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69 真実を語る時

 美しき『奇跡の里』についた。

「私、ここに来ると思っていたの」

「ヘルメール女王様がなにかあるって、ダナちゃんも知っていたの?」

「いいえ。でも、そう、母様が……」

 二人は手をつないで歩く。

「ならず者に襲われた町で一緒に歩いたわね。私、とても体が弱くてふらふらしてたけど、クマちゃんがいてくれて、本当にうれしかったの。私を守る騎士様みたいで」

「……」

 その後、襲われて血が流れたのだ。翔一は少し口が重くなる。

 ダナは翔一のそんな気分も知らずか、里の施設を指さして説明しながら歩いた。

「もう壊れてるけど、あれが魔法の湧き水で、あれがキノコ農場。あれが魔法工房……」

 一見単なる廃墟のようだが、ダナの説明を聞いていると、往時の楽しい生活が見えてくるようで翔一は気が晴れた。

 翔一も好奇心が湧いていろいろと質問する。

 二人は楽しく散策しながら、ひと時を楽しむ。

「ダナちゃん、銀モフとか僕たちの狼、預かってほしいクマ。僕の世界では狼達は友達もいないし……」

 コンラッドに預けてきた狼たちを思う。

「ええ、久しぶりに銀モフに乗りたいわ」

「たぶんそれは無理と思いますクマ」

 ダナは百八十センチはある。ハイエルフの女は細いが背が高いのだ。

 小さくてきれいな家の前で立ち止まる。

「ここ、私が大人になってから住んだ家なのよ。魔王軍が来る前に引っ越したけど……」

「昔に魔王軍が来たクマだよね。みんな大丈夫だったの?」

「母もいなくて、ハイエルフ達は凄くバラバラだったの。結局、二つに分かれたわ、小さな異界を作って引きこもる派閥と人間に保護される派閥。私はここが破壊されるのは辛かったけど、あの時は弱い子供だったから……今のままでは勝てない、いつか勝ってやるって思って、皆と袂を分かって冒険者になったのよ」

「ダナちゃんも辛い思いをしたクマ……」

「ううん、いいの。それより、私の家でちょっと休みましょう」

 二人は小さな家に入る。

 綺麗に片づけられていた。

 応接間に眼鏡をかけた小さな少女エルフが座っている。魔法使いのコレットだった。ガルディアで翔一たちを調べた女エルフ。

 翔一にとってはあまりいい思い出ではない。

 思わず目をそらす。

「コレットさん、ありがとう。あなたには少し頼みがあるの」

 少女エルフはうなずく。

「翔一さん。いつぞやは無礼をして申し訳ありません」

 コレットは立つと、謝罪する。

「もう、終わったことクマ……」

「クマちゃん、お願いがあるの。あなたがこの世界に来て見聞きしたことを教えてほしいの。このコレットには魔術で速記を行ってもらうわ。そして、真実を世界に流布してもらうの」

「……」

 翔一は心に苦痛を感じた。

 辛い思い出が多いのだ。

「わかってるわ、話すのが辛いのね。でも、このままあなたが何もいわなければ、誤解や嘘が人を悲劇に陥らせるかもしれない。最後の人助けだと思って、お願いしたいの」

 葛藤はあったが、真実を語らず去るのは卑怯にも感じだのだ。

「……わかりました。僕が見聞きしたことを最初からお話しますクマ。間違っていたり、誤解していることがあるなら申し訳ないクマですけど、僕とフロールさんと病気の小さなダナちゃんがこの世界に押しつぶされそうになりながら必死にやったことです」

