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精霊通信録  作者: 襾犲 邑
こちら側
3/108

3話

エリー(仮)目線です



机に何時間そうしていただろうか。

午前中にpcの電源を入れて,直近で頼まれた情報を端末に入力する。

今日の急ぎの仕事が終わってしまった。


このあとは、何するわけでもなく、ただぼーっとしていた。

苦めのコーヒーを飲めば少しは頭が冴えるかとひらめいたところで、部屋から出た。



パシュー


部屋を出ると背後でオートロックがかかった。

鍵を持たなくていいのは助かる。

白く無機質な廊下の先、エレベーターで下に降りるのがややめんどくさいが、このフロアには飲食スペースがない。


エレベーターは一部の者専用のものなので少し優遇はされているが、それでも少しは時間を待たなくてはいけない。

ガチでめんどくなったら,窓から降りればいい。


前に建物の外を歩いていた一般の人に見られたときは、ちょっと騒動になった。



落ちても俺は死なないのに…



部屋にコーヒーメーカー設置しようと思ったことがあったけど、片付けめんどくさいし、常にデスクにいる訳じゃないから共有スペースのもので充分だ。

味や香りこだわりたい時はお店に行きゃいーし。



エレベーターで、目的の階に着くと数人だけ座れるカフェスペースに先約がいた。


直毛の銀髪のトサカ部分が立っている。


最近よくカフェスペースで本を読んでるらしい。

「ガルヴァート,なんの本を読んでるんだ?」

「あ、エリー(仮)か。これ?最近流行りの刺繍の本」


「……刺繍?」

ガルヴァートはガタイに似合わず、たまに自前で動物のぬいぐるみ作ってるのを見たことはあったが、最近は刺繍にハマりだしたらしい。

たまに専門用語なのか、訳の分からない単語を使う時があるが,多分テレビや本の影響だろう。

「刺繍って何に使うんだ?」


「刻印替わりに使うのよ」

答えは後ろから声が聞こえた。

振り向くと、ミドル丈のライトブロンドの女性、黒氏の真っ黒な目と目が合った。


シンプルな服を纏った30代くらいの女性だが、正確な年齢は不明だ。

その黒い目は、誰にも読み解くことができない守護の魔術がかけられており、誰にも解くことが出来なかった。

俺を含めて。

そのため、ついたあだ名が『黒眼王』だ。

本名は違うが、あだ名の方が本人が気に入ってしまい、そっちの名前をいちいち呼ぶのも気が引けたので、有事の際以外は、『黒氏』と呼んでいた。


各分野の魔法、呪術、召喚術に長けており、そっちの分野での顧客が常にいるらしい。かくいう俺やガルヴァートも、いろいろと助けられている。

人魚を二つ足にしたり、レインとレーゲンなどの希少種族『ヴィジュヒラム』のために異世界との『狭間の空間』を創り、一部の瘴気を遮断する方法を編み出したんだとか。

そのため、一部の魔術師からは『魔女サマ』とか呼ばれているらしいが、本人は占い師になりたかったらしい。



そして…怒らすと怖い。



「こないだ失敗した魔術があってね…」


「めずらしいな,アンタが魔術の失敗なんて」


「そう?」

コーヒーを飲みながら,物思いに耽る所作は優雅なものだが


「……筋肉増強の魔術を他人にかけようとしたんだけど、ちょっぴり調整を間違えたみたいで…」


「あれはチョッピリじゃないって…」

こころなしかそっぽを向いているガルヴァートがつぶやいた。


「?何かあったのか??」


「ガルヴァートの腕が裂けたわ」

サラッとえげつないこと言った。


「さ、裂け……?銀竜族トップのガルヴァートの腕がか?」


ガルヴァートは人化の術を使っているが、その正体は、竜族で最強を誇った銀竜の元・族長―とある事情で滅んでしまったが、彼はその生き残りだ。


頑丈さも人間とは比較にならないほどのはずだ。

その彼の腕が裂けたとゆー事は……


「そうよ。『エリー(仮)ちゃん強化術』を作ろうとしたんだけど、試しに使わせろって言うから、使ってみただけなんだけどねぇ」

結果が芳しくなかったわ、と困ったように手を顎に持っていく黒氏。


俺がいない所で勝手に作戦が出来てたのか。

しかも、人間の肉体の俺に使おうとしたのかよ。

さすがに死ぬわ。


魔族の不死性と、もう1人の魔力で強化されてるとはいえ、頑丈さでは竜族のガルヴァートに適う気はしないんだが?

体格からくる筋肉的な意味合いもあるし。


「それでガルヴァートに『アレはそのまま使わないで』っていわれたから、じゃあ、取り外し可能な記述式魔術なら行けそうかなって思って、刺繍の図案を彼に渡したのよ」



ん?

……今の流れだと、黒氏のヤバめな魔術実験を止めてくれたんじゃなかったのか?



「ガルヴァート……?お前も加担者か?」

ギロリと睨むがガルヴァートはこっちに向こうともしない。

そのかわりポツリと声が聞こえた。

「……仕方ないじゃないか……このままだとお前が危険な目に合うって、黒氏がいうから…もしオレの居ないところで何かあったら……って思って…」


「簡単にノせられているんじゃねーか」

何かの勧誘に。


ひとの心配するより自衛してもらいたいもんだ。


誰より力あるくせに根が真面目だから、変なもの騙されやすいのか……それとも、黒氏が一枚上手なのか?



ニヤリと黒氏の口許が綻んでるのがガルヴァートには見えてないらしい。

「魔女め」


「あら、褒め言葉ね」


黒氏は味方という解釈いいんだろうか?とたまに思う。





ありがとうございます。

次は9/27の予定です

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