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35 脱出、仲間再び

 宮殿の中庭に宰相テオドールの死骸。

 頭部を破壊されいる。

「この肉体は可哀想な犠牲者の肉体です。魔王は肉体を替えて時代を生きてきました」

 デリクが死体を調べながらつぶやく。

「魔王は滅んだ。僕たちは勝ったクマ」

「そうでもないです。以前、同じようにこいつに勝った人がいます。しかし、奴はまた復活しました。奴を完全に倒すには現世で倒すだけでは無理なのです。奴を倒すには神界に行って奴に力を与える魔神との関係を断つしかないでしょうな」

「神界へのクエストに僕は行くよ。師匠も待っている」

 ミレーヌは腕を組み、死骸を眺める。

「僕も行くクマ」

「君はこの世界でまだやることがあるし、君はこの世界の人ではない。そこまで背負うべきではないよ。そこまでやる責任があるのはこの世界で生まれた人間だろう」

「……」

「それに、聖剣の使い手が全部神界に行ったら、この世界を守る人がいなくなる。僕の師匠は既に神界に行って戦っている。僕も魔王を倒すために神界で戦うよ」

「そんな簡単に行けるものなのですか」

 デリクが苦笑する。

「少なくとも僕は行ける。僕は不老不死なのだ。以前、神と契約してそうなった」

「え、そうだったんですか、道理でいつまでもお美しい」

「フフ、じゃあ、クマさん、デリクさん、僕は行くよ」

 ミレーヌはデリクと握手し、翔一をぎゅっと抱きしめる。たぶんモフりたかったのか「毛むくじゃらの大英雄さんだ」ミレーヌが小声でつぶやく。

「魔神討伐はどのくらいかかるクマ」

 すぐに済むなら、ダナの呪詛は消える。

「わからない、神界のクエストは現実の何かとリンクする。つまらない事ならすぐだけど、魔神ともなると数十年かかるかもしれない。時間の感覚が現実とは違うんだよ」

「……」

「君たちはこの小川を流れて行けば、望みの場所に出られるよ。ささやかだけど僕からの手向けだ。僕が去った後、小川を使ってみたらいいよ」

 中庭には随所に小川が流れている。

 ミレーヌは全裸になり、剣だけ持って小川に入る。

 彼女が入ると、小川は穏やかな光りで輝いた。

 そのままミレーヌは歩いていくと、ゆっくり水の中に消えていく。

 一瞬、天使のような姿になる。

(あれは、どこかで見たクマ)

