42話
「わたし、一旦、帰りたいです」
おずおずとラルカが手を上げる。
「ラルカちゃん……一旦って……」
「まだ諦めてないの、ラルカ?」
これは、体制を整えてから、また来るというのかな。
……はぁ……
「あんたら坑道内を荒らして、誰かさんのお宝を盗んだって聞いたんだが、まだ諦めるつもりはないのか?」
「―っ?!」
「なぜそれを!」
俺の言葉を聞いてジェミンもリーブラも分かりやすく顔色が変わった。
「知ってて接触してきたんですか?」
レニアは驚きより、警戒しているようだ。
「いまさっき被害者からの相談でね」
チラと地の精霊に目配せすると、精霊が意地の悪そうな笑みを浮かべている。
「え、誰?……って、えっ!」
「ままままま、マジ!?」
「……!」
それぞれひと目で分かったらしい。
「ジェミンだっけ、あんたは驚かないのか」
ジェミンはばつが悪そうに頬をかいている。
「実は、さっきちょっと聞いちゃってたから……」
こいつ割と素直な奴だな。
レーザックがあれほど騒げば気づくか。
【いま帰っておとなしくしてくれるっていうのなら、安全に帰してあげますけど、まだそのつもりがないのなら、命の保障は出来ませんよ】
「ちょっと!精霊ちゃん!?」
過激なことを言いそうな地の精霊をドゥエスがたしなめる。
「うぅ、……でもぉ……」
「あんたは何を探していたんだ?この精霊のモノと無関係なものならば、後日見つかった時に届けてもらえばいいだろ?破格の価格で俺が届けてもいいぜ」
さりげなく営業しておく。
「うぅぅ……そ、それがぁ……せ、『精霊王の腕』……」
「は?」
「精霊王の一部が、この二トラスの山のどこかにあるって噂を聞いて……」
「噂?」
ほう。
そこんとこ詳しく教えてくれ。
「学園で噂になってるんです。5年くらい前に何者かに封印されたっていう精霊王の一部がココ最近、色々な場所で見つかってるって」
おとなしそうな少年、リーブラがかいつまんで説明してくれた。
チラとドゥエスに目配せすると彼は頭を振った。
彼も知らないのか。
「……なんでそんな噂を鵜呑みにしちゃうかなァ……」
苦虫を噛み締めたようなドゥエスがつぶやく。
「だって、無限とも言われる精霊王のマナを手に入れられたら、も、もう学院で馬鹿にされなくて済むし、何より強くなれるんだよ!」
「学園内での話なのか……そういうのは、努力して何とかするもんじゃないか。他者の力に依存して何が獲たいんだ?」
「何って……たくさんの魔法が使えるようになれば、良いところに就職できるし、人気者にもなれるもん……」
ラルカの答えに、さしものドゥエスも困った顔をしている。
「いいかいラルカちゃん、精霊の力を得たとしても、人間が使える魔法には限度ってもんがあるんだよ。手に入れても使いこなせなければ何の意味もないモノだ。それに、精霊の力を得るってのはそう簡単な事じゃないんだ。アイツら、気分屋だし、相性ってのもあるし。何より失敗した時の命の危険だってあるもんなんだから……そのへん勉強しなかった?」
【気分屋って……わたしの前でそれを言いますか】
「あ……ごめん」
「でもぉ……」
「ラルカのわがままは今に始まったことじゃないからおいといて良いと思うぜ。……オレたち、あんたらが来たって言うルートから外に出れるなら、外に出たいんだけど…案内してもらえます?」
「ああ、いいぜ」
「僕も地上に戻りたいです」
ジェミンとリーブラは外に戻ることで了承したらしい。
あとは……
「皆さんが戻るのなら、私も異論はありません」
冒険者?のレニアも渋々ながら納得してくれたようだ。
**************
【ところでお二人はどうやってここまで辿り着けたんですか?】
「ああ、実は……」
ドゥエスは地の精霊に来た道を教えてやる。
【……あの大穴でしたら、塞いじゃいました。】
「え、なんでさ!?」
【おふたりがいつ潜ったのかよくわかりませんけど、ずっと深いところまで崩落していたので、鉱夫さんたちが落ちたら危ないから、塞いでおきました。そりゃもう完璧に……あ、それでスラちゃんを…?】
なにかに納得したような精霊だが、それでは俺たちが大穴に近づかないように『窮屈スライム』を設置したというのか?
偶然かそれとも策か
「崩落したのか?何も感じなかったが」
何かが崩れるような音も聞こえなかった。
「そんなぁ……」
ガックシと頭を垂れるリーブラ。
ドゥエスにいたっては、やっちまったとばかりに手で顔を覆っている。
「それでは、遠回りして出口を探さなければならないということですか?」
レニアの質問に精霊は答える。
【あなた達が大人しく帰るなら出口への道案内ならするわよ。私の契約者さんが】
「へっ?!オレかよ?」
【だって……大事なコレクションを壊した人たちと一緒にいたら、いくら温厚で通しているわたしでも嫌な気分になりますもん】
地の精霊はぷいっとそっぽをむいてしまったが……まあ、分からなくもない。
「あの、大地の精霊さん、さっきはごめんなさい。あなたの大事なものだと知らなくて、その…傷つけてしまって…」
レニアは言いながら、手で何かの印を結びながら、変わった礼をしている。
【あら、あなたは『精霊への謝罪の意味』を心得ているみたいね。契約者さんより精霊を知っているのね。まあ、いいわ、あなたに免じて溜飲を下げといてあげる】
「ありがとうございます。大いなる精霊様」
レニアは事実を言い直し、謝罪をしただけだが、精霊にとってはそれでよかったらしい。
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