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第1話『気になるあの子』

『PPPP……』

「う、う〜ん……」

 突然鳴り出した目覚まし時計を手探りで止めて、フラつく身体を無理矢理起こす。時刻は午前六時半過ぎだけど何とかなるよね、まだ寝坊したワケじゃないし大丈夫だよね‼︎

「いただきま〜す……」

 寝ぼけたまま食卓につき、ピザトーストを一口頬張る。サクサクした食感と舌を火傷しそうな感覚が私の眠気を吹き飛ばしていく。

『あかりー? あんたもう高校二年生になるんだから、そろそろ寝坊すんじゃないわよー』

「うんー、分かってるー」

 髪型、制服、顔、笑顔。

「行って来まーす‼︎」

 私の名前は月宮(つきみや)あかり。八王子高校に通う高校二年生‼︎ 今日から一学期が始まって新しいクラスと新しい毎日を過ごすんだ〜。

「おっはよー、風玲亜(ふれあ)ちゃん‼︎」

「おはようございます、あかりさん」

 この子は日向(ひなた)風玲亜ちゃん。二年生になってから知り合った私の友達で、かなり勉強が出来る子の優等生。私が学年でいつも一桁順位をとれない一方、風玲亜ちゃんは常にトップ三に入ってるからクラスではかなり目立ってる感じがするね。

 実際に本人はどう思ってるか聞いた事がないから、そこんところは闇の中。だけどね……

「今年から一緒のクラスかぁ〜、私は月宮あかり‼︎ これからよろしくね‼︎」

「私は、日向風玲亜です。今年からよろしくお願いします」

 改めて自己紹介を済ませて、二年生用の教科書や授業の説明を受けたら今日の学校はおしまい。午前授業だからお弁当タイムもないし、お昼休みだってない。

 だけど早速私は風玲亜ちゃんと一緒に帰ろうと、玄関で靴を履き替えている風玲亜ちゃんのもとへ駆け寄った。

「ねぇねぇ風玲亜ちゃん‼︎ 良かったら私と一緒に帰らない⁉︎」

「えっと…… 良いですけど、私はコッチ方面ですけど大丈夫ですか?」

 そう言って風玲亜ちゃんが指し示した方向は、私の家がある方向だった。

「あっ、ソッチに家があるの⁉︎ 私もソッチ方面にあるんだよ‼︎ じゃあ毎日一緒に登下校が出来そうだね‼︎」

「それじゃあ、今日から一緒に登下校ですね」

 風玲亜ちゃんは脱いだ上靴を下駄箱にしまって、いつでも玄関から出られる私を見ながら微笑んだ。


「ねぇ風玲亜ちゃん。風玲亜ちゃんは再来月にある修学旅行でどんな所に行ってみたい?」

 まだ知り合ったばかりの私達だけど、ある意味出会って二秒で前から友達だと言えるくらいにまで風玲亜ちゃんとおしゃべりし続けていると、今度は修学旅行の話題になった。

「修学旅行ですか…… 私だったら、とても楽しい所に行ってみたいですね。チュウチュウランドみたいな賑やかな場所も良いですけど、北海道の自然を観光するのも楽しそうです」

「北海道かぁ〜、確かにあそこは良い所だよね〜‼︎ グルメもあって自然もある‼︎ 一度くらいは行ってみたいよね〜」

 ここは東京だから、もし修学旅行で行くとしたら沖縄か北海道のどっちかになるよね。だから可能性はゼロじゃないよね‼︎

「あっ、もう家に着いちゃった…… ここが私の家だからここまでだね。じゃあね風玲亜ちゃん、また明日‼︎」

「はい、また明日」


「ただいまー‼︎」

 家に帰ってリビングに行くと、次男のお兄ちゃんが静かにゲームして遊んでいた。

「お兄ちゃん、今日の大学は早いんだね〜。もしかして午前だけとか?」

「うんまぁそんなトコだ。あかりは高校二年生になった実感とかあんのか?」

「いや〜ちっとも無いね〜。後輩が出来たくらいしか感じないし〜」

 お兄ちゃんの隣に座って遊んでるゲームをまじまじと見る。とは言ってもお兄ちゃんが今遊んでるのは、普段から適度にしてるFPSゲームだから特に話しかける事が無い。だからお兄ちゃんが一番強いプレイヤーになっても、特に驚いたりはしなかった。

「ねぇねぇ、お兄ちゃんが通ってる大学って…… もしかしてここから遠かったりするの?」

「いやそんな遠くはないけど…… 急にどうしたよ?」

「あのさ、お兄ちゃんは何をしたくて大学に入ったのかなぁ〜って思ってさ。お兄ちゃんは何か考えがあって大学に入ったの?」

「いやいや、そんな真面目な目的で入ったんじゃないって。とりあえずだよとりあえず、何となくだ」

「そっか…………」

 あんまり良い話が聞けなかったから、お兄ちゃんと別れて部屋に戻った。着替えもせずにベットに倒れ込んで自分の将来を考えてみたりする。

“高校を卒業したら、私は何をしたら良いんだろう……”

 高校一年生の時は全く危機感を持たずに通ってたから、二年生に進級してから進路について、テキトーだけど考え始めた。私のお母さんは歯科医で、お父さんはよく分かんない会社の社員って言ってた。

 じゃあ私は高校を卒業したら、何になるんだろう? どんな仕事がしたいのか? そんな事はミジンコ程も考えてなかった。

「将来なんて、分かんないよ…………」

 これが私、月宮あかりの将来に対する危機感の無さだ。こんな人間が大人になったらどうなるのか、分かってる様で分かってない。そんなだらしのない少女が将来何になるのかを考えながら、高校生活をそれとなく過ごす人生を描く。


 きっとそんな生活、風玲亜ちゃんならきっと嫌いになるはずなんだ。もっと真面目に考えないといけない。

「…………よしっ、負けるな月宮あかり‼︎」

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