「ミレーヌさんは水の神と契約しているんでしょう」

「じゃあ、あの水牢が清浄だったのも……でも、なぜ逃げなかったのだろうクマ」

「我々を待っていたんじゃないですか。預言か何かで。神の使徒なんてものは理解できない動機を持ってます」

 宮殿の中で、大きく騒ぎが起き始めている。

 そこかしこで悲鳴が聞こえる。

「魔王の下僕の死骸が見つかったのでしょう。そろそろ、我々も消えた方がいいと思いますよ」

「そう思うクマ」

 翔一はダナを見る。

 ダナの呪詛は多少弱まったようだ。

 しかし、消えたわけではない。

 翔一はため息をつく。

 解毒薬を飲ませて、ダナを背負う。

「モフモフ、毛皮……」

 ダナの寝ぼけた声。

 背負った瞬間に寝てしまったようだ。

 翔一とデリクはミレーヌの入った小川に入り、腰までつかる。

「どこに行きますか」

「とりあえず、フロールさんのところ」

「たぶん、宿屋の近くの川に出ますよ」

「あの辺り、汚い水しかなかったクマ」

「神の力を信じましょう。捕まることを思えば、汚れくらい……」

 デリクが苦笑して、水に入っていく。光り輝き彼の姿は消えた。

 翔一も続く、すっと存在が水に溶けるように流れた。


 ここはどこだろうか、

 暗いが静かで穏やかな場所だった。

「クマちゃんありがとう。私のことを気にかけてくれて」

 見ると、リリーがいる。

 非常にかわいらしく、翔一に微笑む。

「リリーちゃん、今どこにいるの、心配クマ」

「私のことは探さないで」

 寂し気に微笑むリリー。

「僕が絶対助けるクマ」

「絶対なんていわないで! 絶対なんてないわ……」

「でも……」

「いいの、その気持ちだけで、私……」

 ぽと、ぽと、

 リリーは涙を落とす。

 翔一は焦って手を伸ばすが、リリーの消えそうな細い体には届かない。

「リリー!」

 翔一は叫ぶが、彼女は背を向けたままだった。


 いつもの海岸にいる。

 目を覚ました時、翔一は砂を掴んでいた。

「わかっただろう、正義のためには悪の生態も知らずにはいられない。綺麗ごとだけじゃ、悪には勝てないんだ」

 ダーク翔一が黒い道に手招きしている。

「安易にあの道に入るのは危険よ」

 いつもの女。

「しかし、ダーク君の力で魔王と戦えたのは事実クマ。異界の知識、邪悪の技、そういったものも無しでは本当の悪とは戦えない」

「約束して、それには取り込まれないと」

「名前も知らない人と何を約束したらいいクマ?」

「私の名前はアリア、翔一、私と契約して正義のために戦うと誓いなさい」

 女が初めて名を名乗る。

「……ここであなたを否定するのは簡単だけど、初めて、あなたの焦りを感じる。僕がここまでレベルが上がると思ってなかったクマですよね?」

「ええそうよ、魔王を倒すほどの存在になるなんて思ってなかったわ。だから、あなたに力を与えると同時に制限を加えたいの。あなたが悪に墜ちたら世界は絶望しかない」

「わからないけどいいクマ。世界は救いの欠乏に涙を流し苦しんでいる。僕が少しでも一助になるなら、迷いはしない」

「ありがとう翔一。では……」

 アリアは翔一に口づけをする。

 何か変化があったのだろうか。

 翔一にはわからなかった。

 翔一は黒い道を見つめてから進む。

「レベル九です」


 田舎の道を行く四人。

 二人は狼に乗り、姿は人間ではない。子熊とゴーレム

 残りの二人は女性で、乗用山羊に乗っている。黒髪の美女と幼い少女だった。

「あれから一週間か。もうちょっと貴族生活したかったぜ」

 じゃらじゃらと高価な装身具に身を固めたフロール。

 乗用狼のダークファングも迷惑そうだった。

「フロールさん、よっぽど成功したクマだね」

「ああ、意外と楽しかったぜ、冒険者生活。凄く儲かったしな。見ろよこの弓、魔力弾で実際の矢が無くなっても攻撃できるうえに、自動追尾で遮蔽物の後ろの奴も倒せる。しかも、電撃と炎の魔力までも籠っているときた」

