31話
【……ところで昨日一緒にいたアノ子は?いないの?】
水の精霊はドゥエスに質問している。
「『アノ子』って……ひょっとして地の精霊ちゃん?」
【そうよ、引きこもりっ子の末妹と久しぶりに会えたんだから、アンタんとこに来れば会えるかなって思ったのに。言っておきたいこともあったし】
「残念ながら、一旦住処に戻るって言って本体に戻っちまったぜ。伝言ならオレが伝えておくぜ?」
【あら、そう?悪いけどアンタじゃねぇ……】
ドゥエスに蔑むような、疑うような眼差しを向けている水の精霊。
「随分冷たいな水の姉ちゃん。しゃあねえな、何か用事があるらしかったから、いま呼んでもすぐ来てくれるか分からねえけど、それでもいいのか?」
【いいから早くして】
「随分上から目線だな。ならやってやるぜ」
言うと耳のイヤリングに触れ、何かボソボソと囁いている。
そして何やら辺りの土が隆起し、人に似た形に形作られていく。
【……呼びました?】
なにやら昨日会った時よりちょっとテンション低めのポニーテールの精霊、地の精霊が出てきた。
「ああ、……てか、珍しく元気ないね。どうかした?」
【あー……ちょっとありまして、それより何ですかぁ?】
「こっちの水の精霊の姉ちゃんがアンタに話したいことがあるんだってよ。」
【なんですお姉さま?】
【ここ最近、ワタシの住処内で窃盗があったみたいでね、物騒なことが多いみたいだから、アナタも気をつけてねって言っておきたかったのよね】
「……盗まれた?」
【ええ、何の変哲もない贋作物だから問題ないんだけど……】
【あー……それで……うぅーん…】
何やら歯切れが悪そうにもにょもにょ言い始めている。
「何か事件でもあったのか?」
【それが、……私の領域内にある精霊王の封印のひとつが……誰かに盗まれちゃったんですぅ……】
「なっ!?」
【な、何ですって!?】
ドゥエスだけでなく水の精霊までも驚きの声を上げる。
「封印の欠片?」
「あぁ、精霊王の力の一部は封印されてるんだけど、その欠片を彼女ら精霊が守護しているんだよ。」
ほ、ほう……
「それで、地の精霊ちゃん……それは本当なのか?」
ドゥエスは見てわかる程に青ざめている。
【私が嘘をつく必要ないことぐらい、知ってますよね?もしも、アレが悪い人の手に渡れば、精霊王の封印が解かれちゃうんじゃないかって気がして……それは困るんですよね……。】
「ま、まぁ……そりゃそうだけど。」
【出来ればずっと封印しててもらいたかったのだけれど……ちょっとこちらの方が立て込んでしまっているので、……しばらく契約者さんのお手伝いができそうにありません。……それをお伝えしたくて。】
「なら、オレが手伝いに行こうか?オレらとしても他人事じゃないし」
チラリとこちらに目配せをしてきた。
後回しに出来ない、と云いたいのだろう。
【本当に?それは助かります。場所はそこから東の方角にある炭鉱の町『ニトラス』の近くの山にあるので、その目で見てもらえれば分かるかと】
「東ね…」
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地の精霊はドゥエスに東の町に来るよう伝えると、すぐに消えてしまった。
そこに黙っていたカーヤが心配そうに口を開いた。
「兄さんは……また行っちゃうの?」
「ああ、なにやら地の精霊ちゃんの所で放っておけない事が起きてるみたいだし、エリー(仮)ちゃんとの用事も済ませてないしな。ちょっくら東に行って来るぜ。留守を頼んだぞカーヤ。」
【心配しなくても大丈夫よ。アナタにはアタシが付いてるもの】
「うん、それは頼もしいね。出来れば兄さんにもしっかりした精霊さんの目が付いていて貰いたいところなんだけど、今回は頼れなさそうだしなぁ……」
「うぐっふぅっ……!!」
しみじみと言ったカーヤの呟きは決して大きくはなかったが、ドゥエスに届いたらしい。
「い、今に見てろカーヤ、次に帰ってくるときは億万長者だ……」
返した声に覇気はない。
「……ドゥエス、さすがに無理な希望は抱かせない方がいいぞ。」
「魔法も使えない僕がついていった所で、役に立たなさそうってのはわかってるんだけど……兄さんてイジワルだよね。まあ、あまり期待しないで待ってることにするよ。」
なにやらカーヤは意味深な笑みを浮かべていたが、何が言いたかったのだろうか?
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