28話
「いろいろと積もる話があるから、中でご飯食べながらでもどう?」
カーヤはこぼれてしまった手桶を使って、井戸から何事もなく水を汲み取り直すと、ドゥエスと俺に向かった。
「ありがとうカーヤ……オレ、久しぶりにおばさんの硬いパンが食べたい気分だったんだ」
ぐうぅ……
ご飯の単語を聞いてか、待ってましたとばかりに、ドゥエスのお腹の音が鳴った。
「エリー(仮)さんも、良かったらどうぞ」
「……お言葉に甘えさせてもらうよ」
「狭い家で申し訳ないけど」
「水の精霊を追いかけて来たとはいえ、突然押し入ったのはこちらだ。むしろ気を使わせてしまったな」
「賑やかなのは嫌いじゃないから構わないよ」
なんとも出来た男だ。
*************
「……なぁ、エリー(仮)ちゃん……」
カーヤが朝食にするからと家に入ったところで、ドゥエスはオレに待ったをかけた。
「……ちょっと折り入って相談があるんだけどいいかな?」
「なんだ、そんなに改まって?」
「このロザリオ、エリー(仮)ちゃんの方からカーヤに渡しておいてくれない?拾い物ってことで……」
そう言って渡してきたのは、聖霊教会の地下で遺体から回収した銀のロザリオだった。
「これは、あのバラバラにされていた男のものだったか」
「そう、……これはあいつの父親の遺したものみたいだよ。名前が掘ってあったよ」
「みたい?ドゥエス、あんたは彼の両親と面識はないのか?カーヤの兄弟って名乗っていたじゃないか……?」
てっきり顔を知っていたからだと思っていたんだが、違うのか?
「あー……オレが来た時にはあいつ、両親がいなくて、ひとりぼっちだったんだ。何度か俺が不在にした時に戻ってきたことがあったかもしれないけど、オレがあいつの両親に会えたことはないな。」
ポリポリ頬をかくドゥエス。
「兄弟って名乗ってるけども、オレがたまに居候しに来てるだけでさ。オレが昔、行き倒れてこの村に辿り着いた時に、カーヤに助けられたことがあったんだ。」
「助けられた……?」
「ちょっと昔に色々やらかして、ね。……それでお返しって言ったら重いかもだけど、カーヤの『お助けお兄さん』になれないかなーって」
自称お助けお兄さんって、隕石並みに重いんじゃ……
「なあ『自称・お助けお兄さん』よ。それは彼に頼まれてやっていた事なのか?」
「………………いいや、オレが勝手にやってた事だ」
「…………」
それは善意の押し付けっていうんじゃなかろうか?
あろう事か、ドゥエスは親の形見になるっていうロザリオを俺の手から渡してくれと言う。
「それは……何か違うのではないか?……あんたら兄弟の『在り方』を理解して言っている訳じゃないが。…………そのロザリオはあんたからカーヤに直接渡せ」
「…………エリー(仮)ちゃんって、ちょっぴり厳しいとこあるのね……」
そうか?
「そーゆーあんたのは、なんだか『逃げ』に走っているように見えるぞ。ちゃんと話して説明すればいいのではないのか?」
俺の気のせいか?
言われたドゥエスも図星なのか、取り乱しているようには見えない。
なんとも言えない表情を作っている。
「逃げ……ねぇ。……それもそうか。ありがとエリー(仮)ちゃん」
云うと先に入って行ってしまった。
「……はぁ……どういたしまして……」
目玉の件といいロザリオのことといい、あのカーヤという者には、何かがあるのだろう。
ちゃんと精霊王に辿り着けるのだろうか?
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