「ええ、気にしないで。思ったこと、覚えていることを全て話してくれたらいいの、時間も紙も量に問題はないわ」

 コレットの持つ書物は魔力がある。無限にページが現れるノートのような物らしい。

「僕が最初に覚えているのは、泥だらけでこの世界に呼ばれたこと……」

 翔一はぽつぽつと語り始める。

 何もない恐怖の中で戦った事。

 三人で寄り添い、困窮した人たちを助け、小さな村を作り、偶然聖剣を手に入れ、ダナの治療を求めて旅をした。

 レイド王国で治療拒否に遭い、処刑寸前の医師ハスタを助けたことを話す。

「レイドは本当に酷い国だったわ……あなたはこの報告は聞いていたのでしょう」

「はい、しかし、本当の事と思えなくて……」

「庶民とは医者に頼るのすら命がけなのよ。憶えておきなさい」

「はい、王妃」

 その後、弁明むなしくガルディアに捕らえられたこと、ガルディアがダナの放置死と翔一の処刑を決定した辺りでコレットは涙を流して謝る。

「ごめんなさい、そんなことがあったなんて知らなかったの……私、酷い女だわ」

「真実を知ってほしかったの。別に責めたりはしないわ、あなたは職責を果たしただけ」

「王妃様、申し訳ありません……」

 逃げるためにガルディア王の書斎から金を盗み、魔術書を奪った。

「冤罪をかけたこととどちらが上なのかしら。私も殺されかけたからこれぐらいでは足りないわ。それに、この事件のおかげでクマちゃんとタマゴさんがこの世界にやってきたことを思い出したの」

「盗まれたご本人、クリス王が許すと申されてますから……」

「おかげで、夫がよからぬ本を読んでいたことがはっきりしましたわ」

 その後、人狼ボビーを倒し、ガルディアを脱出。

「人狼ボビーは殺人鬼です。翔一様に退治されていたのですね。よかったわ」

 コレットのつぶやきに、胸が痛くなった。正義漢のボビーがそんなふうに思われることに。

 人鼠を倒し、吸血鬼姉妹を倒して『青剣城』を解放し、人虎を倒し、悪魔鳥を倒し……。

「ふう、本当に凄いわ。あなたほどの大英雄はそうそういませんわ」

 コレットがつぶやく。

 大祈祷師ゴル・サナスに面会したこと。

 その後、治療法を求めて高原越え、アーロン軍に加勢した。

 キルボールを抜けて、イスカニアであったこと。

 オーギュスト退治。

「一般のうわさでは、人狼男爵オーギュストはイスカニアの英雄が倒したことになってますわ」

「『英雄』は雑魚を倒したのよ。私とタマゴさんとあのドン臭い警備兵たちで。人狼はクマちゃんとベアトリスが倒したの」

「ベアトリスさんが敵の剣筋を教えてくれたから勝ったクマだよ」

 ダナはかなり覚えていたようだ。コレットが筆記しながらうなずき苦笑する。

 ハイエルフ領でのこと。皇帝との友情。

「イスカニア皇帝のあのお爺さんとお友達なのね。あの人は、帝国の政治の妥協で生まれた存在。あえて能力のない人を……でも、クマちゃんと友達なら一目置かないとダメね」

「各国の分析では、イスカニア皇帝は有能になったという評価です。翔一様とお会いになってからのようです」

 グロウギル公爵の人身売買。宰相テオドールの陰謀。 

 そして、魔王との決戦。

「あの国のハイエルフたちが弱くなっていたのは感じていました、しかし、あのグロウギルがそこまでとは……私にとっては穏やかな時間だったのよ、あの時は。その影でそんなことが……」

