21話
水路沿いの通路を道なりにしばらく進んでいると、前方に明かりが見えてきた。
話し声だろうか?
何かの音が聞こえてくる。
「……光量を落とせるか?」
静かにドゥエスが言ってきた。
確かに、向こうから見つかってしまうな。
照明の魔法を解除し、静かに進む。
*******************
そこには少し開けた空間が広がっており、一番近いテーブルを囲むようにして、3人のローブを着た人がいた。
聴こえてきた話し声は彼らのものだろう。
柱の影に身を潜ませ、耳を凝らしてみると世間話が聞こえてくる。
「―にしても、最近集まりが悪くなってきたよなぁ、色付き目玉の回収だなんて。いつまで続くんだこの作業。」
と大きい鋏のようなものをもった男。
「そろそろ打ち止めなんじゃねぇか?」
黒い袋を手にした男が中に何かを詰めていく。
「青い目玉なんて集めてなにしてんだ?うちのお偉いさんは?」
「さあ、知らないねえ。」
「オレらが分かってるのはただ一つ。それは、この解体作業が終われば、今日は帰れるってことだ。」
男たちが何をやっているのかは、人の陰になっていて見えない。
「でも、聞いたか?教主サマはあの水の精霊の核を捕まえたって話。本当だと思うか?」
「私は捕まえたっていうんじゃなくて、契約したって話を聞いたぜ?」
「契約って、じゃあ本格的に王族に手を出すつもりなのか?ウチの教主サマは?冗談も大概にしてくれよォ」
「オイオイ、私たちだってこうしてその『精霊様の供物』を準備してるんだぜ。どこで聞かれてるか分からないんだ。」
「っかー!くわばらくわばら。……こいつもかわいそうになあ。」
「こいつって、確か夫婦で来た男の方だよな?」
「元・蒼の男爵家とかっていう…」
「ああ、あれだろ?15、6年も前に没落したってところだっけ?」
「そうそう。没落貴族サマは王都の外、西のはずれにある廃村…なんてったけ?アシャト村……から来たんだろ?自分から儀式に参加したいってい言い出したんだってな?」
「精霊の『祝福』を求めて王都まで来たんだろ?」
「強くなって貴族に返り咲くつもりだったんだろうけど、そう簡単に『精霊の祝福』が手に入るもんか」
「まあ、そう言っても私たちも似たようなものじゃないか。」
「教徒のカガミだよな、ホント。」
「私たちもあんな風に精霊様にひざまづいて、強い魔法使いになれるのかねぇ?」
「えー、今のままでいいじゃん。そういう危ない事は、余所者にやってもらおうぜ!」
「それもそーだなー。あはははは!」
ひと通り愚痴りあったら別々の作業のためか、その場を離れた。
彼らの体の陰になっていた『解体していたもの』が見えた。
……
…………
見なくてもよかったかもしれない。
********************
「ドゥエス、彼らが言っていた『供物』ってのは、精霊に渡すもの……で合っているか?」
ひきつりながら、小さくささやく。
「あぁ。……それにあの服、ヤツらは精霊教会の奴らだな」
つぶさに観察していたドゥエスのつぶやきが聞こえた。
「知っているのか?」
「さっきのヤツらとあの横たわっているやつの服だけどな、……あのローブにあった青い紋章は、水の精霊教会の信者の儀礼服だ。昔見たことがあった。」
薄暗い地下空間の中では暗くて男女かどうかはよく分からないが、ほかにも何人か、黒生地に青の装飾が入っているマントを被っている人がいた。
「あれじゃ、邪教集団じゃねえか……」
「精霊を信仰してるヤツにろくな奴なんていないって。正義を振りかざしたいわけじゃないけど、出来れば全員叩きのめしてやりたいところだね。」
俺も、優しさだとか、正義感とかがあるわけではないが、止める気にはならないな。
「……冷静な判断を期待するよ」
「任せときな!普段の10倍の復讐心でメラメラ燃えてるから。今なら目ヂカラだけでロウソクを溶かせそうだ。」
ニヤリと悪そうな笑みを浮かべるドゥエス。
全然冷静じゃないなコイツ。
閲覧ありがとうございます。
次の投稿は 1/3 の予定です。




