34話
カラン
「いらっしゃい」
店内はまだ昼過ぎくらいなこともあってか、客はまばらだ。そんな昼から飲んでるひともいないだろう。
昼食メニューのオムライスAセットを頼み、ドゥエスが焼き魚のBセットを頼んだ。
「君たちは?見かけない顔だけど、……観光かい?」
食後のコーヒーを運んできた際に声を掛けてきたのは酒場のマスターと思しき黒のベストを来た中年の男性だ。
やつれているのか、暗めの照明のせいか少し顔色が悪く見える。
「オレはドゥエス。遊び人さ。最近この近くに棲む知人に喚ばれて来たんだけど……」
ドゥエスの説明が完全に遊びに来た人じゃないか。
間違いではないのだが、不安を覚えたのはなぜだろうか。
「遊び……まあ、なにか面白いものがあるか微妙だけど、楽しんで行ってね……?」
酒場のマスターは不振な表情をしている。
そりゃそうだろうな。
完全に観光客だ。
一緒にいる俺も同じ目で見られていると思うと、流石に見過ごせないので口を挟んだ。
「こいつは自称・遊び人だが、俺は何でも屋をしているエリー(仮)だ。なにか困り事があれば相談に乗るぜ。報酬は要相談だ。」
「……君は、彼と同業者では無いのかい?」
「俺は訳あって彼と行動を共にしているだけで、遊び人仲間では無いとだけ言っておくよ」
ここで訂正しておかないと、勘違いされていそうだしな。
「それに、こいつは遊び人でも『使える方の遊び人』だと思うぜ」
ドゥエスは魔法を使うのに抵抗があるようだが、武術の心得もあるようだから、多少戦力にカウントしてもいいだろ。
「えー、オレに期待されてもなー……」
「今のままでは路銀が心許ないんだが」
ぶつくさ文句を言い出したドゥエスにだけ聞こえるよう囁いておく。
「困りごとがあったら、なんでも任せてくれマスター!お礼は美女の添い寝と美味いメシがいいぜ!!」
ノリよく引き受けてくれた。
よしよし……
「んー……それなら、坑道内の人捜しを手伝いしてくれないかな?」
「人捜し?」
それは外のやつらが噂していたものだろうか?
「2日前に、アーリアから来た若い魔道集団がね、近くの坑道に勝手に入って荒らして回った挙げ句、そのうちの何人かが立入禁止エリアに入ったみたいで……、戻ってこないみたいなんだよ。」
「うわぁ、そりゃあまた……」
「アーリア?」
「王都より西の方に魔導都市があるんだ。そこに『アーリア魔道学院』ってゆー魔法使いや魔法剣士を育成している機関があるんだけど……」
「学院……ってことは学生が迷子になったってことか!?」
「……そういうことです。どうやら、その学校の卒業課題のひとつに魔法道具の調達をするものがあって、毎年この季節になると10人から20人くらいの生徒がこの町に来て課題をこなしていくんですよ」
「調達……ってことは、学生でも坑道に立ち入るってことか?」
「ええ、といっても初日は案内人を付けるのが鉄則ですが、数日したら生徒だけで入ることもあります。今年は人手が足りなくて、精霊教会や外からきた冒険者にも動いてもらってたんですよ。」
「地元の教会はともかく……冒険者って……いいのかそれ?」
ドゥエスが心配そうに言ってくる。
「……何年か前にも同じように冒険者に用心棒がてらお願いした時は何事もなく済んだので……油断しちゃいまして……」
「一部の学生共々、立入禁止エリアに迷い込み、行方不明になった……と?」
「そゆことです……うぅ、思い直しただけでも頭痛くなってきた……」
話しながらこめかみをマッサージし始めるマスター。
気苦労が耐えなさそうだな。
「しかも……その行方不明の中の何人かが貴族出身らしく、それがバレたらと思うと、町の存亡にも関わってきそうでして……何人かの冒険者にも声をかようにも出払ってしまっていて……」
「はぁ。それはまた、面倒なやつもいたもんだなぁ……」
「ふむ……要は、大事になる前に救助すればいいんだろ?いいぜ」
「え……それはつまり……請け負ってくれるんですか?!」
「そりゃ、そういう仕事がメインだからな。」
「あ、ありがとうございます!報酬は成功報酬で出しますね!」
……あっはい。
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