコンパスを渡したわ。力の弱った精霊王さまには、活きのいいごはんが必要なのよ。】


「ご、ごはん?なんのこと?」


疑問を口にするカーヤに説明する。


「おおかた、彼らを先に行かせて精霊王の生贄にでもしてやろうってことだろ?」


「えっ!?い、生贄って……エリー(仮)さんとレニアさんをってことですか?大変じゃないか!」


「……やりやがったな……!」

声からも、オレの余裕のなさが出てしまっていたようだ。


「に、兄さん、落ち着いてよ」


くすくす……

……― ―


おかしそうに笑う風の精霊の声が脳内にこだましている。

今までのような含んだような笑顔から、屈託のない満面の笑みを浮かべる風の精霊。

どうにも気色の悪い女だ。



**



「まあ、待てってカーヤ」

あわてて踵を返そうとするカーヤの襟首掴んでやる。


「止めないでよ兄さん!今からでも追いかければ間に合うんじゃないの?」


違う、そうじゃない。


【今は動かないで。来てるわ】

そういいながら、カーヤの背後霊がごとく後ろに控えていた水の精霊がカーヤの前に立ち出て、注意を促してきた。


……ル……グルル………


瓦礫の陰から、何かが這い出てくる。

人間ほどもある黒い毛むくじゃらの何かにも見えるソレは、唸りながらオレたちとの距離を縮めてきている。

素手のものもいるが、中には錆びた剣や槍などの武器を携えて――


風の精霊の眷属というより、ここまで来て『大元の瘴気』に充てられた残念な冒険者や盗掘者たちだろう。

この地の瘴気にまみれて、正気を失ったってやつだよな。




―オレ、いまなんかいいこと言わなかった?

きのせい?




【相変わらず性根が腐っているわね】


【姉さんも私の邪魔をするの?】

傷ついたかのような困った表情で水の精霊を見る風の精霊の表情は、どこか幼かった。


【邪魔ですって?勘違いしないでちょうだい。アタシはアタシの契約者を護って何が悪いの?】


「兄さん、アレって何者なの?」


「あ、あれか、あれは……なんていうか…………敵だよ」

思わず人だったとか言いそうになったけど、今は色々説明している暇もないし、カーヤにはここから離れてもらいたいから、適当に流しておく。


風の精霊は自分から何かをしようとはしていないようだが、『黒いの』はオレたちに向かってきた。


【防陣】

――ガキン!!


簡易な障壁を展開して武器を防いだ。

多少なら防げそうだけど、錆びてるのはなんとなく触りたくないし。

思考能力が小動物以下に低下してるのか、武器を乱雑に振り回すだけで避けやすい。


【アタシの浄化でも喰らいなさい!】


水の精霊が両手を宙に掲げ、カーヤを中心とした範囲で浄化の術をかけてきた。

しかし思っていたより、その浄化が間に合っていない。


「ちょっとカーヤを安全なところに連れてってくれない?」


「兄さん?」


【いいけど、何するつもりなの?】


「――ちょっぴり、焼却処分?」


だから近くにいると危なくなるよって言おうとしたんだけど、カーヤの眼差しが期待のそれになっている。


「兄さんのすごいところ、たまには見てみたいなぁ」


わあ、しまったあ……☆

墓穴、掘ったかも





閲覧ありがとうございます。

次の投稿は 4/30 の予定です。

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