73話
あけましておめでとうございます。
ふとドゥエスが静かになったと思ったら、
片耳の精霊石のついたイヤリングに耳を傾けていたらしい。
しばらくぶつぶつ呟いていたと思ったら、
「あー…エリー(仮)ちゃん、レニアちゃん、ちょっと悪いんだけどさ、一旦カーヤのところに寄ってもいいかな?」
「カーヤ?」
「ドゥエスの弟だ。王都の端にあるアシャト村ってところにいる青年だ」
「ふぅん…」
レニアの疑問に簡易に答えてやる。
「なんかカーヤがオレに用事があるみたいでさ」
ならすぐ戻るか?
「悪いね」
****************
【あの子どこまで行ったのよ?!】
アシャト村に戻ると、開口一番、水でできた不定形の身体を中空に漂わせた水の精霊がドゥエスを責めてきた。
あの子とは、地の精霊のことだろう。
【せっかく久しぶりに再会できて、これからの計画でも練ろうって時に……】
「計画?」
【あ、こっちの話だから気にしないで、おチビちゃん】
お、おチビちゃん……だと?
確かに人より小柄な方だけど…
一瞬こめかみに引きつるようにチカラが入るのが分かった。
【――で、東に向かう前に言っていた精霊王の欠片の件だけど、盗まれたって云ってたけど、ちゃんと取り返したんでしょうね?】
「あー、アレね。じつはちょっと色々あって……」
ドゥエスは云いにくそうに水の精霊に説明した。
【ちょ、ちょっと待って!紅いの!アンタ燃やしたですって?!あの精霊王の肉体よ?そんな簡単に魔法で燃やせるようなヤワな造りなわけないじゃない!?
「まあ、そこはオレの得意の創作魔法で、こうチョチョイっと……」
得意げな表情で自慢するドゥエス。
「せっかく精霊王クレイブの場所を知る手がかりになる予定だったのに……」
ん?聞き捨てならない単語が聞こえてきた。
【だって、アナタ前に精霊王クレイブに会いたいとかって言ってなかったかしら?】
「よく覚えていたな」
ドゥエスには行ったが、直接コイツに言ったか?
【そりゃ、水のあるところなら、どこでも見、聞きるわよ】
そうだったのか。
どうやら地下でのドゥエスと俺の会話を聞いていたのだろう。
【それに、精霊王クレイブは、アタシたちも会いたいのよ】
「会いたい?精霊のアンタはいつでも会えるもんじゃないのか?」
【固定の姿を持たない下位の精霊たちはともかく、アタシたち上位精霊は別よ。お互い棲家――まあ、各々テリトリーがあって、基本そこから動こうとしないわ。その辺はそこの紅いのが持ってる契約の力があれば初めて外に出れるようなもんよ】
「ドゥエス、あんたすごい契約してたんだな」
「え?いやぁ、それほどでも」
まんざらでもないように照れるドゥエス。
【んで、アタシは精霊王クレイブにひとこと言ってやりたいことがあったのよね。あの子、地の精霊のもってる腕を使えば正確な場所に行けそうだったんだけどな】
「地の精霊さまは、学院に向かいましたわ」
レニアがさらりと地の精霊の居場所を話した。
【学院ねえ……あんま人が多い所行きたくないのよねー。カーヤ君と一緒にいた方がましだわ~】
少し考えさせてチョーだいと水の精霊は悩んでいたようだった。
****************
カーヤの用事は、
なんのことはない。
「近所のおばさんのパンが思ったよりたくさん出来ちゃって、消費するの助けてくれない?」
というわりとどうでもいい内容だった。
ドゥエスは
「定期的に食べないと心さみしくなるんだよな」
と感動していたが、顎と格闘するパンを感動されてもな……
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 1/9 の予定です。