 ダナの顔が青くなる。ハイエルフ達の闇に子供の時は気が付かなかったのだ。

「片目の魔王、宰相テオドール……私の仇は翔一様が……父様と母様の仇を……」

 震えるコレット。

 メガネを外して涙を拭く。

 ダナが優しくコレットの肩を抱いた。

 首都脱出後、『奇跡の里』に向かい、ヘルメール女王の霊と対面。

「あれは覚えているわ。本当に美しい思い出」

「僕も一生忘れないクマ」

 その後、里からテレポートし、王宮に潜入、脱出した。

「クリス王が可愛いクマちゃんがいるって大喜びだったわね」

「……」

「でも、すぐ消えてしまって、娘が大泣きしたのよ」

「はい、姫様をあやすのは大変でした」

 ガルディア首都から出て、人ユニコーンのケーネと対決する。

 ダナは首を振る。

「あの女には聖なる力があったから、騙されたわ。胡散臭いとは思ったけど」

「王妃、私も気が付きませんでした。ランスの死骸の異様さにはびっくりしましたが、このような経緯だったとは……」

 コレットもつぶやく。

 帰ってから、村を出奔し、天罰騎士につかまって拷問される。

 翔一はその時の記憶があいまいだった。ただ、愛しいリリーが天罰騎士団の生贄にされ、冷たい骸になったことを静かに語る。

「ポーラ、覚えてますわ。なんて奴なの! 私、あんな女に協力してしまった……」

 速記するコレットの指が震えた。

「リリー……かわいそうな子」

 ダナの哀しいつぶやき。彼女は接点があったのに、不思議と、一言も彼女と話すことがなかった。

 コンラッドを頼ってエラリアに逃げ、強敵、吸血鬼王を倒したこと。神界に行って英雄たちと止めを刺したことを語る。

「うふふ。ガルディア王、ちょっと褒めてあげないといけないかしら。英雄たちに感謝されてるわ」

「あの方はすぐに調子に乗るからやめた方がいいですよ」

 コレットも少し微笑む。

 エパットの宿精を殺したこと、人獣の呪いを解き、骨の聖剣を回収して現世に帰ったこと。

「じゃあ、これから生まれる人獣は悪ではないのですか?!」

「そうなるわね、理屈では」

 神界から帰った直後、公認勇者から背中を刺されたこと。

 涼子が命を捨てて翔一を救ったことを語るとき、翔一の瞳から涙が落ちる。

「知らなかったわ。ありがとう教えてくれて」

 ダナは翔一の背中を撫でる。

 ケーネの宿精の『混沌』のマナを放置できないので、今までの魔力を結集して『ジルバール』を作ったこと。偽勇者ヴィックを倒し、ガラエルを解放したことを語る。エトワールとビアンカの活躍。

