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60 クマと宮殿

「こちらへどうぞ」

 壮麗なカルネス宮殿。

 比較的礼儀正しい人間の衛兵が彼らを案内する。

 カルネスの中枢を守る種族はダークエルフと人間のようだった。ホブゴブリンの姿は見かけない。

 控室のような場所に案内され、待たされることになる。

「ガラエル様に直接親書を手渡し、読んでもらってお返事を直接聞いて来いといわれているクマ」

 政府の高官が待っていたので、そう告げる。

「初めてですな、エパット殿の使者がそこまで仰られるのは。ここで返事を待っていたらいいではないですか。女王陛下はお忙しい身なのです」

 重臣のダークエルフ怪訝な顔。

「エパット様もあの女たらしのコンラッドに手を焼いているのです。ご理解のほどをお願いしますよ」

 フロールが補足する。

「うむ、あの子憎たらしい変態野郎コンラッド王。とっくの昔に滅亡しているはずが、未だにしぶとく立て籠もってますからな。……わかりました、女王陛下にお気持ちは伝えましょう。しかし、期待はしないで頂きたい。……魔王の御意向もある」

 語感から、魔王を認めることに抵抗があるようだった。

「そこを何とかしてほしいクマ」

「今、女王陛下は……とにかく待て。それ以外はいいようがない」

 重臣は何かいいかけたが、それだけ告げると去ってしまう。


 結局、無言で待つ一行。

「フム、このまま待ってるというのもつまらん、偵察してくるか……」

 フロールが非常な小声でつぶやく。

 兵が一人立っているのだ。

「僕だけ行くクマ。他の人はおとなしく待つクマ」

「魔女が居たらどうする」

「可哀想だけど僕が倒すクマ」

「というか、どうやってあんただけ抜けるんだよ。すぐばれるだろ」

 ビアンカも小声。

「身代わりを建てるクマ」

「ああ、さっき貰ったぬいぐるみね、でも、あんまり似てないしばれるだろ」

「ビアンカさん、あの見張りの気を少しだけ逸らしてほしいクマ」

 警備兵はじっと彼らを見ている。

「わかったわ、でも少しだけしか無理」

 そういいながら、ビアンカはうなづいて立つ。

 大きなオッパイを揺らしつつ警備兵のおっさんに迫る。

「ねえ、あんた逞しいね。ちょっといいことやらない」

「おい、やめろ、俺は任務中だ」

「嘘いうなよ、さっきから俺の胸ばかりじろじろ見てただろ」

「見せつけてたのはあんただろうが」

「いいから、いいことやろうってのが聞こえねぇのかよ」

 誘惑なのか因縁付けなのかだんだんわからなくなるビアンカの交渉術だった。

 力技だったが、警備兵の気をそらしたのは事実。

 翔一は急いでぬいぐるみに席を譲り、机の下に入る。

「ダーク君」 

 精霊界のもう一人の自分に話しかける。

「なんだよ」

「あれを形代にするから、暫く入っていてくれないか、そして、僕のフリをしていてほしいクマ」

「いいぜ、お前の毛を入れておけ」

 翔一は手首の毛をプチッと抜いて、ぬいぐるみの縫い目の中に入れる。

 スッと、魂がぬいぐるみに入り、全体の雰囲気として翔一のような存在になった。

「じゃあ、あとは任せたクマ。大人しくするクマよ」

「任せておけ。どんな奴も手加減なくぶっ殺す」

「大人しくするクマ!」

「いいから行けよ」

 翔一はぬいぐるみの中に自分のもう一人の自分が入ったことを手短に説明する。

 フロールとエトワールは戸惑いつつも軽くうなずいた。

 隠密精霊を纏って翔一は宮殿の奥に向かう。

 心配なのか何度も振り返るが、ダーク翔一はとりあえずは大人しげだった。


