42 悪鬼 【閲覧注意】
今回も残酷なシーンが多いです。
苦手な方のために、活動報告のコメントに全体のあらすじを書きます。
主人公の虐待シーンが多いので、回避されたい方はそちらをどうぞ。
翔一は両手を合わせるように縛られ、木に吊るされていた。
両足も縛られて地面に固定されている。手首を縛る紐は滑車に掛けられ、大男が二人掛でぎりぎりと極限まで引っ張った。
翔一は両手首がちぎれそうな苦痛に身もだえる。
「どうだ、少しは背が伸びたかチビ助」
髭面の気持ち悪い男がにやにやしながら見ていた。
「ようやく会えたわ、怪物め、お前用の拷問道具を特注で作ったの。今から試してやるから」
ポーラがいる。
翔一は苦痛の中でこの空間に大勢の人と大勢の幽霊が、魂が抜けたように観察しているのを感じた。
ここは荒廃した死人平原のどこかにある砦のようだ。
小さな古い壁が周りを囲んでいる。
「銀の鋲の鞭よ」
ポーラはひゅんと銀色に輝く棘だらけ鞭を翔一の背中に浴びせる。
ズバッ、背中が一撃でずたずたになり、毛が飛び散る。
「ぅ!」
あまりの苦痛に叫びも出なかった。
電撃で撃たれたような痛みだ。
二発目は胸に。
三発目は腰に当たったが、もうその時点で意識は飛んでいた。
翔一の小さな体は血塗れの肉の塊のようになっている。
銀の鞭なのだ、彼の怪我は治らない。
「焼き鏝で起こしてやるわ」
真っ赤に焼けた金属の棒を火鉢の中から出す。迫る熱。
ジュ―と肉の焦げる匂い。
ポーラは乱暴に翔一のわき腹に焼き鏝を当てる。
これも銀の焼き鏝なのだ。
怪我は治らない。
「!!!」
翔一は痛みで目を見開いたが、それは一瞬で、すぐに意識が飛ぶ。
水をぶっかけられる。
「みぞおちに何か紋様が見えるわね、光ってるいるわ。生意気に。怪物のくせに」
ポーラはそういいながら、焼き鏝を熱する。
「おい、ちょっとやりすぎだ。死んでしまうぞ」
髭の男が少し心配そうにいう。
「こいつのみぞおちに何か白い輝きがあるわ。それをこの銀の焼き鏝で焼きつぶしてやるのよ!」
翔一のみぞおちには聖痕があるが、熊形態ではかすかにしか見えない。
しかし、ポーラは目ざとく気がついたのだ。
「その前にこいつの術を封じろ」
神官らしき男がやってきて、焼けた銀の針を背中に突立てる。
背中を焼き切りながら、何かの術を施している。
翔一は地獄の苦しみに暴れたが、逃げられなかった。
「グハ! ううううぅぅ」
何かがプツンと切れたように感じた。視界が真っ暗になる。
「今日はこれで終わりにしてやるわ」
焼き鏝が迫ってくる、翔一は首を振るが、ポーラはみぞおちの聖痕に焼き鏝を当てた。
毛が焦げる臭い、焼き鏝は聖痕を焼くようにみえた、しかし、
パン! という音と共に、先端が折れてはじけ飛ぶ。
赤い焼けた銀の塊は、にやにや顔の男の口の中に入る。
「がー! ぐああ!!」
もがき苦しむ男。
「医者だ! 医者を呼べ!」
兵士が叫ぶ。
「ち、何やってんのよ。今日はここまでにしてやるわ、明日からも楽しみね」
ポーラは狂い血走った目で翔一を見ながらにやにやしている。ポーラの周りの怨霊たちは彼女を守る半透明の鎖を引っ張って切ろうとしているが、切れないようだ。
翔一はそこまで見て、気絶した。
鎖と枷で縛られ、翔一は檻に放り込まれた。
地下牢。
全身の痛みでうめくことしかできない。
ポーラは徹底的に銀を使って人獣の再生能力を封じたのだ。
手足の枷でさえ、銀がメッキされている。非常に徹底していた。
手首と足首はグラグラになり、力が入らない。
