33話
俺の交渉術の未熟さを噛み締めつつ、引き下がったところで、今度は今まで静かにしていたドゥエスが口を開いた。
「なあ、店員さん、この町で神殿や魔法使いが集まってるような集会所は知らないか?」
「神殿は精霊教会があるけど……魔法使いの集会所は知らないなあ。お客さんは一体?」
「ああ、オレはドゥエスってんだ。この辺に住んでる知人が大事にしていた物を盗まれたって相談を受けてこの町に来たんだが、あいにくこの町は不慣れでね。」
てっきり店員が男だったから、黙ってるのかと思ったぞ。俺の考えすぎだったようだ。
「窃盗ねえ……ああ、あったねえ」
ドゥエスに訝しげな目を向けつつ、口を開いてくれる男性店員。
「数週間ぐらい前かな……一部の鉱石の盗難が起きたことはあったけど……どれも宝石加工用じゃなくて魔道具用のでね…精霊教会なら知っていると思うから行ってみると良いかもね。」
「魔道具用?」
「あまり知られてないみたいだけどこの町で採れる鉱石には、宝石加工用のものと魔道具用の鉱物があって、それぞれ規定があるんだ……石についてもっと知りたい?長くなるよ?」
「それは結構デス」
「遠慮するよ」
専門的な話題を振られそうだったのですぐにお断りした。ドゥエスと俺の拒否は同時だった。
「そか。………私のお店で扱ってるのは宝石加工された石がほとんどだから、被害はなかったんだけど、詳しく知りたいなら魔道具加工業の職人か魔道具店に行くといいよ」
断ったが悪い顔はされなかったことに少し安堵しつつ、
「その魔道具店は近くにあるのか?」
「町の西側の外れにあるから分かりやすいと思うよ。ただ、そこは夜の営業だからまだ閉店してるだろうけどね。途中に教会もあるよ」
「そうか、ありがとう」
とう言って店をあとにした。
「宝石店の店員が言っていた精霊教会がこの町にもあるとのことだが、王都の中にもあったな。あの水の精霊の所みたいにヒトの肉体を素材に使ったりする集団なのか?」
「あんなのは例外さ。たいていの精霊教会は信者以外でも困ってる人がいたら簡単な怪我や病気を治療してくれる治療所があったり、孤児の保護をしてたりもするちゃんとしたところだ。……そもそも魔法使いはお金取るからね」
「それでも精霊を祀ってるところだから、精霊を嫌うヒトは一定数いるし、閉鎖的な所が多いから……できれば用が無いなら近づかないほうがいいところだぜ。」
「はあ……。精霊は繁栄をもたらしてくれるような存在ではないのか?魔法使いとは違うのか?」
「何とかとハサミは使い用っていうでしょ?あれと同じだよ。精霊教会も見えないところでちゃんと回ってるのさ……魔法使いはそこのところ弁えてるヤツが多いから、ほら、オレみたいに」
精霊教会の説明を求めたはずなのに、なぜかドゥエスに自慢された。
そんなことを喋りながら、町の西側に向かうと、何やら人だがりが出来ていたのが見えた。
「良かったなドゥエス、交渉がやりやすくなるぞ」
「どういうことエリー(仮)ちゃん?!」
「言葉を間違えたようだ、丁度良く何か事件が起きているらしいな」
「……ちょっと楽しんでない?オレはここで遠巻きにしてるから行ってきてみなよー」
換金失敗したもどかしさと、精霊の住処とやらに入ってみたいという好奇心が急かしてしまったようだ……
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ドゥエスを置いて人だかりに近づくと
「……聞いたか?まだ見つからないんだってな?」
「まだか……」
「余所者なんて入れるからだ」
などと不満を口にしているらしい。
俺は近くに居た温厚そうな男性に声を掛けた。
「何かあったのか?」
「ん、ああ、なんでも近くの坑道に踏み入った若者が行方不明だとよ」
「行方不明だと?」
「ああ、昨日からまだ見つからないみたいで」
「まだ学生なんでしょ?心配ねぇ……」
と、一緒に話していた40代くらいの女性が補足してくれた。
「でも今回は用心棒も同行させてたってことじゃないか?きっとそいつらと奥に入っちまったんじゃねえのか?」
「用心棒って言っても、金で雇われた余所者の冒険者だろ?お宝に目が眩んで盗難してに逃げたんじゃねえのか?」
「有り得るよな!まぁ、あの坑道にはろくなものが残っちゃいないが、なんか荒らされるのは気分悪ぃよなぁ」
どうやら坑道内に誰かが入ったまま戻ってこなくなったらしい。
その割には愚痴が多い気がするが
「これだから魔法使いは……ねぇ。あ、アンタも、意地汚い魔法使いに気をつけるんだよ!」
「お……おぅ……」
「こないだなんて魔法使いに、健康に良いって変な大きな壺を押し付けられた近所の爺さんが腰を痛めてねぇ……」
「あらまぁ、そりゃ大変だったねぇ」
それはきっと大きな壺のせいなんだろうな。
突っ込みはしないでおいた。
「大変なんだなぁ……」
そのまま外から来た魔法使いへの偏見による愚痴がヒートアップしていったので、そっと抜けてきた。
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木陰で休んでいたドゥエスの所に戻った。
「…………金になりそうだった?」
「……坑道内で行方不明事件だとさ。詳しく聞きたかったが、うっかり愚痴集会に発展しちまった……さて、次行くか。」
「フフッ……お腹空いてきたからさあ、ちょっと喉が乾いたんだけど、実益をかねてそこの酒場に行かない?」
吹き出しつつ、提案してきたドゥエスの視線の先にあったのは、酒の神の名を冠した酒場兼飲食店のようだった。
「……情報収集にいくか?」
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 3/28 の予定です。
気分的には24に投稿したいところですが、たぶん無理でしょう、遅めでごめんなさいー