「いい加減にしろ、仲間を呼んでほしいのか!」

 警備兵が怒りだす。

「ち、憶えておけよ、警備野郎」

「外交官じゃなかったら、牢にぶち込んでるぞ」

 ぶつぶついいながら、無言になった。

「上手くいったか」

 席に戻ったビアンカがフロールに聞く。

「ああ、見てみろよ、翔一みたいだろ。もう一人の自分とやらが入っているらしい、普段は精霊界にいる奴だ」

「へぇ、確かに、クマちゃんみたいな感じになったな」

「ふ、ここにいる奴らは軟弱な奴らばかりだ。俺のように偉大なクマ精霊は他に居ない」

 邪悪な笑顔のぬいぐるみ。

「何いってんのこいつ」

「何かかなりダメそうなやつ。本当に翔一の分身なのか」

 フロールが首を振る。

 そこに現れる人物。メイドさんがお盆に乗せて何かを持ってきたようだ。

「お客様、お茶をお持ちしました」

 ダークエルフの可愛らしい娘が香のいいお茶と菓子を持ってくる。

「うむ、ありがとう。お嬢さん」

 エトワールがそういうと、頬を赤らめる少女。

 少女がダーク翔一の横を通った時、すっとスカートをめくる。

「きゃあ!」

「ププ。白パンツだ」

「てめぇ、大人しくしてやがれ!」

 クマのぬいぐるみの首をぐりぐり閉めるビアンカ。

「ご、ごめんなさい、首が、閉まる」

「いいか、今度あんなことしやがったら、ぶっ殺すからな」

「は、はい、ごめんなさい!」

「失礼したお嬢さん、こ奴は動物らしく常識がないのだ」

 エトワールが珍しくフォローしてくれた。

 メイドは無言で去る。

 しばらく沈黙の時が流れた。

 ダーク翔一、耐えられなくなって何かしようとする。

「いいからじっとしてろ!」

 ビアンカ、首を絞める。

「ヒィ、は、ハイ!」

 しばらく沈黙の時。

 ダーク翔一、ぴくっと動く。

「じっとしてやがれ!」

「ハイ!」

 全員、げんなりした顔になった。

(いつまで続くんだこれ!)


 その頃、翔一は一人宮殿の中に深く潜入していた。

 思った以上に兵士はおらず、宮廷の家臣らしき奴らもいない。

 視界の邪魔なので兜を脱ぐ、角もその時取ってしまう。

(やっぱり角はバランス悪いクマ、カッコよさが半減するクマー)

 なるべく小さな熊になって、宮殿を探索するが、根本的に人自体少ない。

 北と南の戦場に出払っているということを考えても、宮殿で働く人間は最小限のようだった。

 使われていない区画もあるらしく、雑に封印されている。

(こんなに人がいなくて国家が維持できるものなのだろうか……)

 不安になる翔一だった。

 王族の部屋らしき場所は、ダークエルフの兵士が巡回しているが、その数もまばら。

 高い天井に張り付いて、彼らをやり過ごすと、その区画も無人と感じられた。

 とある部屋で立ち止まる翔一。

(この部屋、ヴィックの匂いがするクマ)

 しかし、誰もおらず、彼の私物が少し転がっているだけでたいしたものはない。

 ベッドを見ると、長い黒髪と短い髪がある。

(長い髪は女、短い髪は男。短い髪はヴィックのもの、クマ)

 匂いから判別して、翔一は二つの髪を採取し、机の上にあったペンに巻き付け、精霊界に放り込む。

(悪いけど二人分の呪詛物にするクマ)

 この宮殿の主の部屋が最奥最上階にあったが、そこも、人の気配はなかった。

 警備兵はいたが、油断しきっており、主はいない雰囲気である。

 そっとチビクマを飛ばす。

 外の窓から様子をうかがわせた。

「ピーピー、クマクマ」

 翔一はチビクマと会話する。

「やはり、無人クマ」

 翔一はそうつぶやくと、階段を降りようとした。

 目の前に、美少女が立っている。

(うわ! いつの間に?)