翔一は治癒精霊を呼ぼうと思ったが、何かの魔術が阻害して精霊を呼べない。よく見ると、翔一の体にも透明の鎖が巻き付いている。
無駄だと思って横になった。
痛みが激しく、休息さえできない。
「うう、うう……」
うめき声を上げ続けるだけだ。
翔一は何時間苦しんだのだろう、いつの間にか眠っていた。
ダナが泣いている。
翔一は大丈夫だと慰めるために手を出すが、それは肉がなく、骨の腕だった。
はっと目が覚める。
苦痛が体を苛む。
すすり泣くような声が聞こえた。
汚物と血の匂いがする。
この牢の横にはいくつも同じような牢が並んでおり、何人かの人間が闇の中でうずくまっているようだ。
急造の檻なのだろう、見た目は新しい。地下室全体は廃墟を利用したようだが。
すすり泣きは彼女達から聞こえる。
うずくまっている人間は全員女だった。匂いでわかる。
翔一に数を数える気力はなかったが。
「死んだら、楽になるのかしら」
少女の声が聞こえる。
「生きのびろ、なんとかして。最後まであきらめてはいかんぞ」
かなり年を取った女の声。
「あの悪魔女が私たちを生かしておくわけがないわ。私たちは拷問されて殺される運命なのよ」
中年の女の声。
「新しく入った奴は何者かしら、獣のようだけど、凄い拷問されているわね。あいつがポーラの興味を引いている間は、私たちは何もされないわ」
また別の女の声がする。
「うう、私何も悪いことしてないのに、なんでこんなひどいことされるの? 私、アルナー様に祈っただけなのに」
「そんな誰も知らない神なんて……ローヴィエ神殿に入らないのは全部異端で邪教なんだよ」
中年の女が諦めたようにいう。
「私の部族では普通なの」
「諦めな、頭のおかしいポーラには通じないから」
老女の声。
しくしく泣き続ける少女。
彼女は翔一のすぐ横にいた。檻なので横の音は筒抜けなのだ。
翔一のもうろうとした頭には、彼女の声がリリーに聞こえた。
「リリー……?」
翔一は何とか声を出す。血の味がする。
「?」
「今、その毛皮がしゃべったのか」「あいつ、人間なのか」
女たちのひそひそ声。
「よかった、生きてたんだね。僕は心配で探しに来たんだ」
翔一には彼女がリリーに見えた。
「わ、私、そんな名前じゃ……」
「僕が絶対助けてあげるよ。心配いらない」
翔一は手を伸ばす。
重い鎖の手枷が邪魔をして、檻に触るのがやっとだ。
少女はおずおずと手を伸ばして、翔一の毛皮の指を触る。
「毛皮だわ……柔らかい」
「よかった、生きてたんだ。僕が優しい人がいる場所まで連れて帰る……」
翔一はそこまでいって意識が途切れた。
ユアンおじさんやレンドール夫婦の顔が浮かぶ。リリーが生きていたら絶対大喜びしてくれる……。
「私、リリーって子じゃないよ」
少女はつぶやく。
「そいつ、女の子探してこんなところまで来たのかい。なんて豪胆な奴だ」
老女が驚きの声を上げる。
「うらやましいよ、そのリリーって子。私にもそんな男がいたらよかったのに。心残りなく死ねたわ」
誰かがつぶやいた。
翌々日、翔一は同じように紐で吊るされ、手足が引きちぎれそうになるまで引っ張られる。
口に真っ赤に焼けた焼き鏝の先端が入ってしまった髭の男が、憎悪に満ちた目で翔一を睨む。
一見治っているようだが、口を開くと上顎に大きな穴が開いていた。
「先日は貴様のせいで赤っ恥をかいたぞ。今日は俺のやり方で地獄の苦しみを与えてやる」
男はメリケンサックを握る。
これも銀メッキがされているようだ。
ボコッ! 翔一は腹を殴られた。息ができない。
