"異常者"ヤミヒコ
リマジハの街 ギルド内
「……話を再開するよ。この世界には恐ろしい力を持った魔王が存在し、また魔王の配下の魔物達が私たち人間に危害を加えたり、迷惑を働いたりする」
「冒険者の主な目的は魔物を討伐し、人々の平和と安全を守ること。最終的には魔王を倒さねばならぬが、無茶をして命を落とす者は後をたたん」
「だから冒険者はパーティを組み、地道に経験を積まなくてはならない。その為の組織がここギルドさ」
「ギルバート」
「なんだい」
「長い」
「……お前達ひよっこパーティは最低のGランクからスタート。ランクを上げれば冒険の範囲も広げられるし、名声と栄誉が与えられる」
「まあ最初は簡単な依頼しか受けられないからそこで冒険、戦闘のコツを学ぶ事だね」
「うむ。これでようやく野良冒険者から正規のパーティとして登録できた。改めてよろしくヤミヒコ」
「うむ」
「ギル婆。ヤミヒコのクラス診断を頼む」
「そうだね。ヤミヒコ。ちょっとその水晶に手を触れてごらん」
「クラスとは」
「冒険者の就く職業のようなものだ。戦士や魔法使いなど自分に合ったものをギルドが見繕ってくれる」
「ふーん」
俺は水晶を触る。ぺたり。
「……」
「……む……読めん……?ヤミヒコのクラス適正がわからぬ……」
「なんだって……!?」
「うむ……甘さ控えめで……まろやかで……それでいてしつこく無く……そういう感じじゃな……」
「なんかギル婆……ヤミヒコに影響されてない……?」
「つまりどういう事なんですか?」
「……何者でも無いが、何者でもある……。分かりやすく表現するなら、ヤミヒコは全てのクラスに対し適正がある。そういう事になるね……」
「マジか」
「!?まさか!そんな事あるわけが無い!!クラス適正は一人に一つのはずだ!」
「うん……。普通ならあり得ない事なんだが、その子は漂流者だろう。たまにいるんだよ、そういう特殊な才能を持った漂流者がね」
「信じられないな……」
「ヤミヒコさん凄い……!」
「嘘でしょ……こんなヤツが……」
「マジだ」
「ヤミヒコは戦士でも魔法使いでも100パーセントの力を発揮できる。ふふ……。だから言ったろう良い拾い物をしたって。まあまずは剣でも持って経験を積むのが良いんじゃないか」
「そうだな……武器屋で装備を整えたいところだが、あいにく金が……」
「俺はこの拳一本で十分だ」
「そうかい。ただし油断は禁物だよ。あんたはまだ見習い冒険者なんだからね」
「押忍」
「早速依頼でも受けていくかい?」
「次話で」
「そうかい」
「ギル婆……なんか慣れてきたわね……」
クラス診断を終えたヤミヒコに襲いかかる恐るべき依頼……!
その内容とは……!?