 黒髪の白い肌の少女。

 目がぱっちりして、体はとても細い。

 完全に目が合う。

「クマクマ」

 翔一は完全に虚を突かれたが、慌てず、得意の動物の振りを決行した。

「あら、クマさん。あなたどこから来たの」

 にっこり微笑む少女。

「クマクマ」

「お腹空いてない? おやつ食べようよ。ウフフ」

 少女は翔一の手をモフっと取ると、階下に向かう。

 厨房の横にある使用人の食堂に入った。

 お菓子とお茶が用意してある。

 椅子に座る二人。

「あなたは翔一さん。『聖魔旋風』ドゥーベでしょ。隠してもわかるわ。凄い魔力秘めているもの」

「……」

「私はガラエル様の娘なの。名前は……エルよ」

 大きな瞳をぱちくりさせてにっこり微笑む。

「……」

「あなたにお願いがあるの。奴らを倒して。そして、ガラエル様を悪事から解放して。あいつら、前の魔王と一緒で、結局、ガラエル様に悪事をやらせているわ。公認勇者と聞いたからちょっとは期待したんだけど……」

 ため息をつくエル。

「……」

 翔一は首を振る、そうはいわれてもガラエルを倒すしかないのだ。

「わかってるわ。ガラエル様は今は敵よね。でも、普通にやっても絶対死なない人なのも事実よ。だから、普通に倒して時間稼ぎをしてほしいの。そのためにも、まずは偽勇者の部下を倒してほしいわ」

「……」

「宮廷の奥に第三広間という場所があるの、そこで、偽勇者の部下が盛んに魔物を召喚しているわ。ゲートはガラエル様が開いたの。……あいつ、調子に乗って、異界からとんでもないのを呼ぼうとしているわ」

 翔一はうなずく。

「ありがとう、じゃあ、案内するから」

「クマクマ」

 お茶を終えると、二人は広間に向かう。


 不思議と誰にも遭遇しない。

 件の広間付近には嫌な気配が充満していた。

 ぞろぞろと、蛇のような虫のような不気味な生き物が広間から廊下に出てくる。

 怪物は宙を浮き、天井付近を這いまわる。

「きゃ! 怖いわ……」

 少女は翔一の毛皮の背中にしがみつく。

 隠密精霊を張り、広間の通用門に近づく。

 怪物たちは翔一に気が付かず、素通りするようだ。

 扉は開いていた。

 そっと開けて入る。

 むわっと血の匂いが充満していた。

(嫌な匂いだ、邪悪なことをしているクマ)

 中の様子をうかがう。

(全体的に体育館みたいな構造クマ)

 見上げて、広間を確認する、翔一はなんだか懐かしい感じがした。

 身を低くして静かに歩く。

 得意のフカフカの毛皮を逆立て、一切音を立てない。

 少女は翔一の毛皮をぎゅっとつかみ震えている。

 ふりかえると、可愛い少女の顔が目の前にあった。

「こわいけど頑張るわ」

 うなずく翔一、しかし、物陰に隠れるように促す。

「うん、わかった」

 少女は広間の柱の陰に身をひそめる。

 翔一は隠密精霊を彼女に被せる。

 広間は薄暗く、中央に不気味な虹色の光輝く空間の亀裂。その周りは幾重にも複雑な魔法陣が描かれ、一人の女が必死に呪文を詠唱していた。

 床には首を刎ねられた死骸がいくつも転がっている。殺された生贄なのだろうか?

 亀裂から、何か大きなものの一部が見えていた。

(急がないと何か出てくるクマ!)