次に顔面。
次にわき腹。
メリケンサックが翔一の体を滅多打ちする。メリケンサックには棘が埋め込まれ、体は血塗れになる。
毛皮が飛び散り、翔一の丸い体は血の袋のようになった。
両肩は脱臼したようだ。体に痛くない場所がない。
「はぁ、はぁ。舐めやがって、ケダモノが! お前はエウヘニョ様に見分されたのち、斬首刑になる。それまで邪悪な人獣として生まれたことを後悔するまでいたぶりぬいてやるぜ」
翔一の耳にはかすかに彼の声が聞こえた。
(死ぬ、その方が楽)
翔一の感想。
ボス、ボス、体を打つ拳。
翔一はげぼっと血を吐いた。
「フェリペ、それでいいわ。こいつがある程度回復したら、次は私がやるから」
悪魔のようなポーラの笑み。翔一の腫れた目の片隅に見えた。
砦を見下ろす峠の上から、光が輝く。
そこには三人の存在がいた。
ダナとフロールと涼子だ。
フロールはスコープを最大望遠にして、正座して見ている。
微かに、握る拳が震えていた。
「ねぇ、タマゴちゃん、何か見える?」
ダナが心配そうに尋ねる。
「いいや、何も見え……ない!」
フロールのスコープには翔一が拷問される姿が見えていた。
男が殴っている。
血しぶきが飛ぶ。
「奴はただやられるような奴じゃない、ここは我慢だ。クソ!」
草を引き抜いて辺りに投げる。
「クマちゃん、今どうなってるの。私も魔法で……」
「見るな!!!」
「え、でも……」
「あいつは闘っているんだ。今は、待つしかない……」
フロールは自分に言い聞かせるようだった。
金属の体が震えている。
涼子がそっとフロールの背中を抱いた。
牢に放り込まれる。
血の塊のような体。
銀の首枷手枷足枷。
翔一は浅い呼吸しかできない。
夜になった。
翔一は苦痛のあまり目が覚めていたが、意識は混濁している。
こっそり忍び寄る人影。
「君、まだ生きているか」
軽やかで優し気な声。
若い青年の声だ。翔一には聞き覚えがあった。
「……」
「痛み止めだ。何とかして飲んでくれ」
青年は小さな丸薬を翔一の顔の付近に投げる。ボロボロと、翔一の顔の横に落ちた。
一粒だけ口に入る。
「君はあの熊だろ。あの子、リリーのお気に入りの子熊だ。なんでこんなひどい目に……」
青年は首を振る。
翔一は思い出した、ハイエルフ領で出会った青年剣士フォノンだ。
(謀殺されると聞いていたけど、生きていた……)
「……こ、殺される、気を付けて」
翔一はやっとの思いで声を出す。
「え、喋るのか、君は」
フォノンは驚いたが、翔一は会話ができる状態ではない。それ以上は何もいわず、立ち去ろうとする。
キョロキョロしてから牢屋を出ようとした。しかし、
「何をしているの、あなた下士官よね」
いつの間にか出口にはポーラが立っている。
「申し訳ありません、変わった生き物なので観察しようと……」
「嘘おっしゃい! 今、あの人獣に薬を渡そうとしていたわ。この裏切り者!」
ポーラはそう叫ぶと、異様な速さで短剣を抜く。
フォノンは慌てて剣を抜こうとするが牢屋の通路は狭すぎた。剣が檻に引っかかる。
冒険者として経験の深いポーラの動きは的確だった。
次の瞬間、短剣はフォノンの喉仏の下を突き刺す。
「魔物に同情するような奴なんて死ねばいいのよ!」
そのまま、ビリビリと喉の皮膚を破った。悪鬼のような形相をしたポーラ。
「グオ! ウグウウウ」
あふれた血が呼吸器に入って悶絶して死ぬフォノン。
「ハァハァ……ち、面倒なことになったわ」
ぶつぶついいながら、ポーラは地下牢から去る。
