61話
すこしエリー(仮)の独り言の多い回になりました。
宿の部屋はドゥエスとは別の個室を案内された。
それなりに広く、快適なベッドもあったが、俺は目の前にある平穏よりも、自分でしでかしたミスを思い出し、頭を抱えていた。
夜も更けているが、……眠れそうにない。
精霊王にさえ会えれば、あとはこの世界に用はない。とっととポータル開いて帰れば良いんだが、どうやらそう簡単に会わせてはくれないようだ。
ドゥエスはまだ精霊王の事をなにか隠しているようだが、下手につついて良いものなのか?
ま、今後聞いていけば、どうにかなるだろう。
それよりも今は、財布の中身だ。
ニトラスの町の中での換金はしょっぱかったし、人探しの報酬も期待できないし、少し稼げるものを考えておかないと、精霊王に会う前にすっからかんになりそうだ。
多少、空腹でも何とかなるが、お財布が潤ってないと、どうにも落ち着かない。
手持ちの換金前の宝石はそれほど多くないし……
貴族だと云う学生から巻きあ……いや、貸しを作っておいた方がいいか?
結局、誰が貴族だったのか、その地位性をよく知らずにいたが、その辺りは明日にでも聞きに行けばいいだろう。
そうなれば、教会のレーザックを揺すりに行くか?
だが、精霊教会はドゥエスがいたときの方が都合が良さそうだ。
そこまで考えて、ふとあることを思い出した。面倒だと思い記憶の端に追いやっていたことだが。
……アイツは冒険者をしていると言ってたな。
あわよくば稼ぎ先の斡旋でも教えてもらうか……
事情もすこし聞いておきたいしな。
夜の帷が降りる中、俺は外に出た。
ドゥエスの部屋の前を通りすぎる際に、誰かと会話しているのが聞こえたが、聞き耳を立てるのは野暮なことだ。
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町の西側を歩いていると、街灯に照らされ、花を模した看板を掲げたこじんまりとした建物が見えてきた。
宿「スイレン」
その建物は派手さはないものの、外から見える扉や2階の窓の手すりに植物や丸みを帯びた意匠が施されていて、いかにも女子受けしそうな外観だった。
ここが宿か?
ともすれば雑貨屋のようにも見えなくはないが……?
扉を開ける必要は無かった。
街灯に照らされる場所に人影が見えたからだ。
その人影は俺に気付くと、軽く手をふりつつ近づいてきた。
「……遅かったですね」
「別に待ち合わせの約束なんてしてなかったじゃないか」
「あら、冷たいですこと」
街灯に照らされて現れたのは、自称学生のOBと冒険者を名乗っていた紺色のスカートに茶髪をひとつに結わえた少女、レニアだ。
「確認したいことがあってな。すこしいいか?」
「私も、聞きたいことがあります……ところで、一緒にいたあの紅髪のひとは?」
キョロキョロあたりを見回す。
その長いテールが慣性で顔に当たりそうだ。
「ドゥエスなら宿に置いてきたさ。聞かれると少々面倒……というか、都合が悪そうだったからな」
「そうでしたか。助かります」
すこしホッとしたようだ。
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