 フロールが見せた弓は確かに非常に強力な魔力を持っている。

「すごいクマ。おいくら万円したクマ?」

「金貨二万五千枚だ。そして、このネックレスはなんと三万枚! そして、この指輪は……」

 フロールの成金自慢が始まる。

「所持品自慢って、金持ちのお坊ちゃんみたいクマ」

「フ、奴らとは違う、俺にはそれを持つ資格があるってことさ」

「でもダークファング君が重いっていってるクマ」

「そうだな、実は俺もちょっと重いと思っていたところだ。翔一、持っててくれないか」

「いいクマ」

 結局、フロールがジャラジャラと持っていた超高価な装身具は翔一が持つことになった。

「サンダーアッシュは重くないのか」

「精霊界にある重量は僕が背負うだけで、それ以外に実際の影響はないクマ」

 翔一はサンダーアッシュの頭を撫でる。

「なんかよくわからん話だが、大丈夫ならそれでいい」

 翔一は宮殿を出た後、デリクと別れ、フロールと合流する。

 宮殿その他各所が大騒ぎとなっていた。

 皇后、宰相、その他重臣。そして、街のそこかしこで悪人やそうでもないが重要な人物たちが、謎の怪死を遂げたのだ。

 皇帝は緊急事態宣言を行い、首都警備隊は犯人の捜索を行っている。

 フロールは翔一たちが戦いを始めた頃、既に、逃げる算段をしていた。

 信用できる者たちと連絡を取り、荷物を纏める。

 翔一と合流した直後に宿を出て、全員で脱出を図った。彼らが出た数時間後には首都は戒厳令になる。関所は魔法の連絡で急きょ閉じられたので一般の旅行は南方に抜けられなくなった。

「ベアトリスさんとは会えなかったクマ。挨拶ぐらいしたかったクマ……」

「簡単な手紙だけ送ったよ。信頼できる人に渡した。俺たちは行くってね」

「トム、ディッキー、バリーの兵士さんたちにはお世話になったクマ」

 首都近辺から逃げるに、彼らの手助けがあった。

 三英雄と呼ばれる彼らは、短い期間で出世し、部下を率いる身分になっていた。フロールの自警団とも関係良好だったのだ。

 それ故に、脱出は難なく終わった。

 しかし、有力な容疑者を捕らえられない帝国官憲は首都近辺にも戒厳令を敷く。

 翔一たちは数日間は全力で逃げることになった。

 そのためもあるが、一行は黒龍山地の『奇跡の里』を目指すことになった。

 その廃墟は極端な僻地ゆえに、捜査の手が及ぶ可能性が低いからだ。

 もちろん、二番目の目的地でもあった。


「キーキー、『奇跡の里』に行くにはハイエルフの魔法陣からテレポートして行くのが近道だ。ハイエルフがいれば問題なくだれでも利用できる」

 小瓶のグロウギルが教えてくれる。

「魔法陣はどこにある」

「これも隠されたスポットがあるのだ。ハイエルフなら自動的にわかるだろう」

 どうやら、その近くに行くだけでハイエルフだけに見える案内があるらしい。

「グロウギルを捕まえてきたのはよかったな。こんなにお役立ち生物になるなんて思わなかったぞ」

 フロールが面白そうにお手玉にして遊ぶ。

「やめろ! やめろ!」

 叫ぶグロウギル。 

 フロールは飽きると、翔一に返す。

「リリーという少女を探さなくていいのか」

「リリーちゃんはもうじたばたしても見つからないと思うクマ……天罰騎士団が怪しいけど、南方の関所が開くまで……」

「そうだな。今無理をしても、結局、掴まって助けるどころの話じゃなくなる。話を聞けば、直後に助ける以外道はなかった。お前の責任じゃない」

「……」

「気にするな。機会があれば逃さない。それだけでいいんだよ」

 フロールは翔一のふさぎ込む気持ちを察して、慌ててフォローする。

 ふと、振り返ると、ダナはうつらうつらしている。

 涼子と一緒に山羊に乗っているが、彼女に体重を預けて居眠りしていることが多かった。

「ダナは最近寝てばかりだな。呪詛は弱まったんだろ」

 フロールは小声で聞く。

「呪詛は弱まったけど、魔王から直接呪詛を受けたクマ。その影響かもしれない」

 翔一は特大の毛玉お守りを作りダナに付けている。それでも、すぐにそれは満タンに膨れ上がるのだ。

 頻繁に瘴気を絞って対消滅させているが、ダナの現状維持以外にはならなかった。

 首都圏から黒龍山地までは広大な農地を横切ることになる。

 思った以上に人口は少ない。広大な平原が広がり、ほとんど人とも出会わない。

 翔一は人が来ると人間に変身し、フロールはフードを深くかぶって正体を隠す。

 交渉は主に翔一と涼子がやった。

「フロールさんの冒険者に来てもらえばよかったですね」

「あいつらは気のいい連中だ。来いといえば来るだろう。でも、俺たちは帝国の敵として追われる可能性がある。奴らに迷惑をかけたくない」

 目的地はそれなりにはっきりしているので、ほとんど街には入らなかった。

 野営で過ごす。

「デリクの作ってくれた地図に、ハイエルフの廃墟の街がある。これは山のふもとにあるので『奇跡の里』ではないが、そこから、そう遠くない場所に魔法陣があるのではないか。そう思う」

