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精霊通信録  作者: 襾犲 邑
地下へ潜る
21/108

21話





水路沿いの通路を道なりにしばらく進んでいると、前方に明かりが見えてきた。

話し声だろうか?

何かの音が聞こえてくる。


「……光量を落とせるか?」


静かにドゥエスが言ってきた。

確かに、向こうから見つかってしまうな。


照明の魔法を解除し、静かに進む。



*******************



そこには少し開けた空間が広がっており、一番近いテーブルを囲むようにして、3人のローブを着た人がいた。

聴こえてきた話し声は彼らのものだろう。

柱の影に身を潜ませ、耳を凝らしてみると世間話が聞こえてくる。



「―にしても、最近集まりが悪くなってきたよなぁ、色付き目玉の回収だなんて。いつまで続くんだこの作業。」

と大きい鋏のようなものをもった男。


「そろそろ打ち止めなんじゃねぇか?」

黒い袋を手にした男が中に何かを詰めていく。


「青い目玉なんて集めてなにしてんだ?うちのお偉いさんは?」


「さあ、知らないねえ。」


「オレらが分かってるのはただ一つ。それは、この解体作業が終われば、今日は帰れるってことだ。」

男たちが何をやっているのかは、人の陰になっていて見えない。


「でも、聞いたか?教主サマはあの水の精霊の核を捕まえたって話。本当だと思うか?」


「私は捕まえたっていうんじゃなくて、契約したって話を聞いたぜ?」


「契約って、じゃあ本格的に王族に手を出すつもりなのか?ウチの教主サマは?冗談も大概にしてくれよォ」


「オイオイ、私たちだってこうしてその『精霊様の供物』を準備してるんだぜ。どこで聞かれてるか分からないんだ。」


「っかー!くわばらくわばら。……こいつもかわいそうになあ。」


「こいつって、確か夫婦で来た男の方だよな?」


「元・蒼の男爵家とかっていう…」


「ああ、あれだろ?15、6年も前に没落したってところだっけ?」


「そうそう。没落貴族サマは王都の外、西のはずれにある廃村…なんてったけ?アシャト村……から来たんだろ?自分から儀式に参加したいってい言い出したんだってな?」


「精霊の『祝福』を求めて王都まで来たんだろ?」


「強くなって貴族に返り咲くつもりだったんだろうけど、そう簡単に『精霊の祝福』が手に入るもんか」


「まあ、そう言っても私たちも似たようなものじゃないか。」


「教徒のカガミだよな、ホント。」


「私たちもあんな風に精霊様にひざまづいて、強い魔法使いになれるのかねぇ?」


「えー、今のままでいいじゃん。そういう危ない事は、余所者にやってもらおうぜ!」


「それもそーだなー。あはははは!」


ひと通り愚痴りあったら別々の作業のためか、その場を離れた。


彼らの体の陰になっていた『解体していたもの』が見えた。






……

…………



見なくてもよかったかもしれない。








********************



「ドゥエス、彼らが言っていた『供物』ってのは、精霊に渡すもの……で合っているか?」

ひきつりながら、小さくささやく。


「あぁ。……それにあの服、ヤツらは精霊教会の奴らだな」


つぶさに観察していたドゥエスのつぶやきが聞こえた。


「知っているのか?」


「さっきのヤツらとあの横たわっているやつの服だけどな、……あのローブにあった青い紋章は、水の精霊教会の信者の儀礼服だ。昔見たことがあった。」


薄暗い地下空間の中では暗くて男女かどうかはよく分からないが、ほかにも何人か、黒生地に青の装飾が入っているマントを被っている人がいた。


「あれじゃ、邪教集団じゃねえか……」


「精霊を信仰してるヤツにろくな奴なんていないって。正義を振りかざしたいわけじゃないけど、出来れば全員叩きのめしてやりたいところだね。」

俺も、優しさだとか、正義感とかがあるわけではないが、止める気にはならないな。


「……冷静な判断を期待するよ」


「任せときな!普段の10倍の復讐心でメラメラ燃えてるから。今なら目ヂカラだけでロウソクを溶かせそうだ。」


ニヤリと悪そうな笑みを浮かべるドゥエス。

全然冷静じゃないなコイツ。





閲覧ありがとうございます。

次の投稿は 1/3 の予定です。

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