30話
【―それで?答えを聞きに来たわ蒼の子。ワタシに綺麗な目をくれる気になったかしら?】
次の日の朝早く、律儀に水汲みに出たカーヤの前に水の精霊がきた。
「水の精霊さん、兄さんと地の精霊さんに免じて、僕が老衰で死んだ後……なら、目玉くらいあげてもいいよ……」
水の精霊ににっこり笑顔を向けるカーヤ。
【…………抜かりないわねこの少年。老衰って、それじゃあ綺麗な青さが無くなっちゃうじゃない。くすんだ色は……ちょっとなぁ……】
「そうなの?なら、今とは違った色の変化を楽しめばいいじゃないか」
【え、……ぇ?】
「僕の目が好きなら、ずっとボクと一緒に居ればいいよ。そうすれば好きなだけ見ていられるでしょう、水のお姉さん?」
【…………一緒に…?……………ねぇ、この子……本気で言ってるの?それとも、ワザと口説いてるワケ?……まさかとは思うけど、狙えるもんなら狙ってみろって喧嘩売ってるのかしら?】
気まずくなったのか、ドゥエスに質問してくるが、ドゥエスも少し引きつっている。
「…………さ……さぁ…………悪意はないと思うから、本気で口説いてる?……のかも」
カーヤの表情からは読み取れない。
むしろ優しい笑みを浮かべている……
冗談を言っているようには見えないが。
「ふむぅ、あーゆーのを女たらしというのか。なるほどなるほど」
カーヤという者は、ドゥエスから『何か』を受け継いでいるようだ。
「エリー(仮)ちゃん?オレは、カーヤに女の子の魅力を語って聞かせたり、優しくしろと言ったことはあるけども、口説き方とか落とし方とかは教えたことない……よ?だから、オレのせいでは……ないと思う…………うん」
「会話しなくても見て覚えることもあるだろう?」
「勘違いしないで欲しいのだけれど、喧嘩を売ってるわけじゃないよ?」
【そう?なにが魂胆かしら?】
「別にそんな大したことじゃないよ。兄さん好みの美女が多ければドゥエス兄さんがボクの近くにいてくれる時間も増えるかなって思って……」
【ぶふっ……!?】
「おいおい……」
なんという歪んだ動機か。
話題に乗せられた当の本人はあんぐりと口を開けているし。
「ドゥエス、……あんたの好みは精霊だったか。」
「あぃえ!?何言ってんのエリー(仮)ちゃん?!」
「なんていうか、『離レテイテモ?オ互イヲオモイ合ウ??仲ノ良イ?兄弟?』なんだなーと思って」
「……エリー(仮)ちゃんの勘違いだよ……そして疑問も多いね。カーヤ、お前も本気にし過ぎだって……」
さしものドゥエスもカーヤに突っ込みをする。
【……いいわよ】
「え?」
【譲歩してあげるって言ったの。褒められて嫌な気分ではないし、そういう考え、面白そうだからアナタの力になってあげるワ】
水の精霊が快諾すると、カーヤは満足げに笑った。
「ふふふ……ありがとう、水の精霊さん。」
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【力になってあげるって言ったけど、ワタシの本体は今ここにないから、とりあえず繋がれるものが欲しいわね……水のあるところを辿って移動することは難しくないけれど、時間ばかり掛かってしまうもの】
「繋がれるもの?」
【そう、なんでもいいんだけど……】
カーヤの疑問に、ドゥエスが説明する。
「繋がれるものってのは、言わば精霊を何時でも喚んだり、会話するのに使える『触媒』ってことだ。オレとカーヤの付けてるイヤリングが地の精霊ちゃんとの交信に使えてるのも、それを媒介として力を行使したり、呼び出すことが出来るんだ。魔力消費とコツがいるけど。」
契約して使える道具ってことか。
「水の精霊ならーー」
【貴金属】
ドゥエスの説明を遮って水の精霊はハッキリ言った。
「え?さっきなんでもいいって……」
【『何でもいいけど貴金属にしてね』って言おうとしたのよ!アンタの事だからその辺の小石とか拾ってきそうじゃない?】
「いや、さすがにオレもそこまで意地悪しねぇって!……言おうとしたけど……」
最後は小さく呟いていた。
石ころでもいいのか。
「じゃあ、このロザリオを使って。」
それは昨日、ドゥエスがカーヤに親の形見として渡したロザリオだった。
【イイワ。それをかざしていてちょうだい。】
水の精霊は彼が取り出したそのロザリオに軽く触れた。
淡い光が辺りを包むと……
【終わったわよ】
「え」
光っただけで特に何か起きたわけじゃないようだ。
「案外簡単なんだな。何か呪文でも云うとかするのだと思っていた」
「オレも。地の精霊ちゃんと契約した時はもっと何か文言喋ってたから、少し期待しちゃった自分が恥ずかしいぜ……」
【別に何か唱えてもいいけれド、効果が変わるわけじゃないもの。時短が流行りナノ。ともあれ、これカーヤ君とワタシが離れていても水場があれば交信したり、私の水の精霊の力を使った呪文が使いやすくなるはずよ】
「ボクは魔法は使えないんだけど……」
【使う気があるなら1から教えてアゲルわ。このワタシが手取り足取り……ネ☆】
「あ、ありがとう……」
「カーヤ、その女嫉妬深いから適度にあしらうんだぞ!捨てたくなったらオレが捨ててきてやるから」
横からドゥエスがアドバイスになっているのか分からないアドバイスをしている。
そこは魔法の知識を教えたりする所ではないのか?
「……ドゥエス兄さん、いくら僕でもこのロザリオを手放すつもりは無いかな」
「…あ……そぅ……だったな。すまん。」
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