49話
なんとか間に合った
「あの、ドゥエスさん……」
漂ってきた匂いをうっかり嗅いでしまったのか、鼻をつまんで表情を歪めながら、すこし緊張した面持ちで話しかけてきたのはラルカちゃん。
「あのモンスターがほんのり光っているのは、何か理由でもあるんですか?」
言われて気付いた。
モンスターを見るオレの目が光って見えていたのではなく、『ソイツ』の体表面が全員見えるくらい発光していたのか。
「さあ、よくは知らないけど、このあたりの洞窟では、めずらしく光る鉱石が採れるみたいだから……たまたまそれを口に入れたんじゃないのかな?」
入り口を案内してくれた青年も、光る石から採れたと思われる塗料を持っていた。
どうせ、たまたまどこかで採れた鉱石だろう。気にしないのが一番。
炭鉱内の暗がりでは市場に出ないうちの端材……細かく砕いた石とそれに何かを混ぜた『光り石』を使うところもあるみたい。
薄暗いくらいの照明代わりになり、魔法が使えない人でも役に立つから重宝されるしね。
「へえ、そうなんですか……」
ラルカちゃんは感心したような声をあげる。
もちろん向こうに聞こえないようにひそひそ声で。
**********
「なぁ、ドゥエスさん、モンスター達の向こうに道が見えるみたいだけど、そこに行けばいいんだよな」
「道……暗くてよく見えないな……」
【確かに奥に広い空間につながる道と、そこから地上への最短ルートがあります。
そこに魔物の気配はありません】
地の精霊の声が、オレだけに聞こえる大きさで追加情報をくれる。
なるほどね……目がいいな少年。
「精霊ちゃんが言うには最短ルートらしいぜ。」
「……わかった」
なにがわかったんだ青二才?
**********
「じゃ、珍しくオレ様がひと肌脱いでやりますか。あ、目と耳を塞いでおかないと使い物にならなくなっちゃうからね」
『親切な警告』をして、3人がちゃんと目と耳を塞いだのを確認してから――
オレは大きめの火球でモンスターたちのど真ん中に向けて放つ。
まずは小物を焼き払う。
手のひらから投擲し、ゆっくり降下したその火球は、やがて強い閃光と共に爆発がおきた。
名付けて【とびだせ火球くん】!
本来真面目で長ったらしく唱える呪文があったけど、悪友がふざけてつけた魔法の名前が面白くて使ってたんだ。
おかげで本来の呪文なんて忘れちゃった。
それでも発動する、それが創作魔法ってもんだ。
……最近では人前で使うのに抵抗しかないけどな!
耳を塞いで貰わないと使えたもんじゃねえし!
……
「もう開けていいぜー」
「……え?一撃だけ?」
一発では不満か?
「げげっ」
「魔物は…….?」
塞いでいた耳と目を開けて、3人とも驚いた声を上げる。
煙がおさまり、周りにいた小物たちはこんがり焼かれていた。
「あ、あんなにいっぱいいたのに……一発で吹き飛んでる……?」
中央に佇んで食事していた『ヤツ』はというと……
グルルルル……
腕ごと一瞬で炭化したようで、黒い何かがボロボロと落ちていく。
立つのがやっとといった酔いどれみたいな動きでその場に立ち上がるところだ。
それでも、地の底から湧き出てきたような唸り声を上げて、こちらを睨みつけていた。
おー怖い怖い。
今ので倒れなかったのは珍しい。
というか、やっぱ強化されてんなー……これはめんどくさいヤツかもしれないな。
「え、まだ生きてますよ?」
「……そうみたいだね……」
「そうみたいって……」
「なら、俺の出番だな!!」
「あっ!おい!!」
黒髪のジェミンは剣を構えて、よろよろ向かってくる『ヤツ』に突っ込んでいった。
見た目はオークそのもののそいつの足蹴の攻撃を避けると、胴体と思しき部分に剣を突き立てた。その瞬間だった。
一瞬で『ヤツ』の腕が再生したかと思うと、剣を難なく受け止める。
ガキンッ!!
鋼鉄かと思うほどの硬さをもった腕は、剣を跳ね返した。
「――っ!?」
驚いてバランスを崩すジェミンの足元がゆらりと揺らいだように見え――
地面から数本の大きな棘が飛び出してきた。
今のはなんだ?蜃気楼?
オークが、魔法が使える者なんて、見たことがないんだけど。
やっぱり不思議な感覚になったのは、『アレ』のせいなんだろうか
「ぐっ!」
「ジェミン!?」
そのうちの一本が脇腹を掠めたようで、ジェミンのくぐもった声が上がる。
思わず悲鳴を上げるラルカちゃん。
内心驚いていると、彼の身体の動きが止まった隙を狙って、『ヤツ』の手に持った、小さな骨か何かを絡みつけた歪なシルエットの棍棒を叩きつけようとして光景が目に入った。
「先走るんじゃねぇ!【閃光!!】」
ギャッ!
目潰しを放つと、ソイツは一瞬怯んだようだが、振り上げた歪な棍棒はそのまま振り下ろそうとしていた。
オレはジェミンに近づき、襟首ひっつかんでやる。
回避すると、『ヤツ』の振り下ろした歪な棍棒が掠めていった。
「ジェミン!?」
『ヤツ』から距離をおいてかわいこちゃん達のところまで下がると、ラルカちゃんとレニアちゃんはジェミンを気遣った。
「大丈夫ですか?!いま回復魔法かけますので」
傷口に布を当てて、簡易的な魔法を唱えるレニアちゃん。
その魔法では意味ないと思うんだけど……まあ、オレは回復魔法使えないし黙っておくか。
「いてて……油断したぜ……」
「まったくだ!服の袖が破れたじゃねえか!どうしてくれるんだ!」
一張羅なんだぞ。
ジェミンの頭を小突いておく。
「……すまねぇ……あいつの攻撃が思ったより早くて見えなくて……ってか、あんたはそれだけで済んだんですか……?」
「見えないなら見えるように早く動けよ」
「なんて無茶を……でも、参考にさせてもらうぜ先生☆」
「げ」
バチコン!と音がしそうな感じでウインクをしてくる。
男からもらって嬉しくないトップ3だ。
軽口叩くぐらいには軽傷だったならほっときゃよかったかもな。
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 7/18 の予定です。
輩→生に修正しました。年齢差




