14話
女店員が言っていた『射手座のゆりかご亭』は比較的簡単に見つけられた。
その店は歓楽街の中にあった。
柱や窓枠には、周りの建物より豪奢な飾りが彫られており、店と言うより、どこかの成金が造らせた装飾は、深夜にも関わらずランタンのような照明が煌々と辺りを照らしていた。
チリン
豪華な造りの戸口を開くと、来客を報せる軽いベルの音が鳴る。
入ると横の壁には、なんの模様か分からない絵画が飾られていた。輪郭がボヤけているのか、もともとそういうデザインなのかといったところだ。
煙草とお香の匂いが立ち込めている。
キツい匂いだ。
しばらくしてから,店の奥から出てきたのは、浅黒い顔に艶やかな黒髪を高く結い上げた、背の高い美女だ。
金を基調としたアクセサリーを付け、ゆったりとした赤いシルクのローブに身を包んでいた。
「何の用だい?若いもんが来るようなところじゃないんだけど」
「雑貨屋の店員に、このお店を紹介されたんだが、主人はいるか?」
「わたしがここの主だよ。」
「『射手座のゆりかご亭』に来れば精霊に会えるときいたんだが、ここで間違いはないか?」
紹介状を渡すと女主人は中身を読んで、
「ふん……レオナの店の客人かい?」
「名前は知らないが……。ここなら精霊に詳しいひとがいるんじゃないのか?会わせてはもらえないか?」
「精霊に詳しいひとって……すねかじりに?」
妖怪か?
眉根を寄せる女主人。
「まぁ……いるには居るけど……今日は機嫌が良くないから、『そういうの』はやめといた方がいいよ?」
なにやら歯切れが悪い。
そして俺を上から下まで見てくる。
「あんた、身綺麗に見えるけど……ひとまず事情なら奥で聞こうか?ついておいで」
「はぁ…」
なにか心配されたのだろうか?
一瞬、可哀想なものを見る目をされたんだが??
女主人についていくと、それほど広くなく、やや暗めの部屋に案内された。
「『精霊に会う』には手順があるんだけど、あんたはどこまで知ってる?」
「手順もなにも。詳細はなにも知らないな」
手順?
「簡単に説明すると、私らの方で必要な部分に禊入れて教会に連れて行くのさ。」
「え?必要な部分?……??」
「そのあとは教会で精霊の『祝福』を受けるのさ。まあ、どんな『祝福』が授かれるかは精霊にしかわからないんだけどね。」
どうやら精霊は召喚しないと会えない仕組みなのか、それとも、何か試されているのか?
「…ちょっと待ってくれ。オレは『祝福』が欲しいんじゃなくて、ある精霊に会いたいんだが?」
「え?精霊の力が欲しいんじゃなくて、精霊そのものに会いたいのかい?じゃあ『精霊に会いたい』ってのも,隠語のほうじゃなくて……?」
どうやら知らず知らずのうちに何らかの隠語を使っていたらしい。
「隠語も何も。そのままの意味だったんだけどな」
「事情があって、精霊に詳しいものを探しているんだ。そいつを紹介するからって雑貨屋の店員に教えて貰ったんだが……何かの手違いが起きてたようだな」
軽く頭痛がするのをこめかみを押して誤魔化す。
「…えぇ?…そーだったのかい。……あなたレオナの勘違いだったのかい……?」
………
……そうか、あの女レオナとかいうのか。
……もっと多めに換金して貰うんだったな。
今度会ったら覚えとけと心に誓った。
「悪かったね。あの子、私らのとこの身内でね、手癖は悪いけど、悪い子じゃないんだよ。許しとくれよ」
「なぜ謝る?」
「ここの汚れた空気しか知らない子だから……そういう風に教育しちまったのは私たちだからね」
環境がそうしたのだと言いたいようだが、俺はそこまで人情に厚いわけじゃない。
人は人だろうに。
「そういう事情なら、詳しいやつのところに案内するわ。」
俺が黙っていると、納得したと思われたらしく、女主人は部屋を出た。
はあ…
小さくため息をつくと、彼女についていくことにした。
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次回はやっと出会えそうです。
11/29に