 フロールの推測、翔一もうなずく。

「街の中にない可能性があるクマ?」

「そうだ、緊急脱出装置、あるいは秘密通路と思えば、街中は目立つからな。敵に乗っ取られた街中にある魔法陣なんていずればれるだろう?」


 東に向かうほど、農地はなくなり、荒野が広がる。

 そろそろ、該当の地域についたころ、翔一は精霊界ポケットの掃除を行うことにした。

 野営準備が終わった時点で、毛布を敷いて、ガラクタを全部出す。

「なんだこれ、こんなに持ってたのか」

 フロールは呆れ気味。

「食料と水は最低限にして、他は予備の山羊君に積むクマ」

「宝石やら、アクセサリーやら俺が渡した以外もいっぱい持ってるんだな。なんだこれ」

 フロールは魔法の箱を見つける。

「それは宰相の部屋で見つけたものクマ。開かないクマ」

「鍵穴があるけど、どれ、俺がやってみよう」

 フロールが色々と挑戦するが、全く開く気配はなかった。

「あ、鍵束があるクマ」

「早くそれをいえ!」

 その鍵束は魔法の鍵束であり、箱に近づけると、自動で合う鍵が出てくる。翔一が差し込むと、箱は開いた。

 中から出てきたのは凍り付いた心臓。

 刃物で取り出した人間の心臓だった。

「なんだこれ、凍ってるくせに動いているぞ」

 フロールがつつく。

「何かの魔法アイテムだと思うクマ」

「涼子に分析してもらおう、生物医療関係は彼女の方が上だ」

 涼子に渡すと、じっと見ている。

 目がセンサーにもなっているのだ。

「生体として反応はあります。しかし、血液がなく、劣化が激しく血液を通しても通常通り稼働しないと考えられます。生き物の死肉と考えるのが妥当かと」

「臓器として使えないなら、ゴミだな」

「魔力とオーラが凄いクマ」

 翔一は思わず目を伏せたくなるほどのオーラを感じた。

「ならお前が持っておけよ」

 フロールは箱のふたをすると、翔一に渡す。翔一はポケットに放り込んだ。

 大して価値のないガラクタは捨てていく。

 用途不明でも魔力のあるもの、換金価値のあるものは残しておく。

「あ、何だこれ」

 フロールがネズミ捕りの籠のようなものを持ち上げる、何か入っているようだ。

「そんなもの拾ったことないクマ」

「宰相の部屋から持ってきた物じゃないの?」

 フロールはなんとなく箱を開ける。

 すると、突然、ババッという音共に、何かが飛び出してきた。

「蝙蝠クマ」

 空中に浮かぶそれは蝙蝠の羽を持っているが、しかし、胴体は邪悪なゴブリンのそれだった。

「なんだこれ、化け物じゃねーか」

 フロールが弓を構える。

「フフフフ、このあっしを解放したのが運の尽きでゲス。地獄の苦しみを味わいながら死ぬでゲスよ」

 邪悪な空飛ぶ小鬼は非常に素早い動きでフロールを翻弄する。しかし、

「ほい。捕まえたクマ」

 なんとなく、無造作に捕まえる翔一だった。

「うわ、食べないでほしいでゲス。クマさん私旨くないゲス!」

「想像以上に弱弱しい生き物クマ」

「死ぬとかどうとかいっていたな。このまま火にくべてやろうぜ」

 フロールがスコープの奥に地獄の闇を映す。

「面白そうクマ」

「うわー、やめてー殺される!」

 じたばたする小鬼。

「あ、それ、グレムリンよ。色々便利に使えるんだよ」

 ダナが珍しく声を上げる。

「へえ、どうするクマ」

「見てて、呪文かけて使い魔にするんだから」

 ダナが、何やら魔法陣を描いて呪文を行う。

