65話
「――で、あんたは昨日の事だけど……精霊ちゃんのこと、誰かに話したか?」
「いいや、ここにいる面子だけだ」
「ふむ……」
ドゥエスはめずらしく真面目そうに考えているようだ。
「私からの提案なんだが、ラルカさんに憑依している地の精霊様には二トラスの町、ひいてはこの教会にいてもらって……なんてことは出来ないか?二人には許可済みなんですが……」
リーブラとジェミンを見ると、二人の表情はどこか諦めたような、覚悟を決めたような、微妙な表情をしていた。
当のラルカ『地の精霊が憑依したままの少女』はというと、まっすぐドゥエスを見ている。
ドゥエスが何を言うのか注視しているようだ。
「オレはそいつらと関係ねぇしなぁ……でもこのまま教会にってのは個人的に嫌だし」
ぶつぶつとひとりごとを言い始めているが丸聞こえである。
「じゃ、じゃあ、ラルカさんの身体が元に戻るまで、というのはどうだ?」
「足止めするつもりか?」
「うーん、エリー(仮)ちゃんが行きたいところには、オレがちゃーんと案内したげるから、安心していいよー」
いつもの軽薄なノリより、やや心ここにあらずといった感じで突っ込まれてしまった。
【私の方からも、いいですか?】
手を上げたのは当の少女だ。
穴の空いた学生服などではなく、簡易なワンピースを着ていた。
【ドゥエスさんの心配ごとについては問題ありません。私がこの身体にいる間でも、私と契約しているドゥエスさんとの契約が解除されることはないので、離れていても大丈夫です】
「……オレとしても、面倒にならないなら構わないぜ。今まで通り、カーヤの状況を教えてくれるなら。あ!でも、教会側でコイツを何かに利用するつもりなら、ここであんたを張っ倒してくけど」
といってレーザックに睨みを利かせている。
「せ、精霊さまに向かってコイツだなどど!」
「怒るところはそこなのか」
「……こほん!わ、私としてもあんたらと事を構えるつもりはないんだ。教会についてはこの私の立場として、彼女一人ぐらいこの二トラス精霊教会で保護するくらい訳ないことだ。気にしなくていい」
【美味しいごはん、よろしくお願いします】
「それに学院には、私の方から精霊教会の通信部屋を通じて報告を上げておくよ。」
「あぁ。……よろしく」
「あー……ラルカちゃんのことと精霊ちゃんのこと……そのまま報告……するんだよな?やっぱり」
「まさか、道に迷って川に流されて精霊王の欠片を盗もうとしたら精霊が中に入ってしまいましたってか?!いくらなんでも無理があるだろう?そこは『洞窟内で落石事故にあい負傷した』とでも報告をしておこう」
だいぶ掻い摘んだせいか、一瞬、誤解を受けそうな表現に聞こえたが……
川に落ちたのはラルカ達じゃなくてレーザックとリーブラ(と俺)じゃなかったか?
「そっか……ありがとよ」
「ありがとうレーザック先生!」
尊敬のまなざしでレーザックを見つめる金髪のくせ毛リーブラ。
こっちもせんせい?
紅茶を静かに啜るレニアに説明を求めると、目線を逸らしてぽつりと呟いた。
「……野外学習をするとたまに起きるオトナな刺激のことでしょう。こっちはまだ健全だと思いますわ」
「あ~、そういう……」
ふたりの間に何があったのかは分からないが、良好な関係なのだろう。
たぶん
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たぶん




