55話
レニアは慌ててラルカに近づくと、彼女の胸に食い込んだ精霊王の腕に手をかけた。
「レ、レニアちゃん?!何する気?」
ドゥエスがびっくりしたような、戸惑ったような顔で見ている。
「何って、決まってるでしょう?!抜くんですよ!まっててラルカさん!今、抜くから!……あなたも手伝って!!」
俺に向かって一瞥すると、レニアは腕を掴む手に力を込めた。
言われるがまま、俺も手を貸し、抜き取ろうとするが、その『腕』はビクともしない。
ずずずズ……
むしろ力を入れて抜こうとしているのに、腕が中に入り込み……
ミリミリ……
「ぁぁぁ……っあァァァ」
肉が裂ける音と、ラルカの悲鳴が、共に身体の中に沈んでいく……
「―っ!なぜだ?なぜ抜けない?!」
…うう……ううううえええええ!あえっうええああああががが!!?
ラルカは激しく痙攣して抵抗しているが、腕が入り込んだ部位から抜ける気配はなく、身体が黒ずんでいく。
「……てくれ……」
ドゥエスの呟きは悲鳴に掻き消された。
うぅ……ぐっ……
「ふたりとも、その手を離してくれ!」
ドゥエスはそういうと、俺たちの返事も待たずに何かの魔法を唱えた。
俺とレニアは魔法で弾かれてしまった。
「おい、ドゥエス!なんのつもりだ!?」
「……ナカに入ったら、もう遅いんだよ」
もう遅い?なんの事だ?
「ふたりともあんな風になりたいの?」
「ーっぐっぅ…」
……ビシャアアアッ!
やがて精霊王の腕は心臓に達したのか、彼女の胸から血が吹き出した。
だらりと脱力するラルカの両腕。
頭部は天井を見上げており、口は開いたままだ。
倒れてはいない……が、おそらく……
「どうして邪魔したんですか!?」
俺たちは彼女の返り血を浴びながら、ドゥエスに向かう。
「アレは、……あの精霊王の欠片は、触れたモノのマナを、吸い取り続けて、……その、危険なものだから……」
「ラルカちゃんは?彼女はどうだっていいっていうの?!」
「そういうんじゃない!……じゃないけど……その」
スパン!
つかつかとドゥエスのもとに近づいていったレニアは、彼にビンタした。
「止められたかも知れないのに?!」
「…………ごめん」
珍しく声を荒げたドゥエスがレニアの張り手で静かになったようだ。
「要は、あの腕に触れなきゃ良いだけだよな?」
「そうだけど……」
俺は、その場で佇んだまま胸元から血を吹き出し続けるラルカの身体に向かうと
【棘這…「いやいやいや!そんなことしたらズタズタになっちゃうでしょ!!!」
慌てたドゥエスに止められてしまった。
返しが付いてるからといっても金属糸の類いだ、素手で触るよりマシだと思うんだがな。
「なんだ?まだアレで生きているのか?多少強引でも引き離してやれば良いじゃないか?そのあとに縫い合わせるなりなんなりと……」
レニアがゲテモノでも見るかのような目を向けているが、精神が人ならざるものたる俺に人間性を求められても困るんだが。
「ちょちょちょ!なんでそこで強引になるのさ!それに、心臓食い破られても、ラルカちゃんは、まだ死んでるわけじゃないよ!」
ほう?
通常はの人間なら絶命しているところだと思うが、何かあるのか
そう聞こうとした時だった。
後ろに気配が近づいていたことに気づくのが遅かったようだ。
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 8/29 の予定です。あげられたらrrrrr




