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精霊通信録  作者: 襾犲 邑
エリー(仮)サイド
53/108

53話


ドゥエス達と対面しているモンスターはこちらに気づいていないようだが、レニ……女冒険者がジェミンを抱えてこっちに走ってきた。

そのうしろをラルカとか言う少女がついてきている。

女冒険者はこちらを見ると一瞬だけ戸惑うような表情をしたが、


「向こうの部屋にリーブラたちがいる」

「……はい」


すれ違い間際にそう言ってやると、何か言いたそうにしていたが、そのまま走っていった。



*************


その男、紅の長髪をなびかせた長身の男ドゥエスは、顔が異様に歪んだオークのようなモンスターと対峙していた。


一つ一つの動作はその体躯に似合わない素早さで避けているようで少し手こずっているようだ。

ソイツが振りかぶった歪な棍棒を火の壁で防いだ時だ、


「はっ!」

その隙を狙ってナイフを投擲すると、続けざまに術をかけてやる


「鳴雷!」


バチっ!


落雷の魔法がオークに当たると、しばらく動きが鈍くなり、ドゥエスの魔法が炸裂した。

ご自慢のパンチと魔法で爆裂させると、辺りには炎と焼けた肉片が飛び散る。


…………うわぁ……

汚ぇ花火とはこういうことを言うのか…………


「もっとスマートに倒せたんじゃないのか?」


流石にゲンナリしながらドゥエスに近づく。

炎に巻き込まれるような所にいたはずだが、服が焼き焦げるどころか、汗ひとつかいていないようだ。

攻撃と同時に防御の魔法でも展開していたのか?


「待ってたよ★エリー(仮)ちゃん」


そう言ってニカッと笑みを浮かべるドゥエス。

手助けは余計だったかな?


「……何を待ってたんだか……アンタにしては時間かけて様子見してたみたいだったが、出し惜しみせずに倒せば良かったのに……」


オークにしてはやや距離を取りながら戦っていたようだが


「あ、バレた?」


「……ひょっとしてお愉しみだったのか?」


「ぇ?!いやいやいや!」


ん?違うのか?


「戦闘を愉しんでたんなら茶々入れたようだな……すまん」


「そこは謝るところなのかい?愉しんでたとかじゃないよ!!?勘違いだからね!」


慌てて訂正するドゥエスだが、何を考えていたのかよく分からん。


「そうだったのか」



どうやら俺たちがきた祭壇があったと思われる小部屋に用があったらしい。

祭壇の状況を簡易に説明したところ、顔色を変えたドゥエスはイヤリングに手を添えながら祭壇の場所を教えてくれと言ってきた。あれをどうにかするつもりか?



************************



その後、黒髪の少年が担ぎ込まれた部屋まで戻ると、リーブラが回復魔法をかけている所だった。


「あれは【生の境界(ライフバウンダリー】?」


「回復魔法か?」


「中級の回復魔法さ。学生であまり使えるヤツは居ないとタカをくくってたけど、どうやらあのモシャモシャ頭くんは使える魔法使いみたいだね」


そういって、「彼がいるならオレはあっちを片付けてくるよ」と踵を返すドゥエス。

モンスターの亡骸はドゥエスに処理を任せるか。


俺はジェミンと彼の回復にいそしんでいるレニアとリーブラに近づくと、ジェミンの状態が目に入った。

見た目には軽傷のように見えるが、脇腹の傷口から出血などはなく皮膚が黒ずんでいたようだが、回復魔法の効果か、黒ずんでいた部分が薄くなっていく。



「……ぅ……うーん…」


気を失っていたのか、黒髪の少年は目を覚ました。

「ジェミン!気がついたんだね、よかった!」


「リー?…………あー……オレ、あいつの攻撃を喰らっちまってそれで……」


上体を起こすと目眩を起こしたのか、心配そうにたたずむラルカに支えられ

「ありがとう……オレは助かったんだな」


「でもまだ無理はしないで」


「ああ。でも早いとこ外に出たいしさ……こんなところでもたついてられないじゃん」


「それなら、これを使え」

レーザックが懐から手のひらに収まるくらいの小さな色硝子の小瓶を出して、何かをブツブツ呟きだした。


「何をするつもり?」


「あ、それって聖水……?」

驚いた顔でレーザックの手元を見ている女冒険者


「聖水?」

「……結構お高いんですよ」


思わず聞き返すと女冒険者はすこし考えてから答えた。

そうか、高いのか……


【命水】


瓶の中の水を患部に流し、レーザックが簡単そうな魔法を唱えた途端だった。

「霊峰で採取した水だ。飲むだけではただの美味しい水だが、精霊術を使うことでマナや体力の回復ができるんだ」


「値段のわりにはそれほど高い効果ではないんだな」


「教会で販売している水だからな」


「販売促進かよ」


「そうか?炭鉱夫にはウケが良いんだぞ?」

栄養ドリンクか



**************************



「そういえば、ドゥエスさんはどこにいったの」

キョロキョロ周りを確認してどこにもドゥエスがいない事を確認すると、そう聴いてきたのはラルカだ。


「あいつなら、向こうでモンスターの解体しているぜ」


「それなら私も手伝って来るね」


一方的に云うとドゥエスの方に走っていった。

あんな血塗れの解体作業の何がいいんだか分からないが、顔を見たら止める気にはなれなかった。

あれはお宝がそこにあるのを思い出したときの目だ。




閲覧ありがとうございます。

次の投稿は 8/15 の予定です。

ちょっぴり※印つきそうな回なので、苦手な方はその先の未来で待っていてください。

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