50話
「ったく!駆除してやるから、おとなしくしてろよ!!」
まだなにか文句を言いたそうにしている黒髪ジェミンをレニアちゃんに託すと、オレは3人に向かっておとなしく『待て』を指示して、『ヤツ』に向かう。
「あ、あの、ドゥエスさん」
すると、ラルカちゃんが提案してきた。
「わ、わたしでも、回復魔法は、使えないけど、サポートぐらいはできます……やらせて」
うーん、やる気があるのは嬉しいんだけど、足でまといになられても困るし、
「今はそいつの近くに居たげて」
彼の傷は浅いように見えるけど、まだ塞がってはいない。
むしろ、顔色が悪くなってきているく変色し始めてる。
「……はぁい……」
ラルカちゃんにはちょっと冷たい言い方だったかも、目に見えてわかるほどしょげてしまったなぁ。
「ごめん、ラルカ……ドジっちゃって」
「ジェミン……私の方こそ。無理に言って誘ったりしたから」
彼の手を握って、うるうると目を潤ませて二人だけの世界に入りつつある。
おーい?
レニアちゃんが戸惑い始めてるぞー?
「次は上手く……ぐふっ!」
大人しく治療されていたジェミンが突然血を吐いた。
「えっ!?な、なに……これ?」
戸惑うレニアちゃんの声に、ラルカちゃんが傷口を見ると、彼の皮膚の変色を見て驚きの声をあげた。
似たような症状をどっかで見たことあった。
肌が黒く染まり、やがて腐り、苦痛のまま死に至る呪い……のようなもの。
また見ることになるとは思ってなかったけど
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なんて彼の傷具合を眺めてる場合じゃなかったっけ。
……グルォオオオオ……
よく分からない気配を纏った『ヤツ』はゆっくりとした足取りで進んでくる。
とっととかかってくればいいのに、時よりふらつきながら、何かを確認するかのようにゆっくりとした足取りでこっちに進んでくる。
「ん?」
よく見たら、目の部分が潰れているのか……何かの透明な液状のものが眼窩から頬にかけて伝っている。
ひょっとして、よく見えてねぇのか?
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「なぁ、精霊ちゃん、『ヤツ』が精霊王の腕を持ってるって言ってたよな?」
【ええ】
「そんでもって、少年のあれって、精霊王に近づきすぎた人間にたまに出る『黒化』に似てないか?
【ええ。恐らく、あのオークは『腕』を取り込んで、その力を得たのでしょう。普通の人間が、人としてあるべき分のマナを抜き取られる呪いと同じです。ドゥエスさんでも当たらないように気をつけてくださいね】
「回復の見込みは?」
【あの冒険者さんの魔法では抜きとられるマナは戻りません。そのまま朽ちますね】
地の精霊ちゃんの声が淡々と告げられていく。
【ですが、その道の向こう側に、今は使われてない私の神殿があります。そこまで来て貰えれば何とかできるかもしれません】
へぇ、神殿ねぇ。
振り回す棍棒を避けながら、おれは三人に言う。
「あの通路の先に安全な場所があるらしいぜ」
「分かりました」
そういうと、怪我したジェミンを抱えたレニアちゃんが走っていくのを見届ける。
レニアちゃんって意外と力持ちなのね。
強化の補助魔法でも使ってるんだとは思うんだけど、華奢な体つきからは想像できない身軽さだったから、びっくりしたよ。
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『ヤツ』はレニアちゃんを追いかけてきた。
「そうはさせないぜ」
そいつの左から軽くジャブを食らわせるが、特に致命傷にはならなかったらしい。
まぁ、気がこっちに向けばそれでいいのさ。
そして、足元に靄のようなものが出てきた。
濃厚な匂いを嗅いだ気がした。
一瞬の間を置いて足元から棘がでてきた。
ジェミンに傷を与えたのと同じものだ。
さすがに初見じゃないし、難なく避ける。
「オレに不意打ちなんて効かないって!」
つづけて繰り出される大降りの棍棒を目眩ましを兼ねた【炎の盾】でいなしてやる。
「はっ!」
バシュ!
すると、どこからともなくナイフが飛んできた。
【鳴雷!】
ナイフが刺さったところに雷が落ち、動きが治まった。
その隙をつかせてもらうぜ!
「爆ぜろ!【魔烈風拳】!!」
炎を纏ったオレの拳が『ヤツ』にヒットした感触がある。
拳が当たったところが爆ぜ、体躯の内側からジュクジュクと炎が燃え広がった。
オレにも炎は向かってくるが、炎はオレにまとわりつくが熱さは感じない。
それより、今のナイフは……
「もっとスマートに倒せたんじゃないのか?」
その声はエリー(仮)ちゃんだった。
「待ってたよ★エリー(仮)ちゃん」
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