 女を守るように、金属の鎧が取り囲んでいる。

「気を付けて、あの鎧はアダマントゴーレムよ」

 微かなエルの声。

 翔一は中型の熊になり『ジルバール』を抜く。

 はっとふりかえる女、ゲオルギーネだった。

 無残な切り傷の跡が顔面を走っている。

「あんた、まさか死んだはず……」

「……」

 この女に何もいうことはない。

 翔一は剣に雷気を宿す。

「なんだい、その剣! 地獄みたいな力があるじゃないか……」

 ゲオルギーネは他の全てを無視して、剣の魔力に心の底から恐怖を感じた。

 尻餅をつく。

「『剛刃素戔嗚』!」

「ゴーレムども! 私を守り……」

 最後までいえなかった。

 雷が曲がって走ったと思った次の瞬間には、翔一が後ろに居たのだ。

 ゴト。

 ゲオルギーネの首が床に落ちる。

 首が床に落ちる前に、彼女の涙が落ちたが、噴き出す血液に、すぐにかき消える。

 翔一はゴーレムを迂回して剣をふるった。

 主が死ぬと、鈍重なアダマントのゴーレムたちはバタバタと力を失って倒れる。

 見ると、ゲオルギーネの霊は自分の首を拾い逃げるように去った。

 悪事の報いを受けるのが怖かったのだろうが、怨霊たちが逃がすようにも思えない。

「ゲートは放っておけばいいわ。ここにいる人で、ゲオルギーネ以外には誰も使えないから」

 エルが出てくる。

 何かの『存在』は呼ぶ者がいなくなり、世界の壁に弾かれて異界に引っ込んだようだ。

「……邪神みたいな奴だったわ。あんなの呼んで制御できるつもりだったのかしら」

 エルは安堵のため息をついている。

 翔一はなんとなく面白そうだと思ってアダマントのゴーレム、よく見ると、フルプレートアーマーを手に取る。

 非常に高度な手作りの細工品だった。

「それ、持っていったらいいわ。ゲオルギーネの物だから。……売ればかなり高価よ」

 翔一は二つ精霊界に放り込んだ。

「残りはくれるのね、ありがとうクマさん」

 辺りを見回す。

 ゲオルギーネの杖も強力な魔力の物品だった。

「それは汎用の魔術補助器よ、それもあいつの物だからどうぞ持って行って。それと、あなたたちを偽勇者とガラエル様のところに送るわ。せめてものお礼よ」

 翔一はうなずくと、杖を精霊界に放り込んで子熊になる。

「フフフ、やっぱり、小さい方が可愛いわよ。小さな尻尾が好き」

 エルは翔一の背中に抱き着いてすりすりする。

 二人は手をつないで宮殿の正面に近い控室に向かった。

 さすがに途中、幾人かの重臣や将校たち出会うが、彼らはエルを見ると恭しく頭を下げる。

 エルは一人の重臣に何か耳打ちすると、重臣は翔一に深々と頭を下げた。

「あの偽勇者の部下を一人討たれた……熊殿は我らの恩人です」

 重臣はそう小声でつぶやくと急いで立ち去る。


 二人は控室に入った。

 エルを見て警備兵は頭を下げると、慌てて、退室する。

 四人の仲間はひきつった顔でじっと座っていた。

 ダーク翔一は一番げんなりした顔。

「お、やっと来たな翔一。もう、現実界はこりごりだ。化け物みたいな女が俺をイジメるんだ」

 泣きそうな顔のダーク翔一。

「はあ?! てめぇがすぐにつまらないいたずらするからだろう!」

「早く戻りたい、精霊界に戻してくれ!」

 翔一が形代の術を解除すると、ダーク翔一は精霊界に飛び込む。

「仲良くやったクマ?」

「あーすごく仲良くな!」

 怖い顔のビアンカ。

「そのかわいらしいお嬢さんは? 翔一殿の友達かな」

 エトワールがエルを見つめると、思わずエルは赤くなった。

「ガラエルさんの娘さんクマ。彼女が偽勇者のところまで案内してくれるクマ」

「ええ、皆さんには大変なことをお願いすることになると思いますけど、偽勇者とガラエル様を倒してください。ガラエル様は一時的に死んでも復活しますから……」

「我らもそのつもりだ、お嬢さん。ガラエル女王は庶民には慕われている。心臓を取り返しさえすれば、彼女は悪事から解放されるのだ」

 エトワールがエルを励ますようにいう。