しばらくすると、フォノンの死骸を片付けるために下位の兵士たちがやってきた。
彼らはぶつぶつ文句をいいながら死骸を運ぶ。
「僕は死んだのか」
ぼーっとしたフォノンの霊が立つ。
「僕のために申し訳ない」
翔一は、自分のために死んだ青年にどうやって謝ったらいいか、心が張り裂けそうだった。
「救えなくてすまない。天罰騎士団は世間への表向きは正義だけど本当は単なる邪悪の集団だ。僕は弟の行方を掴めなかったよ……」
青年は涙を流す。
「でも、誰か来たみたい……」
フォノンの傍らには光り輝く小さな人影。
人影はとても美しい少年のようだった。
フォノンは少年と手をつなぐと、どこか遠くに旅立っていく。
翔一はそこで気を失った。
その日はポーラが翔一を椅子に縛り付けていた
翔一は抵抗する気持ちが失せていた。
腕を少しでも動かすと痛い。
両肩が脱臼しているのだ。
「今日はお前の爪を一枚ずつ剥がしてやるわ。この銀のナイフでね」
ポーラとその手下が、翔一の両手を台に固定する。
翔一の手指は人間的な形をしている。それがここでは裏目に出た、弱点として見られたのだ。
右の小指の爪に、冷たい感触が走り、めりめりと爪がはがされていく。
「ぐぁ! あはぁあああああ!」
あまりの苦痛に翔一は涙を流し、悶絶した。
「ヒヒ! 痛いか、痛いだろう。お前はグレゴリーを殺した。お前たち人獣が殺したんだ。私の愛する人を!」
ポーラは目を極限まで見開き、血走った目で翔一を眺める。
「怪物。次は左手の爪だ」
また感触が走る。
「ぐあ! ああ、ああああああ!」
めりめりと爪がはがされていく。全身の毛が逆立つ。
苦痛の余り、一瞬意識が途切れた。
「ヒヒヒ、ヒヒヒ」
ポーラは狂気の笑いを上げる。なぜか涙を微かに流している。
その時、人間の気配がやって来た。
かなりの人数だ。扉が開き外気が入る。
「おい! 何をしている!」
どこかから声がした。
聞き覚えのある声だった。
「何よ、あんたたち、ここは関係者以外立ち入り禁止よ」
ポーラの不満げな声。
「俺はマクシム。エルザ伯の代理で天罰騎士団の現況を調査しているのだ。その熊は翔一殿だな」
怒りを孕んだ男の声。
翔一は混濁した意識の中思い出した、吸血姉妹を倒した時に助けた黒牙団の首領の声だった。
「こいつは邪悪な人獣。もうすぐ斬首になる。私が拷問して何が悪いの」
「この熊は吸血鬼を倒した英雄だ。拷問も処刑も絶対許し難い。今すぐやめるか、俺に斬られるか選べ!」
ざっと偃月刀を抜く音がする。
同時にポーラの護衛達が剣を抜く音。
「何をいっているの、何をやったかは知らないけど、こいつは邪悪な人獣。こいつは拷問されて当然。私は正義よ」
ポーラは感情のこもらない、ガラス玉のような目で睨み、胸をそらす。
「……今すぐ引き渡してもらおうか!」
マクシムが激怒している。
「部下ともども死にたいのなら、ご自由に」
ポーラが薄ら笑いを浮かべる。マクシムの手勢は少ないが、ポーラの取り巻きは多い。
「大兄貴、今は形勢不利ですぜ」
マクシムの弟分の声。
暫くにらみ合ったのち。
「チッ! この件はエルザ伯に申し上げる。お前たちはここから追い出されるからな。翔一殿を解放すれば寛大な処置が望めるだろう」
「魔物に肩入れするのね。あんたたちも邪悪に組みする悪魔として、天罰騎士団の攻撃対象にするわ」
「貴様、頭がおかしいのだろう」
マクシムが足元に唾を吐く。
凄い形相で睨み返すポーラ。
しかし、戦はなかった。
マクシムとその部下が足音荒く尋問室を後にする。
