60話
「ああ。なんとかなった」
……
おや、すこし店内が静かになったか?
少々、簡略に説明しすぎたかと思ったが、そこはドゥエスが補足説明をしてくれた。
「安心して良いぜ。あいつらは一緒にいた精霊教会の偉そうな中間管理職っぽいヤツに引き渡して事後処理も押し付けておいたぜ」
その言葉を聞いてか、いつのまにか他の客も聞き耳を立てていたのか、店内に安心したかのような空気が流れた。
「見つかったんですね。それはよかった。ところで精霊教会の偉そうな人って誰のことです?」
「レーザックと名乗っていたが、役職は何だったかな……副支部長?」
「あ、いや……『自称・ニトラス支部副支部長補佐』じゃなかった?名前なんて忘れたけど、精霊教会の幹部役職たる白ローブを着てて、生真面目でめんどくさそうなのさ。」
ドゥエス、アンタは男の名前を覚える気はないだろ?
俺達はレーザックの容貌と特徴を伝えた。
ドゥエスと水の精霊の教会の地下に潜ったときは、黒いローブに青い紋章を着た作業員、トップの男は白地に青い紋章が入っていたローブだったが、今回、二トラスの坑道内で会ったレーザックは白ローブだったな。
「へぇ……あの堅物くんがねぇ……」
彼を知っていたのか、マスターは関心したようだった。
普段から堅物だったのか。
「マスターは、あいつの事知ってるのか?」
「ええ、よく独りで仕事帰りに飲みに来てくれたり、ニトラス名物・鉄分おにぎりを買って夜食にしているみたいで」
「常連だったのか」
「なにぶん、小さな町ですから。あまり個人的なことは話してくれませんが、この町の精霊教会のお仕事の他にも、魔導学院とのパイプ役もしているみたいですよ」
「それで学生と一緒にいたのか」
学生に冒険者を同行させて道案内でも、していたのだろうか。
「今回、学生が勝手にした事とはいえ、一部の坑道が崩落したと聞いてます。今後の採掘にも影響出ないとも限りませんし、当分は学生の立ち入りは禁止ですねぇ」
「……ところでエリー(仮)さん、レーザック君と一定時間、同じ場所で二人きりで会話しました?」
「あぁ、多少はな」
寝たふりしたリーブラもいたが。
それがどうかしたのか?
「何故か彼と同じ場所で二人きり会話すると、その、会話が似ちゃう人が出てくるんですよ……寡黙になるってゆーか……まあ、無害なんですけど」
……
…………
……いや、そんなわけあるか。
俺のは通常運転だ。
隣ではドゥエスがなぜか顔を背けて、ぷるぷる震え出している。
********************
「お待たせしました《ニトラス名物・鉄分おにぎり》です」
そんな俺らの顔を見ても動じることなく、むしろ穏やかなほほえみを向けてくるマスターは話しながらおにぎりを握ってカウンターに出してくれた。
そのおにぎりは海苔のようなもので巻かれていてパッと見は普通のおにぎりだ。
「いただきます」
「お、名物?いっただきます!」
ちょっとテンションが上がったドゥエスもすかさず手を出した。
パリパリした巻きたての海苔?を割いて中から出て来たのは、ほかほかのごはんと…牛肉?
味が染みていておいしい……が、特にこれといって特徴のないお肉の入ったおにぎりだ。
「……うまいな」
ぽつりと感想を述べつつ、中身を聞いた。
「おにぎりです。ぶっちゃけると、牛しぐれ煮の入ったフツーのおにぎりです」
作った本人がフツーって言っちゃったぁ……
「美味しいでしょう?まだほかにも料理はありますので、遠慮しないでくださいね。もちろんお題は結構ですから。それと、お二人の宿の手配もしておきましたよ」
「マジか!そりゃ助かる!」
「ありがとうマスター」
今のうちに礼金の話を進めたかったが、ドゥエスはすぐにでも休みたいようだった。
かくいう俺も、何だか疲労が溜まっているようだ。
********************
思った以上に美味しい食事をいただき、マスターに教えてもらった宿に着いて、各々の部屋に入って休んだ。
そこで、ふと思い出したことがある。
坑道内の人探しをする前にドゥエスがいっていたひとこと、
すなわち『お礼は美女の添い寝と美味い食事でいい』と言っていたことを…………
…………
…………
油断した。
……俺は謎の頭痛にこめかみをおさえた。
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 10/3 の予定です。
※次回予告、エリー(仮)のターンなので何もおきません。ご安心ください。