「ヴィック・カース。人々の期待を蔑ろにした真の屑ですわ。歴史に刻むべきことです」

 コレットがメガネの位置を治しながらしっかり書き込む。

「カルネスの解放、魔物軍の解散辺りは私もそれなりに知っているわ。でも一般情報ではもっとイスカニアが活躍したことになってるわね。あの人たちはちゃっかりしてる」

 ダナが苦笑する。

「おかげでエルネスト将軍は大英雄として祭り上げられていますわ。元帥になるそうですよ。常識的なあの方がイスカニアの重鎮になるなら、世界にも良いことです」

 コレットの言葉にダナもうなずく。翔一もエルネストが出世するならうれしいと思った。

 翔一はその後、ダナを過去に返したことを語る。

「『時渡りの秘儀』……そんな、神にしかできないようなことが」

 コレットは唖然としている。

「この件に関しては後で閲覧できないようにするわ。魔法で鍵をかける。でも、とりあえずは記録しておいて。あなたもここの部分は他言しないで」

「はい、わかりました」

 翔一は語り続ける。

 エラリアへの帰還。

 人獣都市と化したレグルス。

 怪物たちとの死闘。

 翔一の口は徐々に重くなる。

 そして、フロールの死。

 フロールの死を語るとき、翔一は耐えきれず号泣してしまった。

 彼の心にはまだぽっかりと大きな穴が開いているのだ。

 ダナは翔一を膝に抱いた。

「タマゴさんは厳しい人だったけど、正義の味方だったわ。私も大好きよ」

「……ぼくが、もっと……気を付けて」

「いいの、あなたは全力で頑張ったわ。あなたの責任じゃないの」 

 翔一が落ち着くまでに少し時間がかかった。

 翔一は最後に『ジルバール』の魔力で死人荒野を復活させたことを語る。

「私もガラエルもあの世界魔術に参加できたことは誇りよ。ガラエルも泣いて感謝していた」

「しかし……僕はもう、この世界に居たくないんです。心残りは一杯あります。でも、もう」

「あなたはやり遂げたわ」

「ごめんなさい。僕は……」

 コレットはそこまで聞くと、静かに部屋を立ち去った。

 魔王を憎みながら、何もできず、それどころか英雄の妨害までしていたこと。そして、英雄の行った業績の偉大さに心が揺れて呆然としてしまったのだ。

 翔一を膝に抱きながら、最後はダナが記録して書を閉じた。

「これはいずれまとめて、書物として人に読めるようにするわ。『聖魔旋風』ドゥーベの物語として」

「……」

 この口述筆記は非常に長い時間がかかった。

 ふと見ると、空が白い。

 一晩かかったのだ。

「今日は一日ゆっくりして、明日、宮殿に入りましょう」

 翔一はうなずく。

 翔一とダナは食事を摂り、一緒に風呂に入り、一緒に眠る。

 お母さんに世話されている様で、翔一はうれしかった。

 翌朝、玄関に手紙が置いてあった。

『王妃様、私はガルディアに帰ります。頑固で思い込みの強い自分が恥ずかしくて許せません。私は憎むべき悪人たちに手を貸していた、そして、仇を倒してくれた恩人に苦しみを与えていた。この現実は逃れようがないのです。全ては自分の身から出た錆。これからも日々を生きます。己の愚かさをかみしめながら』

 コレットの手紙だった。

 ダナはそれをしまい。翔一を促して、家を出る。

「里の周りは花畑になっているの。朝日に照らされるとすごくきれいなのよ。景色もいいし、今日は少しピクニックでもしましょう」

「うん、そうするクマクマ」

 翔一はダナと手をつなぐと大喜びで外に出る。


 涼しい風の高原で昼食を摂り、楽しく散策する。

 ひとしきり遊んだ後、二人は宮殿の廃墟に入った。


「ここは本当にいろいろなことがあった場所だわ」

「お母さんにもあえたクマ」

「いい思い出も悲しい思い出もある場所なの」

「……」

 王座の部屋に入った。

 不思議な輝きに満ちている。

「これは……」

 明らかに時空の割れ目が生じていた。

 ヘルメール女王がその前に立っている。

 幽体なのか幻影なのか、翔一にはわからなかったが、彼女に実体はないようだ。

「勇者様、よくぞいらっしゃいました」

「女王様。お久しぶりですクマ。この裂け目みたいなのは……」

「異界への門よ。あなたに最も因果の強い世界に辿り着けるわ。あなたなら精霊界からでも自力で行けると思うけど、まだ少し力が足りないから、私が開いたの」

 ヘルメール女王が話す。

「ありがとうございます。僕はここを歩けば自分の世界に帰れるクマ? 僕は祈祷師で……」

「ええ、精霊界に通じているわ、私は精霊術師でもあるの。心配しないでお帰りなさい」

「ありがとう、じゃあ……」

「待って! クマちゃん。あなた、色々変なものを持ち過ぎよ。ここで捨てて行きなさい。どうしても持ち帰りたいものはいいけど」

 ダナが翔一を止める。

「そうだね、じゃあ女王様ちょっと待って」

 精霊界ポケットからざらッと全部出す。

「本当にいろいろなものがあるわね。金銀財宝はどうぞ持って帰って。あら、これは」

 ダナは気持ち悪い生き物を発見する。

「ひ、ひひ、お前ダナなのか。あの小娘が……」

 グロウギルだった。おぞましき人蛆。

「何と恥知らずな姿……我が種族の者と思いたくないわ」

 ヘルメール女王は首を振る。

「ハイエルフは種族として弱っていくのだ。俺の責任じゃない。俺は被害者だ」

 グロウギルが叫ぶ。

「私の夫にあげようかしら、おいしく食べると思う」

「え、そんなもの食べられるの、気持ち悪過ぎるクマー」

「冗談よ、また人蛆食べたら離婚しますっていいつけてあるから」

 ポイッと魔道ポケットに放り込むダナ。

「食べるのは事実クマなんですね」

 色々な思い出が交差する。

 あまり整理したこともなかった。

「ヤニスの剣術指南書、魔術書、その他書物、タコさん像……」

「書物はあなたの世界では役に立たないでしょ。その像は……うーん」

「このタコさんはお気に入りクマ」

「嫌な予感がするけどまあいいわ。たいしたものじゃないし」

「フロールさんのバックパック……エパットの頭蓋骨」

「そ、それは……」

「あいつを倒した後、思わず拾ったけど……」

「それがあれば、あの極悪はいつか復活する可能性があるわ、わずかだけど」

「勇者様、それは私が預かって虚無の世界に持って行きますわ。いつか、因果を持った英雄に託して」

 ヘルメール女王がうなずく。

「お願いしますクマ。僕あの時変な執着心にかられた。あれは奴の最後のあがきだったのかもしれないクマ」

「それに気が付くのならあなたは心配ないわ。本当に邪悪な呪詛は人が気が付かないように人を狂わせるの」

 翔一は女王に頭蓋骨を渡す。

 女王はどこかに消してしまったが、何故か取り返したいような感情が沸き起こった。

(確かに、微かな呪詛なのだろう。僕は救われたのかもしれない)

