59話
目の前でドゥエスによって焼かれてしまった素材……
『精霊王の片腕』は、ドゥエスが使った業火の魔法が収まったその時にはその消し炭さえ残っていなかった。
舌打ちか文句を言おうかとも思ったが、
【それじゃあ、皆さん私に付いてきてくださいねー。外への近道がすぐそこにあるのでぇ】
言うと、彼女は奥の祭壇の入り口付近に隠されていた道を指し示していた。
「そんなところに道なんてあったの……!?」
「隠し通路?」
【昔の信者さんたちが使っていた道なので、歩きやすい道ですよ】
ふふふとラルカの姿で口許に手をあてて上品そうに笑っている精霊。
「はあ。……じゃあ、帰ろうか……」
ドゥエスがため息交じりに俺達を誘導した。
そのあとはあまり会話もなく、地の精霊とドゥエスたちに付いて行き、何事もなく、二トラスのはずれにある小さな入り口に出た。
どのくらい潜っていたのか、日は暮れ、夜の帳が下りていた。
町に戻った俺とドゥエスは依頼をしてきた酒場へ向かうことにした。
レーザックは、精霊を宿したままのラルカとリーブラ、ジェミンの学院から来た三人に、精霊教会へ来て貰いたいと交渉をしていた。
もちろん食事と宿の提供を交渉の材料にして。
「では、私は冒険者ギルドに報告してきますね。何かあれば、町の西にある「スイレン」っていう宿にいますので」
レニアは町の内部にある冒険者ギルドへ報告に行くといい、町の広場で別れた。
彼女は、精霊王の欠片のこととラルカのこと、精霊の事を何と報告するつもりなんだろうか。
多祥なりとも興味があったが、それよりドゥエスに聞いておきたいこともあった。
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カランカラン――
一行と別れた俺達は酒場『バッカス』の門を潜った。
「いらっしゃいま―……おや、あなた方は……」
日中に入ったときとは違い、酒場は賑わっていた。
「よぅ、マスター」
手で挨拶をしがてら、開いていたカウンター席に座るドゥエスに続き、俺も隣に座る。
「心配したんですよ、案内役として行かせたヘイが戻ってきてから、なかなか戻ってこないもんですから……もしかしたらあなたちも……なんて噂が出てまして」
「俺達が潜ってどれくらいかかったんだ?」
「半日……ほどでしょうか」
体感では数時間だと思っていたのだが、日の光のないところにいたせいか、思ったより時間が過ぎていたようだ。
……ぐうぅぅ
「あ~、だから思ったよりお腹すいてたんだ……マスター、なんか食べ物くれぇ」
緊張が解けたのか、ドゥエスのお腹が鳴った。
「かしこまりました。……それで、結局のところ……例の、アーリア魔導学院の行方不明者は見つかったんですか?」
マスターはおずおずと言葉を選ぶように俺に聞いてきた。
「ああ。なんとかなった」
……
おや、すこし店内が静かになったか?
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