 翔一はグレムリンを糸で縛ると、魔法陣の上に置いた。

 やがて、何らかの魔力がグレムリンの魂を縛ってしまった。

「おお、凄いクマ。これからこいつはどうなるクマ?」

「もう私の下僕よ」

「ハイわかりました。あっしの名前は……」

「チビ鬼よ」

「へ、あ、ハイ」

「私の名前はダナ。よく覚えなさい。あんたはこれから周辺を偵察するの。異変があったら報告。私が呼んだら命がけで帰ってくるのよ」

「わかりましたダナ様」

 そういうと、大急ぎで上空に上がり、どこかに消える。

「逃げたクマ?」

「大丈夫よ」

 その生き物はかなり便利な存在だった。

 詳細な上空偵察を行い、事前に賊や魔物の配置や装備なども調べてくることができるのだ。

 結局、ほとんど戦やトラブルが起きることもなく回避し、黒龍山地の山裾に到着する。

「あっしには近寄れない地域があるゲス。目的地はその辺りかと」

 広大な無人の大地。樹木は少なく荒野が広がっている。

 岩がごつごつした崖の中腹にその廃墟はへばりつくようにあった。

「ここだ、あの廃墟は意味はない、単なる建物だ。あれを越えて見えない崖の道を通ると、魔法陣につく」

 グロウギルの言葉。

 翔一はどこまで信用していいのか疑問に感じた。元公爵の感性は利己主義で歪んでいるからだ。


 崖に張り付くように古代の階段を登っていく。黄色い崖の岩が眩しい。翔一達は動物に乗ったまま慎重に登っていく。

 崖の上にかなり広い岩棚があり、そこにみっちりと建物の廃墟がある。

 誰もおらずがらんとしているが、翔一は薄い影を見た。どうやらハイエルフの幽霊らしい。

 あまりに古い幽霊なので、形が無くなって魂の塊になっている。

「ここを真っ直ぐ行けば魔法陣に出る。途中、見えない透明の道があるが勇気を出して歩くしかない」

 グロウギルが厭らしく笑う。

 翔一はその言葉を聞きながら、幽霊に触ってみる。

 すると、幽霊はグロウギルの指す方向とは違う方向に行き、透明の道があるかのようにゆっくりと崖の壁面を歩いて行った。

「幽霊はグロウギルが示す方角以外に行ったクマ」

「幽霊? お前しか見えてないけど大丈夫なのか」

 グロウギルの道は一段低い位置に行くようだった。

 幽霊の道は一段高い。

「そんな道はない。俺たちは定期的にこの道を通って『奇跡の里』に行っていたのだ」

 グロウギルはイライラした口調。

「お前たちは何のために行ってたんだ。先祖の村といっても所詮は廃墟だろ」

 フロールが腕を組んで聞く。

「村の遺物を持って帰って金に換えていた。もう何もないぞ」

「まあそんなところだろうなお前はカスだ。……ということはグロウギルの道を行っても大したものはないということだ」

「じゃあ、幽霊さんの行った道に進むクマ」

 幽霊の道に行く。

 途中、道がなくなっている。しかし、透明の道があると推測していた。

 翔一はサンダーアッシュを降りて、透明の道にこわごわモフ足を乗せる。

 モフ。

 確かに、石畳の地面の感触があった。翔一は、前を見てすたすた歩いていく。

 動物たちは怖がっていかないので、ここからは人間だけで行く。

 ダナは生来肝が据わっているのか、翔一が行くのを見たら特にためらいもなく透明の道を歩いた。

 涼子は恐怖という感情を抑制できる、故にあっさり進む。

「うわーこわい。お前らよく平気で行けるな!」

 フロールは崖の壁面に手をかけつつ、本当にこわごわ進む。

