9話 ※注意
ちょっぴり痛い表現あります。
苦手な方はお戻りください。
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耳のイヤリングに触りながら
「…………いるか?」
【ーはい、ここに】
つぶやくと地面が呼応して精霊の声が聞こえてきた。
次いで姿を現す地の精霊ちゃん。
「あの男、捕まえてくんねえか?生死問わないから」
【あら、そこは正義の使者よろしく『生かしたままで』とは言わないんですね?】
「あいつは男だからな。これで女だったら精霊に頼まないで自分で何とかしているさ。」
【あら、精霊使いの荒い方ですこと】
そういうと、目の前から精霊は姿を消した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
……ズズン……
「うわあああああ!!!」
離れたところで、地面の揺れる音と
下半身が土砂に埋もれている男を見つけた。
「いたいた」
「た、助けてくれ!もう何もしないから…!」
そっと右手でそいつの腕を掴む。
「ありが―」
「ふぅん…」
右手に持った腕を逆に捻ってやる。
ぼぎん!!
腕の関節が外れる音が響いた。
「―っ!ぐああああ!!」
「このくらいで悲鳴上げてんじゃねぇよ」
逃げられないようにしてるだけじゃねえか。
魔法使われても面倒だし。
本当は足でも折ってやりたいところだが、残念ながら土砂に埋もれていてはどうしようもない。
……出してやる気なんてないけどな。
「―で、お前、これ以上何かする気でいる?場合によっちゃ、今お前ごと片付けてやるけど?」
そう言ってやるのは情けだ。
甘いのかもしれないが。
「もうなにもしません!召喚した魔物も全部片付けます!!だから、だから助けてください!!」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃに歪んだおっさんの胡散くっせえセリフばっかりで、目と耳が腐りそうだ。
さて、どうすっかな?
【アタシ、欲しいものがあるんだけど】
地の精霊が上目遣いでおねだりしてきた。
「ヒッ!じ、上位精霊!?」
流暢にしゃべる精霊を目にして男の顔が青ざめる。
「女子に欲しいものねだられたら、このドゥエスおにーさん、張り切っちゃおっかなー。ところで欲しいものて何?」
こいつの金品奪っちゃえ☆とかそんな感じかな〜?それなら同感ー
【魔法使いの舌って、普通の人間より長いと思わない?】
……へ?
見ると、頬を染めながら男の頭部に目を向けている精霊―
いやそういうのはやめてもらいたいんだけどなぁ…
【無理なら、頭ごとでもいいんですけど】
言いながらどこから取り出したのか、短剣を差し出してくる。
………
…え、えぇーっと………
戸惑って手が出せずにいるオレに精霊はひとこと
【精霊王の封印、アナタがやったんでしょ?】
「―っ!?なぜそれを?!!」
誰にも言ってない筈なのに?!
【まだ人間であるアナタには分からないでしょうけど、アタシたち精霊には分かるのよ。繋がっているから】
そう言う精霊の表情からは、無表情すぎて怖いくらいだ。
こいつ、精霊王の仇でも取るつもりか?
身構えると少し優しい笑顔になった。
【安心してくださいな。アナタには生きていてもらいたいし、アタシにはアナタを殺すことなんて出来ませんもの。そのかわり、ちょっとだけ我儘を聞いてもらいたいなーって思っただけで】
「……そんなの、卑怯だぜ」
【あら、どの口が言うのかしら?自分の欲求満たすのに他人は傷つけられるのに、他人に言われたら興覚めするって何様のつもりなの?】
さすがにぐうの音も出なかった。
脅迫じみたものを感じ、差し出された短剣を手にすると、男に向き直った。
刃物は苦手なんだけどなー。
男の顔は恐怖に歪み、悲鳴とも嗚咽とも取れない声を出した―
森に響く悲鳴―
【……たかったのよね。……とう、…てくれて…】
ぽそりと言った精霊の声は悲鳴にかき消されてよく聞き取れなかった。
ありがとうございます。
次は10/25の予定です