100話※
一応※つけてますが、手羽先たべたい ぐらいの感じです。
ドゥエスが、次の精霊王になるだって?
「教えて貰ったんだ」
疑問を口にするより、カーヤが言葉を選ぶように紡いでいく。
「兄さんが、精霊王を倒したりしたら、次の精霊王になるんでしょ……僕は、ドゥエス兄さんが兄さんじゃなくなっちゃうのは、どこか、遠くに行っちゃうのは、嫌だよ」
「カーヤ……そんなこと、誰が云ってたんだ」
「それは――……」
ドゥエスは頭痛を抑えるかのように、こめかみを抑えながら、カーヤの目線を目で追う。
【アタシよ】
はっきりとそういったのは水の精霊。
「水の精霊さん?ど、どういうこと……です。精霊王が死んだら、この世界のマナが枯渇してしまう………って、風の精霊さんが云っていたわ。水の精霊である貴女だって、ソレを知っているはずでしょう?」
治療は終わったのか、カーヤの上体を支えてやるレニアだが、まだ胃のあたりが落ち着かないのか、時々お腹に手を当てている。
【それは次の精霊王がいない場合……でしょう。その場合、精霊王の膨大なマナはそのよ拠り所を失って霧散、やがて世界からマナが循環されなくなる……アタシたち精霊も如何にかなってしまうわねぇ】
どうにかって、問題視して言う割にはそんなに鬼気迫ったようにしていないようなその態度がどこか他人事のように聞こえる。
それどころか、水の精霊はドゥエスから目を離そうとしていない。
【アンタ、精霊王の祝福を受けてんでしょ。ゆっくりだけど、むかし精霊王と戦った時にうけた精霊王の血の効果、人間程度の魔法がその肉体に効かないのも、歳も取らないのも………最後のはあんたの精神が幼稚なせいかもしれないけど】
「え、ドゥエスさんて、そんなに変態なひとだったんですか?!」
ぶふっ!
思わず吹き出してしまった。
「ちょ、ちょっと、レニアちゃん???」
あわてて抗議をするドゥエスに、レニアは申し訳なさそうに「だって、魔法無効に不老不死ってどんなチートしてる変態なのかと……」とブツブツ呟いている。
分からなくはないが、
魔法無効に加えて、不老……?
ちょっとばかり頑丈なのかとも思っていたが。
カーヤが危惧していたものはこのことだったのか。
水の精霊は、最後に忘れず添えた『嫌味?』はとても小さく呟いていたため、ドゥエスに聞こえなかっただろう。
……はあ……
ため息ついたドゥエスは小さく悪態を呟いた。
「……余計なことを……」
【アタシとしては、精霊と親和性の高い、カーヤ君にもその性質はあるのかもって期待してたんだけど、残念ながらその性質はないみたいだし】
「ハァ?!ふざけんなよ!オレが精霊のアンタに好き勝手させるわけないじゃないか!思い上がるんじゃねぇぞ」
【ハイハイ、あんたのあの魔法はさすがに精霊のアタシでも危ないからね。アンタと事を構えるつもりはないわよ~♪】
ドゥエスと水の精霊はしばらくにらみを利かせているが、ふと違和感に気付いた。
ドゥエスから少し離れたところでこちらの様子をうかがっていた『あるもの』がいなくなっていた。
「なあ、ドゥエス、精霊王はどこに行ったんだ?」
「え?あれ。どこいった――……?」
きゃああああああああああああ!!
ドゥエスが周りを見回したタイミングだった。
突如、甲高い悲鳴が聞こえた。
***
「いまのは、風の精霊か」
すこし離れたところに、俺がさっき作った鳥かごに似た【闇茨籠】で拘束したままにしていた風の精霊がいた。
ガスかなにかだろうか、半透明の身体でも通り抜けられないよう細工をしていたものだった。風の精霊が簡単に抜け出せないのをちゃんと確認していたはずだ。
そして、その『カゴ』の近くに精霊王クレイブの姿があった。
――いぃぎぃえい――
【―っひぃ!いやぁあああ!こ、こないで!あっち行ってよぉ!!!】
「なにをそんなに怯えて――?」
「エリー(仮)ちゃん、近づいちゃダメ!」
ドゥエスが慌てて俺の前まで出て、警鐘を鳴らす。
「コイツ、何かに怒っていやがる……」
ぐじゅ……
っっ!
―ぎゃああああ!!
尋常じゃない悲鳴をあげている風の精霊の声も虚しく、身動きの取れない風の精霊のカゴの外に出ていた腕に細くツギハギされた腕を近づけると、少年はひと思いに、齧り付いた。
「なっ?!」
「ひぃっ!」
物理的な肉体というより、半透明なガスにも似た体に見えた風の精霊の身体だったが、とくに何の苦も無く、クレイブは手羽先の骨から繊維を引きちぎるときのような手際の良さで、その肉の部分を、引きはがしていく。
……ミリミリ
【なんでよぉ!人間の身体が、欲しかっただけじゃない!みんな、みんなやってることじゃないの!!あああああ!】
―んぅぅうぐん―
「精霊王――オマエ、風の精霊が攻撃したことが、気に食わなかったのか」
珍しく戸惑ったようなドゥエスの声が震えているのが分かる。
「攻撃?」
「風の精霊は誰かを傷つけることを制約してたのに、約束を守らなかったことが許せないんだって……」
制約なんてもののあったのか。
いや、ドゥエスの「そんなんわかるかよ」という突っ込みから、二人、二精霊?だけの約束だったんだろう。
「水の精霊は、止めに入らないのか?『妹』―だったんだろ?」
水の精霊はカーヤの視界にその光景を見せまいと、カーヤの視界を揺らめく水で覆い隠していた。
【……人間だった時は……―ね。でもアタシが止めに入っても、一緒にムシャムシャされるだけだわよ】
冷徹な態度で言っているように聞こえたが、恐怖が色濃く出ている。
やがて――
ぶちっ
んぐぅっー!
クレイブは、風の精霊の綺麗な首筋に喰らいついた。
音もなく、彼女の身体は内側から、何か靄のようなものが噴き出した。
首に喰らいついたクレイブは口元からなにかの汁を滴らせながら、静かに佇んでいる。
どこか表情は虚ろで、闘う意志は感じられないな。
―この、こ……やく、そく、わすれちゃった―
誰の声だ?
「いまの声ってクレイブか?」
「あぁ、エリー(仮)ちゃんにも聞こえるようになった?精霊王がほかの精霊を喰ったことで、言葉が理解できてるのかも……」
―さがして、くれるって、いってたのに――
「なにをだ?」
―もう、きえるほうほう―わから、ない―
「なんだ、消えたかったのか。丁度よかったじゃないか。オレが教えてやるよ。なあに、昔のこともチャラにしておいてやるぜ。それとエリー(仮)ちゃん、提案があるんだけど……そいつ(クレイブ)の止めは、オレにやらせてくれないか」
ドゥエスが提案してきた。
「ドゥエス、あんたはこいつと因縁があるんだったな。――俺は止めないさ」
「兄さん!そんなことしたら――?!」
「カーヤ、お前の話じゃ、代替えするって話だったな。今まで知ってる方法ならな。でもオレのこの魔法なら……精霊王なんて中途半端な存在ごと消し去ってやれる、いや、消し去ってやるよ!」
云って詠唱を唱え始めるドゥエス。
【精霊戮炎】
閲覧ありがとうございます。
次からは後日談とかその辺の小話を載せようかと思っています。
投稿は 7/16 の予定です。




