25話
朝焼け――
ドゥエスの案内で王都から南西にあるという少し離れた小さな村にきた。
その村は静かで、どちらかというと寂れた村だった。
もともと住んでいた者たちは今の王権の発足とともに村を追われ、廃村になったところに、何人かが移り住んだ土地らしい。
「村を見渡せる高台には、つぶれた教会があるんだ。カーヤとオレぐらいしか近づかないところだけど、景色は良いところだぜ。」
「そのカーヤという者が、水の精霊に狙われているというのだな?」
「ああ、カーヤの目は青いし、髪も青いから見れば一目でわかるさ。」
紅髪と赤眼のドゥエスとは対照的だな。
足早に進むドゥエスの後に続き、村の外れにある小さな家の庭先にその者はいた。
身長はドゥエスと俺の間くらいだろうか?
腰まで伸ばした蒼い髪が朝焼けになびいている。
中世的な顔立ちで、16、7歳くらいだろうか、どことなく幼さも垣間見えた。
水を汲みに行こうとしていたのか、井戸の前で手に桶を抱えているようだ。
その場から動かず、どこかを見ている。
「カーヤ」
ドゥエスが声をかけようと近づいたとき、何かが近くにいるのが見えた。
井戸の中から何かがせりあがっているのが見えた。
あの水の精霊だ。
「遅かったか……」
大人しく会話をしているようだ。
【初めまして、青い目のひと。ワタシね、綺麗な青い目が好きなの。カーヤ君っていったかしらね、アナタのその綺麗な青い目、ワタシにちょーだい。】
「ちょ」
ドゥエスが止めに入るが、ここからではヤツのほうが早い。
「突然水の中から現れたかと思えば、何を言っているの?そんなの僕の利益になってないでしょ。それじゃあ駄目だよ精霊さん」
冷気を感じるほどの冷たさできっぱりと断るカーヤ。
【あら、見かけによらず冷たいわね。何が欲しいかしら?ワタシのマナが必要なら貸してあげても良いわよ?ワタシの力を使いこなせれば、ケガや病気が簡単に治せるようになるわよ?】
……ほう、水の精霊は回復が得意なのか。
「うーん、僕は困ってないしなあ…」
【川や井戸まで水を汲みにいかなくても、畑に水を撒くのが楽になるわよ】
……それは便利そうだな。
「僕の日課にケチを付けるつもりなのかい?」
……日課なのか……。
【澱んだ水路を綺麗なものに出来るわ】
水の精霊は諦めない。
……どんどん交渉の規模が小さくなっていないか?
「それは……便利そうだね……」
【そうよ!そう!生活が豊かになるわ!】
餌に喰らいついたといわんばかりにテンションがあがる精霊。
「水の精霊さんは、僕の両親のことを知ってるんでしょう?」
【両親?…ああ、あなたと同じ目の色をした人たちのことね?知っているわ】
「そう、二人のこと、あまり知らないから、教えてもらいたいところなんだけど、その前に……僕の両親の目玉、返してよ」
【え?】
これにはきょとんとした精霊。
無茶をいう。
彼の父親と思われる男の目玉は精霊の泉に入れ、マナの元として精霊に吸収されてしまった。
母親と言われる者はここにはいないし。
「返してくれないなら、僕もあげられないよ」
【くぅ!…あーいえばこういう……!】
水の精霊に狙われていたというから、慌てて追いかけてきたが、どうやらこのカーヤという優男、ひとすじ縄ではいかないらしい。
「なあ…あの水の精霊、手こずっているんじゃないのか?」
「そうみたいだな……カーヤのやつ、成長したなぁ…」
しみじみと浸っているドゥエスを横目にしていると、水の精霊はしびれを切らしたのか、
【あーん、もう!じれったいわねぇ!とっととワタシによこしなさいよ!!】
そういうと彼に襲いかかった。
「カーヤ!!」
「黙って見てりゃあ、力に溺れた女狐め!!カーヤに手出しすんなら、容赦しねえぞ!!【土崩壊】」
叫び、走り出したドゥエスは、片耳のイヤリングに手を添えて何かを唱えた。
カーヤと精霊との間の地面が盛り上がり、壁を作った。
ドガン!!
「ド、ドゥエス兄さん?」
【―!?その力、貴様、ただの魔術師ではないな!?】
「はん!残念ながら、魔術師じゃなくてちょっぴり強くてカッコイイ遊び人だ!!」
言いながら、カーヤと精霊の間に入るドゥエス。
【貴様のその術、…ワタシと同じ精霊の気配を感じる……まさか貴様、精霊の契約者か?!】
妹?
なんのことだろうか?
「オレはよく知らねえが、地の精霊ちゃんを知っているみたいだな?」
【あの娘の力を無理矢理奪ったのね!?】
逆上し、水が槍の形になると、ドゥエスの方に向けて――
【違います!お姉様!!】
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