 頭を振って頭蓋骨のことを忘れる。

「一般的なマジックアイテムは好きにして、あなたの世界では効果が出ないかもしれないけど」

「わかりました。でも、よかったら、ダナちゃんに差し上げますクマ。かなり高価なものですから、僕が持って帰って無駄にするのも……」

「そうね、ありがとう、じゃあ売って貧民や孤児の援助資金にするわ。かなりの額ね」

 翔一の記憶にない物も多い、ふと背後を見るとダーク翔一がちょっと焦っているようだ。彼がこっそり拾ったものもあるようだった。

 ダーク翔一は大事なものを抱えている。

 取られたくないらしい。

 彼も長年一緒に戦ってきたのだ。無理強いをするつもりはなかった。

「あとはこの『水竜剣』クマ。これはフロールさんが作ってくれた思い出の品だから……」

 巨大な木刀を出す。

「これは強いわ。破壊力が強すぎるから気を付けて使いなさい」

「はい」

「ふう、もうこれくらいかしら」

「じゃあ、僕はそろそろ」

 外を見ると完全に日が暮れている。いつの間にか部屋に明かりの魔術が施されてた。


「待って、まだ重要なことがあったわ」

「?」

「チビクマちゃんを作ってほしいの」

「いいですけど、そういえば昔あげたのはいなくなってしまったクマですか?」

「ええ、駆け出し冒険者だった時、悪党に破壊されたの。もう悔しくって悔しくって、同じものを作ろうとしたけど、うまく行かないのよね。効果だけは似たものが作れたけど」

「その悪党はどうなったクマです?」

「塵になったわ」

「あ、はい」

「そうだ、ガラエルも欲しがっていたから呼ぶわ」

「ダナ、あまり勇者様のお手を煩わせるのも……」

 ヘルメール女王、若干呆れている。

「母様もチビクマちゃん、すごく気に入っていたでしょ」

「ええ、そうではありますが……」

 すぐにガラエルとエルが手をつないでやってきた。

「熊様……」

 ガラエルは静かに会釈する。

「クマちゃん!」

 エルはにっこり微笑む。

「じゃあ、お三方に、チビクマを差し上げますクマ、チビクマ職人ダーク君です」

 翔一は自分の宿精を紹介する。この場に霊視ができない者はいない。

「俺はチビクマ職人じゃねーぞ」

「いいから作るクマ」

 ぶつぶついいながら、ダーク翔一はチビクマを三体作った。

「クマクマ、クマクマ」

「うるせー、さっさと各人と契約して来い」

「初期バージョンより性能上がってますクマ。命名して契約するとより強くなりますクマ」

 翔一は皆にチビクマの術式を説明する。

「勇者様は、術者としても優秀ね。すごく複雑な呪物生命だわ」

 ヘルメール女王がほほ笑む。

「あら、じゃあ、どうしようかな。可愛い名前がいいわよね」

 ダナが考え始める。

「ウフフ。お前はダークスターよ。私の可愛い小さな熊」

 ガラエルは即座に決めて、契約し、胸の谷間に入れて可愛がっている。

「えー! どうしよう、決められないわ」

 エルはチビクマを前に悩んでいる。

「女王様は……」

「残念だけど私は実体がないの……」

「契約を魔性化して霊魂契約したらいいではないか。実体がない時はそうする」

 ダーク翔一の指摘。

「あら、この子、いろいろ詳しいのね」

 女王は少し感心する。

 結局、ヘルメール女王もチビクマを手に入れてしまった。

 この世界の超大物といっていい魔女たちが、チビクマを抱いて、少女の顔に戻るのが少し面白く感じた翔一だった。

 全員が名前を決めるのは、小一時間かかった。

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