「あ、ありがとうございます」

 真っ赤になるエル。

「ぬう、イケメンイケメン」

 フロールのつぶやき。

「話が決まったんなら、さっさと行こうぜ、どうやってそこに行くんだ」

「テレポートスポットがあるの。そこから戦場に臨時スポットがあって行けるわ。でも、出たところはあなたたちから見て敵だらけよ。命の保証はないわ。ごめんなさい」

「アダマントの鎧を貰ったクマ。人間のお二人はどうぞ」

 二着の鎧を出す。

「俺はいいや、小手一つでも重すぎだろ」

 ビアンカは首を振る。

「せっかく翔一殿が持ってきたのだ。俺はありがたくいただこう」

 エトワールの鎧はハーフプレートだが、かなり年季が入って、壊れかけていた。装甲も薄い。

 アダマントのフルプレートは重すぎるので、部品を幾つか外して着用することにしたようだ。

「小手は愛用のを使う。上腕と腿も要らない。重すぎる。ヘルメットもいいだろう」

「ヘルメットこそつけろよ」

 フロールも興味津々で鎧を調べている。

「知覚が落ちるのが気に入らんのだ」

「面皰が外れるからオープンヘルムにしたらどうだ。色々オプション取れるようなってるぞこの鎧。凄い逸品だ」

 フロールは絶賛。

「フム、それならいいだろう」

 皆でエトワールの装甲着用を手伝って、立派な中装鎧の戦士を作り上げる。

「最後に守護、強甲、聖性の精霊を受祚するクマ」

 翔一はエトワールが受け止められるぎりぎりの線で精霊を呼ぶ。

 あまり強力過ぎるのは人を疲労困憊状態に落とすのだ。

「強甲はいい、もう十分に硬い」

「わかったクマ」

 翔一は二体の精霊を鎧に封じる。

「小手だけ貰うか……パーツだけあるとつけたくなるな」

 そういいながらビアンカは小手だけ嵌めた。


 乗用動物を連れてきてもらう。

 フロールはダークファングにまたがった。さすがに人間二人は馬を引いて歩く。

 四人は宮殿の奥にあるという魔法陣に案内される。

 宮殿は広い。広い敷地に建物が点在している。それを渡り廊下でつないでいるのだ。

 翔一の前をエル、それに話しかけるビアンカとフロール。

 翔一とエトワールは一歩遅れてついていく。

「翔一殿。俺はあの時、あの巨猿に向かう時、一瞬躊躇したのだ。数が多すぎるから待て、と」

 エトワールは廊下を歩きながら、翔一に話しかける。

「……」

「しかし、お主とフロール殿は何の躊躇もしなかった。あの怪物たち相手に、普通に考えたら死ぬだろう。それなのに、全く躊躇しない」

「……」

「俺は恥じたよ。子供の時以来だ。エルネスト将軍のような英雄が虐殺されかかっているのに、自分の命の方が大事。名誉より自分の命を優先する小さな自分……」

「……」

 翔一は毛皮の手でモフっとエトワールの手を取った。

「ああ、わかっているさ。それが人間だ。弱いものだ。でも、お主たちの勇気は俺の中で永遠に生きる。俺もそれに近づけるように努力しよう」

 廊下を歩くと、暗くて広い部屋がある。そこに魔法陣が描かれていた。

 先を行っていた三人は既にそこで待っている。

「おーい、お前らさっさと来い。偽勇者に一泡吹かせてやるぜ」

 フロールが手を振る。ダークファングも元気いっぱいだ。

 翔一とエトワールは手をつないでゆっくり歩いて来る。

「あー血が騒ぐぜ。バキバキにバケモン共ぶっ殺してやる!」

 ビアンカが鎖をじゃらじゃらさせる。

「どうでもいいけど、お前、嫁の貰い手ないだろ」

「俺より強い奴なら嫁になってもいい」

「無理をいうな、全人類にほとんどいないぞ」

「そうでもないさ」

 ちらっとビアンカはエトワールを見た。頬が赤くなる。

「翔一は熊だぞ」

「てめ―の目は節穴か!」


 翔一とエトワールが魔法陣に入った。

「勇者の皆さんごめんなさい。私たちの所為で……」

 エルは大きな瞳から少し涙を流す。

 翔一はうなずく。

 エルがコマンドワードを唱えると、四人はどこかに消えた。

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