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精霊通信録  作者: 襾犲 邑
ドゥエスのひと仕事
8/108

8話

ドゥエスの戦闘

8

**************



アシャト村の西の森に何かあるんじゃないかと言ってたパンのおっさんの言葉を鵜呑みにして森に入ったオレと自称・商人の男。



「準備はいいか?」

と短剣を持つ男。


こっちの台詞だ。

「誰に向かって言ってるんだ?」

対するオレは特に武器を持ってはいない。


森に入る前に村長から『何も武器を持っていないようじゃが?いいのか?』と心配されたが、力こぶを見せつけたら安心してくれた。

パンのおっさんは『すまねえ、疑いたくないんだが、なにぶん小さい村だから…』と新参者のオレに小さく耳打ちして、『めっちゃ硬いパン』をくれた。兵糧か有事の際の武器にでもしろと言いたかったのだろうか?


ありがたく前者にさせてもらおう。



「なんの訳あってアシャト村にいるか分からないが、俺はあの村に借りがある。最近来たっていうアンタを信用してるわけじゃないんだぜ。何か不振な事でもしてみろ、魔物の餌にしてやる」



どうやらコイツはオレを疑ってるらしいな。

「突然外から来て、カーヤ坊ちゃんの所に居候して、あんた何もんなんだよ?」

坊ちゃん?


「オレ?ただの人畜無害な一般人だよ?カーヤにちょっと餌付けされたけど」


男は眉根を寄せて、シワを作った顔を隠そうともしない。

「フン、信用できるか…!」


「お好きにどーぞ」

いつもこうだ、何故か知らないけどしょっちゅう男には嫌われる。

ってゆーか、一方的に敵意を抱かれる。

なにかあんのかなー?

手あたり次第に出会った女に声かけまくってるくらいしかしてねえのに。

まあ男に好かれても嬉しくねーけど。


短剣持ってても細腕の人にすごまれても全く怖くないっていうか…

「魔物探しに行くんだろ?早くしろよ」


なかなか歩こうとしないのはオレを先に行かせるつもりか。

まあ男のケツについていくよりいいけど。





********************************************************




森の中まで歩いてきて、開けたところに出た。

なにか儀式でもやっていたのか、石のサークルとロウソク、木の欠片が散らばっていた。

あと分かりやすく、魔法陣がそのまま残ってる。



オレは男に向かって質問をした。


「知ってたか?マナって『視える化の術』使っても、誰でも見えるわけじゃねぇんだぜ?ーアンタが魔法使いじゃなければな」

「な、なんの話だ?」


「畑の土に細工しておいたんだが、アンタさっき見えてたんだろ?不浄の土とかほざいてたもんな?なぁ、『魔獣使いの落ちこぼれ』さん?」


そう、オレはこいつを知っている。

西部地方にいたときに遠目にしたことがあったぐらいで、いちいち名前は覚えてなかったが、魔獣の研究をしてどっかのお偉いさん相手にやらかしたとかいうよくある奴だ。


商人に化けてたのは知らなかったが、まさかここで会うことになるとは思ってもみなかった。


「―っ!なぜそれを?!ばれていたのか!!」


「どうせ、魔物でも喚んでたんだろ?」


「ふん!あの愚か者の村人たちを魔物の生贄にして上位召喚をしようとしていたが、バレちまっては仕方ない!!」

そう言うとジョーは持ってた短剣を捨て、隠し持っていた杖を手にした。



「我の邪魔立てをするのなら、ここでおとなしく塵になるがいい!炎よ!!」

そう言うと火炎の魔弾を放ってくる。


「そんなのお断りだ!」

魔力を拳に込めて


バシュン!


拳でパンチすると魔弾は掻き消えた。

もともと肉体強化させて攻撃するのが得意なオレだからこそ出来る戦法だ。

良い子は真似しちゃダメだぞ★


最近、魔法耐性が強くなった気がしていたが、気のせいではなかったようだ。

熱も感じなかった。


「なんだ今のは!?素手で魔術を防いだだと?!」

「残念だったな!」


「は!見くびるなよ!我が新たな上位精霊を召喚し、契約することで、この土地はマナに恵まれ、我も信仰の対象となる!我は最高の召喚師として君臨する予定だったのだ!!!それなのに……」

「そういうのは勝手に人知れずやっててくれよ。オレに立ちはだかるんじゃねえ!」

男は癪に触ったのか、


「我が!先に計画していたのに!!お前が!後から来たんじゃないか!!!!」

そんな駄々をこねられても…

というか、いい年した男の何を見せつけられてるんだ?

罰ゲームかよ。


「うるさい!我の魔獣を相手にしてもいい気でいられると思うなよ!いでよ!お前たち!!」

そう言うと、森の木々の影から魔獣が現れた。


サルのような小型の魔物が襲いかかってくるが、このくらいなら、魔術を使う必要もない。


「ふん!」

オレは拳を振り上げ魔物を振り払った。

魔物は近くにあった木にぶつかると動かなくなった。

「なんだぁ?魔物って行ってもたかが小型の猿にマナ喰わせた半端モンじゃねーか」


「な、我の使い魔を!?何者だお前は!?」

「男に名乗る名なんてねーよ。」


「長い紅髪に赤眼、その握り魔術ー……まさか貴様?!『紅拳の魔術師ドゥエス』か!!?」


なんだよ握り魔術って?食いもんかよ?

ってか、知ってたのか?

「そんな!馬鹿な事が!?なんでここに貴様がいるんだ!?」


「オレが邪魔なんだろ?オレもちょっと訳アリでな。あんまり人様には言えないこともしているが、ここには誰もこねぇんだろ?」


ニタリと笑うオレの顔を見て怯える男の顔が月光に照らされている。


「ほ、炎よ!」

火炎の魔術を放ってくる男。

避けずとも身体に当たる前に障壁に防がれる。



「ったく!弱すぎて話にもならねぇじゃねぇかよ。オレは女子供には優しいが、男は別モンだ。テメェから喧嘩売ったんだ。覚悟出来てんだろーな?」


そこまで脅したところで、男は背を向けて森の中に走っていった。

「ヒィッ!」


「なんだよ、逃げんのか?」


―ったく、追いかけんのもめんどくせえけど、このまま放置もしておけないな。

アシャト村に危害を加えるつもりだったみたいだし、今のうちに潰しておいてやろうか。



***********************


ありがとうございます。

次はちょびっと痛い描写出てきますので、苦手な方はスルーをオススメします。

次回投稿は10/21か25の予定です

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