43話
【では、私は安全そうな道を見つけたら契約者さんの耳元で教えてあげますね】
「一緒に来てくれるんじゃないのかい?」
【遠くから見守りたい性分なので】
ドゥエスは止めようとしたが、一方的にそういうと、案内役は消えてしまった。
「機嫌は直ってないようだねぇ……女の子って難しい」
そういう問題だったか。
ドゥエスのイヤリングから声が聞こえるらしいので、彼が先頭を進むことにした。
俺は念の為、殿だ。
進む道は、いつしか、坑道と呼べるものではなく、洞窟に近い造りになっている。
俺の灯りの術の他、ラルカとレーザックは変わった装飾のついたランタンで足元を仔細に照らしながら進む。
「灯りなら魔法で十分じゃないのか?」
「あ、コレですか?このランタン、灯りだけじゃなくて、モンスター避けの魔法と危険予測が出来るんです」
ほほう
「で、効果の程は?」
「足元が崩れそうな所やトラップに近づいたら強く赤く点滅して、いつもモンスターが嫌がる匂いが出てるんです」
それでさっきからモンスターに遭遇しなかったのか。
「高かったんですよ」
金目になっていたか、すまんな、職業病で。
所々、ぼんやり発光する苔や菌糸のコロニーを横目にした。
高さも広さもそれなりにあり、比較的進みやすい道だ。
**************
しばらく進むと、道幅が狭く、片側が崖になっている所に出た。
緩やかな登りになっているらしい。
「狭いねぇ。さすがに1列でないと通れなさそうだよ」
崖の下はほとんど見えないが、ゴウゴウと水の流れる音が聞こえる。
崖の上を通る道は狭いが、気を付けて進めば問題なさそうだ。
ドゥエスを先頭にし、前方にレニアとジェミン、ラルカ、その後ろにレーザック、リーブラと続く。
ドゥエスはランタンを持つのを断ったので、ラルカが持っていたランタンはレニアが持つことになったようだ。
「ヒィ……」
前を行くリーブラが小さく悲鳴を上げた。
「高いところが苦手なのか?魔法で飛べばいいんじゃないのか?」
「うぅ……僕、飛行魔法苦手で……大穴から落とされた時もレニアさんに助けて貰ったんです」
「そうか。まぁ、下は水が流れているらしいから落ちてもどうにかなるだろ」
「ひぇぅ……」
安心させるつもりだったが、効果はなかったようだ。
半べそかきつつ、俺の前を進むリーブラ。
「きゃっ!」
少し前を歩いていたラルカが足を滑らせ、バランスを崩した。
「危ない!」
レーザックが手を伸ばし身体を支えてやる。
「あ……ありがとぅ…」
「足元は滑るから、気を付けなさい」
「う……うん」
********
狭い道はそれほど長くないが、全員が渡りきるのを待っていた。
……キュ……
キュキュ……
水の音に紛れて、石の床をゴム靴で踏んだ時のような湿ったなんとも言えない音が後ろから聞こえてくる。
肩越しに振り向けば……
……
…………
『ソイツ』の目(?)と合った。
「うわぁ……」
思わず声が漏らすと、リーブラに聞こえたのか、こっちを振り向いた。
「え、なんです……ヒィ!窮屈スライム!?!」
「何?!」
リーブラの悲鳴につられてレーザックも慌てふためく。
「こっちで処理するから気にせず進ん出ていいぜ」
「そ、そうもいかないですよ!」
ビビりながらも杖を掲げる。
「ランタンは効いていなかったのか?!」
芋虫モンスター(?)『窮屈スライム』が狭い道の後ろから迫っていた。
どこからどう見ても目のないブヨブヨとした芋虫なんだが、スライムの分類らしい。
なんとも納得がいかない気分でいると、『ソイツ』が糸を吐いてきた。
バシュッ!!
軽く避けるとリーブラが魔法を唱えて防御陣を設置していた。
「刻んでやろうか」
「気をつけてください!そいつの吐く液糸は強アルカリ性です!」
そこは強酸ではないのか。
どっちでも蛋白質が変質することに違いは無いが、突っ込みたい欲が一瞬よぎった。
まあ、その暇は与えてくれないようだ。
いかんせん糸の奔流がしつこい。
「はっ!」
短剣で捌いてやる。
「あ、ちょっと色変わった」
「だ、だから言ったじゃないですかァ!?」
使い捨ての短剣だし、たいした問題じゃないんだが、リーブラが悲鳴に近い突っ込みの声をあげる。
「仕方ないな、【棘這糸】!」
ギュアアアア!!
ワイヤー状の繊維を窮屈なヤツに向けて投擲すると、肉体に喰い込んだ糸はソイツに潜り込むと甲高い雄叫びをあげる。
撚り糸をつまんでみたが効果はなさそうだな。
「【鳴雷】」
バヴジュッ!!
対人より少し強めの雷を浴びせてやると、ワイヤーを食い込ませた部分がもれなく炭化していく。
「ついでだ【這う炎】」
おまけで燃やしといてやる。
ドゥエスの時も炎でよく燃えていたからな。
案の定、よく燃えた。
「す、凄い」
「聞いた事ない魔法ばっかりだ……」
リーブラとレーザックの感心するつぶやきが聴こえた。
もっと褒めるがいい。
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