わがままな…
「ねぇ」
「ん?」
「私、ブライダルチェックを受けようと思うんだけど。」
「急にどうしたの?」
「急でもなくてね、前から考えてたの。体調崩しやすいし、周期が乱れがちな体質だから色々心配で。婚約したけど、やっぱり結婚前に確認しておいた方がいいかなって思ったの。」
「君が受けたいなら反対しないけど、それで僕らの婚約が揺らいだりしないよね?」
「たぶん。」
「たぶんなの?」
「子供持ちたいって前からあなたが言ってるの分かってるから、それを叶えてあげられないって後から知った場合に、結婚した事をあなたに後悔されたら私が耐えられないのよ。だったら先に検査しておいた方が良いなって思って。あなたの為ではなく、単に私の為なの。」
「君は僕と結婚するの嫌?」
「嫌な訳ない。」
「じゃあ、結婚してから一緒に受けよう。」
「でも、」
「僕がね、子供欲しいと思うのは、君と家族である事が大前提なんだ。君が隣にいてくれた上で、贅沢を言うなら子供もいて欲しいってだけで、子供を持つために君と結婚したい訳じゃ無いんだ。検査の結果がどうであれ、あの日の僕の決心は揺るがないよ。でも、結果次第で君が身を引いてしまう可能性が少しでもあるなら、検査は後にして、先に君の隣を確保したい。これは単に僕の為なんだけど、ダメかな?」
―――
「僕はわがままな奴だからね。相手が誰であっても君の隣は譲れないんだ。」
「だからって孫にまで、対抗しなくても…ねぇ。」
「目に入れても痛くないほど可愛い孫だけど、こればっかりは明け渡せなくてね。」
「それを許してしまう私も私ね。あなたにはいつまで経っても敵わないわ。」
「ダメかい?」
「じゃあ、今年も一緒に健康診断行きましょう。嫌がっても、わがまましてもダメですよ。元気でいてもらわないと私が困るの。」
「…僕の方こそ君に敵わないのかもしれないね。今までも、これからも。」