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精霊通信録  作者: 襾犲 邑
外~二トラスの町
61/108

61話

すこしエリー(仮)の独り言の多い回になりました。



宿の部屋はドゥエスとは別の個室を案内された。

それなりに広く、快適なベッドもあったが、俺は目の前にある平穏よりも、自分でしでかしたミスを思い出し、頭を抱えていた。


夜も更けているが、……眠れそうにない。


精霊王にさえ会えれば、あとはこの世界に用はない。とっととポータル開いて帰れば良いんだが、どうやらそう簡単に会わせてはくれないようだ。

ドゥエスはまだ精霊王の事をなにか隠しているようだが、下手につついて良いものなのか?


ま、今後聞いていけば、どうにかなるだろう。

それよりも今は、財布の中身だ。

ニトラスの町の中での換金はしょっぱかったし、人探しの報酬も期待できないし、少し稼げるものを考えておかないと、精霊王に会う前にすっからかんになりそうだ。

多少、空腹でも何とかなるが、お財布が潤ってないと、どうにも落ち着かない。

手持ちの換金前の宝石はそれほど多くないし……


貴族だと云う学生から巻きあ……いや、貸しを作っておいた方がいいか?

結局、誰が貴族だったのか、その地位性をよく知らずにいたが、その辺りは明日にでも聞きに行けばいいだろう。


そうなれば、教会のレーザックを揺すりに行くか?

だが、精霊教会はドゥエスがいたときの方が都合が良さそうだ。


そこまで考えて、ふとあることを思い出した。面倒だと思い記憶の端に追いやっていたことだが。

……アイツは冒険者をしていると言ってたな。


あわよくば稼ぎ先の斡旋でも教えてもらうか……

事情もすこし聞いておきたいしな。


夜の帷が降りる中、俺は外に出た。


ドゥエスの部屋の前を通りすぎる際に、誰かと会話しているのが聞こえたが、聞き耳を立てるのは野暮なことだ。





*********





町の西側を歩いていると、街灯に照らされ、花を模した看板を掲げたこじんまりとした建物が見えてきた。


宿「スイレン」


その建物は派手さはないものの、外から見える扉や2階の窓の手すりに植物や丸みを帯びた意匠が施されていて、いかにも女子受けしそうな外観だった。

ここが宿か?

ともすれば雑貨屋のようにも見えなくはないが……?


扉を開ける必要は無かった。

街灯に照らされる場所に人影が見えたからだ。

その人影は俺に気付くと、軽く手をふりつつ近づいてきた。


「……遅かったですね」


「別に待ち合わせの約束なんてしてなかったじゃないか」


「あら、冷たいですこと」


街灯に照らされて現れたのは、自称学生のOBと冒険者を名乗っていた紺色のスカートに茶髪をひとつに結わえた少女、レニアだ。


「確認したいことがあってな。すこしいいか?」


「私も、聞きたいことがあります……ところで、一緒にいたあの紅髪のひとは?」

キョロキョロあたりを見回す。

その長いテールが慣性で顔に当たりそうだ。


「ドゥエスなら宿に置いてきたさ。聞かれると少々面倒……というか、都合が悪そうだったからな」


「そうでしたか。助かります」

すこしホッとしたようだ。



**************************


閲覧ありがとうございます。

次の投稿は 10/10 の予定です。

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