「フロールさん、怖がってはダメクマ」

「俺みたいに想像力豊かで知能が高い人間は、こういうのは駄目なの!」

「たんにビビりでしょ」

 ダナが冷たくいい放つ。

「翔一、ワイヤーで俺をつないでくれ」

 翔一はワイヤーを伸ばしてフロールはそれを腕にセットする。

「いつも偉そうなのに、凄くかっこ悪いわよ、タマゴちゃん」

 ダナが呆れ顔。

 フロールはビビりまくりながら本当にゆっくり進む。壁面から手は離さない。

 特に落ちることもなかったが、透明の道を全員乗り切った。

「ふう、今までで一番恐ろしい罠だったな」

 フロールが汗? を拭く。

「ほとんど何の問題も起きなかったクマと思いますが……」


 透明の道の後には崖の中に入っていく洞窟が続く。

 ほとんど使われていないのか、厚く埃が積もっていた。

 フロールがライトをつける。ダナもライトの魔法を使った。

「自然の洞窟を何者かが加工したような感じだな」

「ハイエルフの秘密の魔法陣があるのよ」

 広い鍾乳洞があり、奥に台座がある。

 そこに魔法陣が描かれていた。幽霊が待っている。背の高い高貴なハイエルフの幽霊。

 ダーク翔一に話させる。

「お姫様が来た。お待ちしておりました、といっている」

「細かいことは聞けないクマ?」

「それ以外いわない。古い幽霊だ、細かい意識は消えているのだろう」

「グロウギル、コマンドワードをいえよ」

 フロールが小瓶を振る。

「たぶん、ここは違うワードだ、俺は教えられていない」

「はぁ、つかえねぇなあ」

 ダナは無言で魔法陣の上に乗る。何かエルフ語を発したが、発音が複雑で翔一にはよくわからなかった。

 魔法陣が光り輝く、起動したのだ。

「これで使えるわ。みんな乗って」

「貴様、何者だ。上古エルフ語が使えるのか?」

 グロウギルが目を剥く。

「よくわからないけど、思い出したの」

「RPGでよくあるだろ、伝説の勇者とかお姫様とかが謎の遺跡に行ったら、機能が回復するって奴だ。つまり俺たちは伝説。フッ」

 フロールが謎のイキリ雰囲気を出す。

「貴様だけは絶対違う」

「あぁ!? 何かいったかクソ虫」

 全員が乗るとどこかの空間へのゲートが開く、翔一たちは一人づつこわごわと入っていった。

 光のゲートを抜けると、そこは似たような鍾乳洞。

「あんまり変わらんな」

 しかし、すぐに出口が見えている。

 階段を降りて、岩の裂け目から出た。


 全員裂け目から出ると、立ち止まった。

 そこは非常に美しい高山地帯だった。ここはどこかの山の頂上に近く。

 眼下に山地帯が広がっている。

 晴れ渡る空。

 雪と草地。

 深い渓谷。

 壮大な景色に呆然として、眺める一行。

「これは凄い、大パノラマだな」

「本当に綺麗!」  

 ダナが目を輝かせる。

 風は冷たく強いが、清浄な空気だった。

「きれいクマ―! あの谷底に見えるのが『奇跡の里』クマ?」

 翔一が指さす先にカラフルで、瀟洒な集落が見える。

 目的地には来た。

 しかし、一行は大自然の美しさに呑まれて、すぐには動けなかった。




2020/7/1 読みにくい場所や改行ミスなど、若干、修正しました。

2020/7/4 冒頭の台詞をデリクの発言にしました。

2020/12/20 微修正しました。

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