2.聖女と追放後
side 〜勇者パーティ〜
「え〜‼︎シリウスを追い出した〜⁉︎」
そんな叫びが宿屋に響く。
「えぇ。さっき酒場でね。」
「そんな…。シリウス〜…。」
そんな会話をするのは、勇者パーティのカレンともう一人…聖女のオーフェリアだ。
オーフェリアは聖女の位に着いている聖職者である。金髪の長い髪にエメラルドグリーンの瞳、そして少し下に視線を移すと視界に入ってくる、服の上からでも十分な存在感を放つ大きな胸が特徴的だ。
彼女が使う回復・支援魔法は、彼女の右にでる者はいないと言われるほどの実力である。
彼女はシリウスが追放された時、この街の教会に顔を出していて、シリウスが追放されたことを今聞いたばかりなのだ。
「いいじゃない。あんな奴。それよりも、明日からアイツの代わりを探して、すぐに旅に出るから、今日は早く寝ちゃいましょ。」
「シリウス〜…。どこにいるの〜…。」
そんな投げやりな言い方をするカレンに対して、全くと言えるほど反応がないオーフェリアは、うわごとのようにぶつぶつと、呟いていた。
そんな声を上げるオーフェリアを見ていたカレンが、
「さっきから、シリウス…シリウス…って煩いわね。どんだけアイツのこと好きなのよ。」
と言った途端に、今まで反応を示さなかったオーフェリアの肩がピクリとし、次には過剰なまでに反応する。
「そうだよ⁉︎私はシリウスがだ〜い好き‼︎もうこれでもかっていうぐらい!なのにどうしてシリウスが居なくなるのよ〜!シリウス帰ってきて〜!」
そんな愛の叫びが夜の街中に響き渡った。
side〜シリウス〜
「…ん?何処からか叫び声がした気がしたが…気の所為か?」
暗くなってしまった街中を歩いていた足を止める。俺はアラン達と別れてからすぐに冒険者ギルドに行っていた。気付いたら時間もすっかり遅くなっていた。
冒険者ギルドでは、冒険者登録してきたのだ。俺は暗殺者ギルドのライセンスなら持っているが冒険者ギルドのライセンスは持っていなかったからだ。
冒険者とは冒険者ギルドが仲介する依頼を達成し報酬を受け取る、謂わゆる何でも屋という奴だ。冒険者には、ABCDEの5つのランク、そしてSランクという特別ランクがある。
SランクはAランクの中でも特にズバ抜けて能力の高い人物だけがなることができる特別なランクである。Sランク冒険者は世界でも数人しかいない。
俺は登録したばかりだからEランクからスタートだ。
(今日はもう遅いから冒険者としての活動は明日からにしよう。)
宿にとまるため、歩き出そうとした時…、
「あっ!オーフェリアと挨拶言わずに別れちまったな。…まぁ、大丈夫だろ。」
オーフェリアのことを思い出したが、そこまで深く考えずに歩き出す。俺を見つめる視線を感じながら。