「ポーラ様、これはまずいですよ、ここで青剣城と敵対するのは……」
ポーラの部下が心配そうに進言する。
文明から離れたこの死人荒野では、青剣城に補給を頼るしかないのだ。他のルートは困難が多すぎる。
「私は正義よ。私のやっていることに間違いはないわ。あいつらは目が曇っているだけ。グレゴリーを殺したこの獣はどんな罰を与えても足りないわ」
ポーラには自分の「正義」以外心になかった、部下の言葉は聞こえても心には届かない。
「グレゴリーはいない」
翔一はつぶやく。
「?」
怪訝な顔で振り向くポーラ。
「ポーラさん、グレゴリーさんの霊はあなたの傍らにいない。居るのは憎しみに燃えた怨霊だけ」
ポーラの目が極限まで開く。
「嘘をつくな!!! グレゴリーはいるわ。私を見守っているわ!」
狂乱したポーラは拳で何度か翔一を殴る。
部下が彼女を落ち着かせて、どこかに連れて行った。
その日の夜。
翔一は目を覚ます。数人の天罰騎士が来たのだ。
ポーラと二人の男だった。
翔一の体は太い鎖と枷で重い。
「モリー、今日はお前の尋問だ。どんな拷問が望みだ」
にやにやしたポーラがいる。
その夜は隣の檻に用事があったようだ。
「いや! 許して、私何もしてないわ!」
黒髪の少女は半狂乱になっている。
「お前のような邪教の信者は焼き鏝でじっくり話を聞いた方がよさそうだな。神の正義を教えてやるわ」
異様な笑いが顔に張り付いている。
「私、回心します。ローヴィエを信じます。だから、もうやめて!」
「そんな浅い回心、信じられるわけもないわ」
檻の鍵を開け、体格のいい兵士が少女を二人がかりで抑えて引きずり出そうとしている。
「それのどこが正義だ?」
突然、翔一の声が牢屋に響く。
静まり返る牢屋。
「何をいってるの。邪教を異端を罰するのは正義よ」
不思議そうに返事をするポーラ。
「単にお前は拷問を楽しんでいるだけだ」
じゃらじゃらと鎖を引きずりながら、翔一はポーラの近くまで行く。
「おまえの相手は明日してやるわ。黙っていなさい」
「リリーを放せ」
「リリー? 何をいってるの、お前に何ができる。自由もないし、術も使えないのに。フフフ」
狂気の顔から笑いが出る。
「もう、お前たちを許さない」
「はぁ? そこで吠えてなさい、魔物」
ポーラは翔一を無視しようとした。
「ハルス、トウ、ルウ、ウルラ、バースト……剣精招来」
翔一は熱に浮かされたように、聖剣のコマンドワードを唱える。
すると、ヌーっと虚空から青く光る聖剣『フェルシラ』が現れた。
聖剣は翔一の前でくるくると回転すると、鞘が落ち、まるで紙切れのように分厚い鉄の枷を断ち斬る。
翔一を縛る透明な鎖も断ち斬れた。
周りに精霊があふれ出す。
「え、なぜ」
ポーラの顔が驚愕に歪む。
「お前らのつまらない術で、聖剣は抑えられない」
つぶやくように答える翔一。
翔一は体がズンッと大きくなった。
同時に脱臼した肩が嵌る。
「グルルルル……リリーを離せ。最後の警告だ」
魔獣のような声を出す翔一。
「剣を出したところでどうだというの、お前はまだ檻の中……」
ポーラは最後までいえなかった。
ドスン。
鈍い音と共に、翔一は檻と柱越しにポーラの首を刎ねていた。
檻も石造りの柱も、聖剣の前にはバターのようなものだ。
驚愕の顔のまま転がり落ちるポーラの首。
一度瞬きをした。
涙が一筋流れる。
「リリー!」
怒りの魔獣と化した翔一は咆哮した。
2020/7/18 前書き説明追加、脱字修正。
2020/7/23 誤字など多少修正しました。




