66話
結局のところ、ラルカは当分の間、レーザックのいる二トラス教会で療養することとなり、ジェミンとリーブラは学院へ戻ることになった。
「あの、エリー(仮)さん、ドゥエスさん、もしもお二人がアーリア魔法学院の近くに寄ることがあったら、僕かジェミンに言ってくださいね。お礼もかねて紹介したいものがたくさんあるので」
「あ、ああ、楽しみにしておくよ」
異世界に来てまで魔法学院で学べと?
そのような機会は無いだろうな。
「……オレはパス~」
ひらひらと手を振りながら目も合わせようとしないドゥエス。
「え、なんでだよ先生!魔法のことももっと教えててもらいたいのに」
「まぁまぁ、ジェミンったら」
「ドゥエス?学院に何かあるのか?」
「ま、前にちょっとね~……」
二人とも名残惜しそうにしていたが、レーザックの手配した馬車に乗って町を出て行った。
馬車が見えなくなったころ、
「なにが悲しくて、勉強が嫌で抜け出してきたガッコに戻らにゃならんのさ」
ぽつりといったドゥエスのつぶやきが耳に入った。
「……彼らと同じ学院出身だったのか」
「昔の話だけどね。まあ、オレの時はむさ苦っしい野郎しかいなかったから、それはそれはもう地獄の中の地獄で……あれは誰でも逃げ出すと思うよ?」
ドゥエスの年齢がよくわからないせいで、どのくらい前の事を言っているのかよくわからないが、恵まれなかったのだろう……おもに運に。
「では行きましょうか。」
「レニア、案内してくれるのは構わないが、彼らについていかなくて良かったのか?」
「わたくしはこの町の冒険者ギルドに報告すれば報酬をいただけるので、一緒に学院に行く必要はありませんわ。」
「ん?ふたりともどうしたの?内緒話?」
そういえばドゥエスにはギルドのことを話していなかったと思い、軽く説明しておく。
渋そうな顔をしたのは言うまでもない。
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「ここです」
レニアに案内されるまま、ニトラスの冒険者ギルドに来た。
看板はあるにはあるが、建物の割にこじんまりとしていて、案内されなければ通り過ぎてしまいそうな、質素な看板には『冒険者とかのギルド』とだけ書いてあった。
「ずいぶん大雑把な単語がついているが?」
「冒険者のほかにも傭兵の斡旋、鉱夫のお手伝い募集かけていたり、観光案内など、幅広くやってるみたいですよ」
「なんかエリー(仮)ちゃんみたいだね」
何でも屋か。
「いらっしゃーい!あ、レニアさんじゃないですかー」
中は20人ぐらいが入れそうな広さで、入って右手には薄茶の長い髪を下の方で一つにまとめた、朗らかそうな女性が一人、まったりと座っていた。
日中だというのにほかに利用客はいないようだ。
「こんにちは。お仕事の報告に上がりましたわ。」
「はぁーい、おとなりの二人は?」
「このふたりはギルドへの加入希望者ですわ」
「おお、冒険者ギルドの新規加入なんて、珍しいねぇ」
「珍しいのか?」
「この町では炭鉱夫が多いから、外から来たらそっちのお仕事を斡旋することが多いかなー」
言われてみればそうかもしれないな。
「とりあえず、レニアちゃんから報告聞いている間に、二人には必要事項確認くださーい」
言いつつ近くの棚から用紙を二枚取り出しててきた。
「オレ、万年遊び人なんだけど……登録しなきゃダメ?……オレ働きたくない。」
小さな声で労働を拒否しようとしているのはドゥエス。
遊ぶ金が無ければただの浮浪者だろうに。
「ふふふ、面白い人たちですね。とりあえずこの紙に名前書いてくださいね。」
「…………」
俺とドゥエスに有無を言わせず差し出してきた書類には、長ったらしい文面と下の方にサイン欄があった。
「ざっくりとした規約ですわ。読んで納得したら、名前を記述して登録終わりです。」
「そうか……」
言われた通り規約を読んでおく。
その間、レニアは女性に地下でのことを簡単に説明しているようだ。
フルネームで書こうかと一瞬とまどったが、長くて面倒になったので、エリー(仮)とだけ書いておいた。
「はい、書けたぞ」
「オレもー」
「はーい、加入ありがとうございますぅー、ちょっと待っててくださいねー」
いうと女性は背後の棚から別の小さな紙を取り出してきて、
カード状の紙に名前と冒険者ギルドと簡単に書かれたものだ。
「はい、エリー(仮)さん。こっちはドゥエスさん。」
「ずいぶん簡易的なものに見えるが、いいのか?」
「んー?手続きとか難しいと、誰もお仕事したくなくなるじゃーん?」
わからなくもないが、不安な気持ちになるのは気にしすぎなのか?
なにはともあれ、冒険者ギルドに登録が出来たようだ。
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 11/14 の予定です。
誤字ちょぴっと直したぽよ。




