12話
ポータルを越えて、目的の世界へ降りると、目の前には暗闇が広がっていた。
どうやらここは、どこかの建物の地下だろうか?
暗くてじめついた石造りの床に滴る水滴に、天井には明り取りなのか格子が所々張られている。
そこから入る月の光に石壁がぼんやり照らされて、人工的な建造物だと見て取れる。
必ず目的の人物の近くに出るとは限らないこのポータルでの転移だが、最近、黒氏が開発した鍵を使うと、目的の人物の近くに来ることができるらしい。
確率で。
なんで確率なんだ確定しろよとツッコミたいが、これがないとまだまだ俺の力だけでは精度が足りないらしく、間違った世界に転移してしまったり、戦場のど真ん中に転移してしまったりするミスに繋がるから、仕方なく使っている。
「ちぇー」
なんとなく悔しい。
気分を変えて、これからやることを整理がてら、外に出ることにしよう。
まず世界に来てやることといえば、…そう、換金だ。
人のいるとこなら、その土地で使えるお金を準備して、宿代、食費にあてる。
場合によっては交渉に使うこともあるから、大いに越したことはないし、なにより懐が温まる金はとっても大事。
いくつかの宝石や、何処にでもありそうな御守りの類なら手持ちにあったから、今回はそれを持って、雑貨屋か魔法道具屋をさがすことにしようかな。
荷物のほとんどは別の空間と隣接している場所に隠しているが、何も持っていないところからモノが出てきては不審がられるので、直前に目に見えるポーチに入れておくことが多い。
外に出たらそうしよう
ぴちょん
なんてぼんやり考えながら石造りの廊下を進んでいるが、天井の格子の隙間からの月光だけではどうも視界が悪い。
石の床で滑って転んだら痛いし、ところどころ水浸しだから濡れるし。
掌に魔力の光をつくり辺りを照らす。
ものは見えなくないが、たまにイラってくるレベルの明るさだ。
ペットボトルに水と油を入れてライトを付けるとすごく明るいランタンになると聞いたことがあるが、残念ながら、ペットボトル代わりの入れ物も油もないので、そこらへんにあるもので代用する。
ぴちゃん。
頭に滴が落ちてきた。冷たい
そう、水だ。
「拡散」
幸い、壁のあちこちから水が滴っているので、掌の光球を左右に拡散、自分の両側の壁にある水の滴が持続的に光るように少し調整をした。
といってもあまり強い光ではないから、文字を読んだりするのは難しそうだ。
便利なのは、自分の周りにだけ展開しているので、手で灯りを持たなくていいし、前に進めば一緒に光もついて来てくれるってところだ。
媒体が水なので、その場に留まればやがて地面に向かい、足元が明るくなるし、少し動けば次の水に光を移動できる。
なにより…鉱石とか宝石があればキラキラ光るから見つけやすい。
魔法とも言えないくらいの小手先の術だけど、炭鉱を進むときに重宝する。
おっといけない、トレジャーハントしに来たんじゃなかったっけ。
精霊王の情報を得なければならないんだった。
ぴちょん
ヒタヒタ…
しばらく歩くと、緩やかな左カーブを描く下り坂に差し掛かった。先がよく見えないが
ぴちょん、パシャ、パシャ……
何かの足音が聞こえてきた。
曲がり角の向こうか?
じめついたとこにいる生き物なんてたかが知れている。
キィ!
ギギィ!
案の定、ネズミの巣窟だったらしい。
少し大きめのもいるが、こちらを見ると少し警戒しているのか襲いかかってきた。
「ふん!」
ぱしゅん!
水を刃にして切り裂く術を放ってやった。
あまり威力が強いわけじゃないが、ネズミたちはあるものは肉塊に、残ったものは勝手に散り散りになった。
ネズミの駆除をしに来たんじゃないんだけどな…
回廊を突き当りまで歩くと、地上に出る階段を見つけた。
外に出ると、街のはずれらしい。
月が出ていた。
ありがとうございます
次回11/15の予定です




