生首、拾いました!!!
オレンジ色の太陽が海の地平線に差し掛かる少し前。
俺は、友人男女数名で海水浴に来ていたのだが女子が着替えに行ったきり中々、帰って来ないで暇を持て余していた。
なので、「少し浜辺を散策する」と声を掛けてから男集団からひとり離れて散歩に出た。
そして砂浜をしばらく歩いて閑散とした岩場まで来てしまったことに気付き、そろそろ引き返そうかとした時。
「誰ぞー! 誰ぞー! どこぞにおらぬかー?」
突然、聞こえた声の方を見ると、砂浜に打ち上げられた太めの流木が目に入った。
その流木の陰になっているところから声が聞こえてくるので、俺は興味本位で近くまで寄って覗いて見る。
それを認識した時、俺は恐怖で腰を抜かしその場にへたり込んだ。
なぜなら、そこには人の頭だけがあったからだ。
髪の毛は落ち武者のように長い髪をだらりとたらし、顔色悪くげっそりと痩せた中年の男の生首。
すると、尻餅をついた俺に口から血をたらした生首男はこう言った。
「あっ、大丈夫ですか?」
「いやっ! あんたの方が大丈夫じゃないよねっ!」
「そうじゃった。
すまぬが救急車を呼んで下され」
「いやいやっ! 救急車呼んでどうにかできるレベルじゃないからっ!
誰かを呼ぶとしたらゲゲゲの〇太郎だからっ! 妖怪ポストを探すとこからだからっ!」
「えっ? 鬼太郎は漫画のフィクションで本当は実在せぬぞ」
「言われなくてもそんなの分かってるわっ!
というか、一番ファンタジーなあんたがそれを言うのかっ!」
「わしがファンタジー?
ならば、東京デスティニーランドでバイトできるかな?」
「絶対に無理ですっ!
バイトするんだったら富士急ハイドランドの絶対怖いお化け屋敷にして下さいっ!」
「わし、怖いの、苦手」
「なんなんだよ?! この生首っ!!!」
ちっとも噛み合わない話に俺はだんだん腹が立ってきた。
「だいたい、胴体が無いのにどうやって喋ってるんだよ?」
「えっ?! 知りたい?
ふふふ。(微笑)
どうしようかなぁ。そこは、絶対に言えない企業秘密なんじゃよなぁ~」
「企業が絡んでるとは思わなかったっ!!
でも、何だか余計に知りたくなってきた。
お願いしますから教えてくれませんか?」
「うん。ええぞ。
じゃあ、ちょっとそこに四つん這いになって、首を曲げずに真っ直ぐに前を向いてくれる?」
「えええっ?! 四つん這い?
何でそんなことを……。
うーん、でもそれに何か秘密があるのかも。
こうなったらどうやって喋ってるのかどうしても知りたくなってきた。
よしっ! ここはひとまずやってみよう」
俺は、落武者生首にに言われた通り頭を真っ直ぐにして四つん這いになった。
そして、横にいるであろう生首に声を掛けた。
「はい。四つん這いになりましたよ。
で、ここからどうするんですか?」
「チェストーーーーー!!!!」
突然、奇声が聞こえたと思ったら俺の首に衝撃が走り、頭だけが砂浜にゴロリと落ちた。
頭部が落下してる途中、傾いた俺の頭部の視界には落ち武者生首が髪の毛を触手のように使い斧を俺の首に打ち下ろし終えた場面が見えた。
意識を失う寸前に、俺には聞こえた。
「おぬしの身体は、わしがもらう」
数時間後
俺は、砂浜の上で気が付いた。
体がどうも思うように動かない。
ひとりではどうしようもなく、助けを呼ぶため声をあげた。
「すみませーん! 誰かー! いませんかー?!」
すると、一人の若い女性が声に気付いてこちらに来てくれた。
だが、おかしなことに俺の姿を見ると、驚いた顔をしてその場にへたり込んでしまった。
俺は、その人に言った。
「だっ、大丈夫ですか?
あと、すみませんが、救急車を呼んでもらえませんか?」
完