18話
展開がうまくいきすぎてる感ありますが、
今回は別のうまい話です。
夜の街に出てきたドゥエスと俺。
「いらっしゃいませ〜」
案内された店の看板はうっすら摩耗していが、かろうじて『エイトの肉屋』と読めた。
肉屋?
「なぁ、ドゥエス、肉屋とあるんだが?」
「そーゆーコンセプトの肉メインの居酒屋ってとこかな。オススメはエール・コスマンシリーズ」
「肉じゃねえのかよ」
反射的にツッコミ入れてしまった。
エールって麦酒のことじゃん?
シリーズってなんだ??
「お酒に合わせた肉メニューが出てくるスタイルなんだよ。頼んだお酒に合わせた肉が出る」
肉の好みで選べないのかよ。
「店長は昼は肉屋、夜は飲食店だから、肉の鮮度は保証するぜ。」
なるほど……。
美味しければ何でもいいと思っていたが、どうやら、当たり確定のお店というわけか。
店内はさほど広くはないが、焼いた肉の匂いが充満していた。人によってはこれだけで口の中が潤いそうだ。
店内の小さなレコード?のようなものから流れてる哀愁を誘う音楽が気になるのだが気のせいだろう……
通された席につくと早速ドゥエスは
「Y.コスマンでふたつ……あ、エリー(仮)ちゃんは呑めるの?」
聞いてきた。
「そういえば飲んだことないかも……」
「え」
人間の肉体の貴幸は未成年だが、今の俺、魔族の力を、兼ね備えたエリー(仮)としてなら酔わない…………と思う。
「……一つはオレンジジュースで」
ドゥエスは店員に違うメニューを頼んだ。
「かしこまりました」
……
「…………えと……?」
「未成年には飲ませられないな」
俺が何か言いたそうな顔をしていたのか、ドゥエスは続けた。
「ジュースだって搾りたてだから、美味しいんだぜ?メニューがとんがり帽子のハンバーグってのになるくらいだけどね」
「おまたせしました。エール・コスマンの生姜焼きと、オレンジジュースのシェーブルチーズ乗せの赤身ハンバーグです。」
シェーブル……?
なんかオレンジジュースらしからぬオシャレな単語が出てきた……
「山羊のチーズだよ。この辺では希少品なんだ」
「ほほう。ヤギチーズとハンバーグとは……途中、何かのメタを感じたが気のせいだろう?」
「なんの事?嬉しそうだけど?」
「こっちの話さ。気にしないでくれ」
出てきたハンバーグに目をやれば、
てっぺんに三角錐に盛られた赤いパプリカだろうか、その下にかけられたチーズが溢れており、1番下のハンバーグを覆い隠している。
器の外壁付近に盛られたレタスとパセリが主張しすぎていない。
付け合せのライスは麦ご飯のようだ。
ごくり……
「い、いただきます」
「いただきまーす」
ドゥエスの頼んだ生姜焼きには何故かお茶漬けが付いてきた。
何故お茶漬けなんだ??
彼にとっては『定番のメニュー』なのか、なにもいわず食べ始めた。
ちらと他のテーブルをみると、ドゥエスと同じものを頼んでいるものが多いようだ。
お茶漬けと、店内に流れる音楽のせいか、足早に帰る人がいるような気がする。
「気がついたか?夜間はこの音楽が流れてて、15分以内に帰る人が多いんだ。不思議だよなぁ……」
……
うん、わかる気がする。
俺も知ってる音楽だと思うんだよな。
テンポが速い訳では無いのに、肉体が勝手に出口を向いてしまう。そんなメロディだ。
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「ご馳走様でした」
「ごちそうさまでした☆ど?気に入って貰えた?」
「あぁ。教えてくれてありがとう」
「えぇっ?!そんなに?」
ついドゥエスに感謝していた。
驚かれてしまった。
「何か問題でもあったか?」
「い、いや……いーんだけどさ、予想とは僅かにちがう反応だったから……」
そうか?
自分では気づいていなかったが、そーなんだろうか?
「それにぃ…ちょっぴし刺激的なこの俺との一夜を楽しむとか、夜の勉強代とか…いろいろあるじゃん?楽しめてるかな?って思って」
「何にでも『夜の』をつければ夜間割り増し料金にでも出来ると思ってるんじゃないだろうな?」
「ふふふ、思ってる☆」
「……目的を忘れてはいないだろうな?」
「そりゃ、もちろん☆このドゥエスおにーさんにまかせといてヨネ♪」
こいつめ。
色々と役立ちそうな情報を教えてくれるのは有難いことだが、要らない情報のほうが多くなりそうな気がする。
「会計してくるよ」
そう言って立ち上がり、ポーチを取り出した時だった。
ーカシャンッ!
ポーチの口が緩んでたのか、雑貨屋の女にもらった猫の簪がポロリと落ちた。
「おっと」
「!?………その簪をどこで手に入れた?ちょ、ちょっと見せてくれ!」
見せてくれと手を出してきたので、簪をドゥエスに手渡す。
「『射手座のゆりかご亭』を紹介してくれた雑貨屋の女店員から渡されたんだ」
「...雑貨屋……ゾディアック裏路地街9丁目にあるレオナ・ジョアンの雑貨屋『ヤヅキヤ』か……?」
そういう名前だったのか?
看板をよく読んでなかったから言われても分からないな。
「レオナのやつ……、あれほど│御守り《コイツ》を手放すなって言い聞かせてたのに…!?」
何故か途端焦りだしたドゥエス。
何かあるのだろうか?
「御守り?……それほど大事なものだったのか?」
オブラートくらいの、薄ーいオーラのようなもので、持ち主を保護する程度のものに見えるが?
しかも、あの娘は売れるようなら、手放そうとしていた。
あえてそこは黙っておくが。
「お前には、この魔力が見えるか?」
魔力?
何か付与されているものと言う割には大したことないようにみえる。
「…わずかな…薄いオーラ……を纏っているように見えるが、何かあるのか?」
そんな弱いもの、なんの役にも立たないだろうに……
「ああ。ある一定の魔力を持ったニンゲンや獣人が魔物や悪霊から身を守るための護符だ。もっとも、レオナの魔力を隠す程度の小さいもんだけど。……アイツはこないだ不審者に狙われてたみたいだから…本人は気づいていなかったみたいだけど、……安全のために渡してたんだ。」
「なに?」
狙われている?
ならコレがここにあったら……?
「……なあ、…少し換金をしに、寄りたいところが出来たんだけど、ゾディアック街の猫耳の店員のいる雑貨屋へ案内して貰えるか?」
義理を返す訳では無いが……このまま何かあったら目覚めが悪そうだ。
「エリー(仮)ちゃん、オレも丁度同じことを考えていたところだよ。案内なら任せてくれ!」
杞憂であってもらいたいものだな。
俺たちは元きたゾディアック通り目指して戻ることにした。
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