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34 闇を割る

 宮殿は寝静まっている。

 衛兵は巡回しているが、翔一の隠密精霊に気が付かない。

 かなり強力な精霊なのだ。

「ここが宰相の部屋クマ」

「誰もいないと思う」

 デリク。珍しく自信がないようだ。

 鍵は普通のものだった。デリクが簡単に開けてしまう。

 部屋はかなり広い。

 宰相に割り当てられたスペースは相当なものなのだ。

「召使も何もいないね」

「宰相は孤独が好きだったみたいクマ」

 時折見かけた宰相の姿を思い出す。

 共回りなどを極力排除していたように翔一は思った。

 次の部屋に行く、翔一は大勢の匂いを感じた。

「気配はないけど匂いがするクマ」

 デリクがそっと開けると、ぎょっとすることになる。

 暗い部屋に数人の男女が突っ立っていたのだ。

 いずれも高価な衣装をまとった、地位の高い人物であった。

「皇后陛下、それに、他の人も大貴族だと思うクマ」

 彼らはよだれを垂らし、体をびくびくさせながら硬直している。

「何か呪詛がかかっているクマ……」

「聞いたことがあります。呪詛王は奴隷化する相手を快楽の虜にしてしまうそうです。たぶん、今彼らがされているのはそれなんでしょう」

「効果があるかどうかわからないけど、聖性祚物あげるクマ」

 翔一はデリクとミレーヌにネックレスを渡す。

 二人はうなずくと首にかけた。

「すごい強力な祚物だよ。ありがとう」

 ミレーヌはにっこりする。

 隣の部屋は狭く、雑然としていた。

 奥に執務の机があるが誰もいない。

 机の上に、無造作に美しい剣が置いてある。

「僕の『エルヴァルド』だ」

 光り輝く聖剣。

 翔一は眩しいくらいの光り輝くオーラを感じた。

「すごい剣クマ」

「確かに強い。しかし、これで奴を倒せないでしょうな」

「……」

 三人はざっと部屋を調べたが、リリーの手掛かりになるものはなかった。

 しかし、翔一は変な箱を見つける。

 鍵のついた小さな箱。

「魔法の箱ですな。鍵がないと開かないでしょう。箱がかなり強力なマジックアイテムです」

「オーラも凄いクマ。……悪人のアイテムなら没収するクマ」

「ついでです、この辺りの財宝も没収しておきましょう」

 デリクが回収した雑然としたアイテムを翔一は精霊ポケットに放り込むことになる。

「やはり、そのリリーちゃんのことは本人に聞くしかないと思うよ。あいつは自信過剰の男。聞けばペラペラしゃべってくれるかも」

 ミレーヌは剣が問題ないか調べながらいう。

「あの自己顕示欲ですからね、ありえます」

「でも、倒せないと、教えてもらってもここから逃げられないクマ」

「あいつの秘儀をどうにかしないと無理でしょう」

「秘儀?」

「あいつはいくら致命傷を与えても、自分の下僕にそのダメージを肩代わりさせることができるのです。今までは大したことのない地位でしたが、今は宰相。もしかしたら、帝国中の人間に肩代わりさせることができるかもしれない、倒せない可能性が高いのです」

 デリクが首を振る。

「宰相の地位を降りたらできるクマ?」

「その可能性はありますが……皇帝以外それはできません」

「頼んでみるクマ、ユアンおじさんなら、誠心誠意頼めば……」

「一時だけ解任とか、そんなのでもいいんですよ。形式だけでも。呪詛とはそういう形も重要なんです」

 デリクがアドバイスする。

「こんな文面でどうかな。『帝国歴○○○年○月×日、一時的に宰相テオドールの任を解く。呪詛を行った嫌疑が晴れるまでは自宅にて謹慎すること。地位の回復には御前会議の認定を得る必要がある……』後はここにサインしてもらう」

 ミレーヌがさらさらと文章を書く。字はあまりきれいではないが。

「奴は呪詛のマナを持つ者。呪詛の否定はできないかもしれませんね。それに、呪詛はかなり重い罪に問われます」 

 デリクはうなずく。

「じゃあ、ちょっと待っててほしいクマ」

 翔一はそれを受け取ると、急いで皇帝の寝所に向かう。


 時間が惜しいので、精霊を使って衛兵たちはスルーした。

 傍に控える近習武士たちには顔見知りなので、動物の気まぐれかなという顔をされただけだった。

 そっと、寝所に入る。

 皇帝は大いびきで寝ていた

「起きてほしいクマ」

 翔一がゆすると、皇帝はぼんやりした顔で起き上がる。

 今日は愛人はいないようだ。

「ああ、クマかどうした。まだ夜中ではないか。ゆっくり休め」

「お願いがあるクマ。無理は承知でお願いしますクマ」

 翔一は頭を下げる。

「お、やっぱり喋れるのではないか。街の噂は本当だったんだな。しかし、頼みとはなんだ」

「リリーが誘拐されて、その首謀者は宰相テオドールだったクマ」

「リリー?」

 皇帝も忘れているようなので、翔一はリリーのビジョンを送る。

「あ、ああ、あの娘か。あの子はどうしたんだ」

 皇帝はあっさり思い出す。

 彼は凡人に見えるが、皇帝になる運命を持つ特別な人間でもあった。呪詛王の力も効き難い。

「たぶん、酷い目にあわされたクマ。彼女に渡したお守りがこんなことに」

 翔一は毛玉お守りの引きちぎられた状態を見せる。

「ふうむ、しかし、なぜ宰相が……」

「気持ち悪いものを見せるからごめんなさいクマ」

 翔一は魔物になったグロウギルの小瓶を見せる。

「う、これは……グロウギルだな」

 さすがに老いた皇帝だけあって、動揺はしなかった。

「こいつは宰相が呪詛王魔王だということを白状して、呪われてこうなったクマ。そうだな、公爵?」

「はい、呪詛王の奴は何度も子供を渡して色々便宜を図ってやったのに、正体を人に教えただけで私をこのような姿に……頼む出してくれ。皇帝陛下お助けを」

 おぞましいグロウギルの姿にユアンは目を背ける。

「もうよい、わかった。宰相は解任じゃ」

「今晩だけでもいいクマ。この書面にサインを」

「うーん、さすがに紙にサインするのは重要なことだからそれはできんぞ」

 ペンを持つと怖くなるのだろうか。皇帝の手が止まる。

「今夜だけで明日の朝には破棄するクマ」

「明日頑張るから、今日は寝るぞ」

 大あくびをする皇帝。

 突然連絡が来る。

「翔一、言質でいいから取れ。眼鏡をかけろ、録音するから」

 耳のシールからフロールの声がする。

 翔一は眼鏡を無理やりかけると、皇帝にもう一度問う。

「宰相テオドールは呪詛者だから解任クマでいいんですね」

「ああ、そうだ、宰相は解任だ……」

 余程眠たいのか、むにゃむにゃいっている。

 そして、そのままぐうぐう寝てしまったようだ。

 翔一は頭を下げると、急いで部屋から出た。


 部屋に戻ると、デリクが屈伸をしている。

「ふう、ようやく動けるようになった」

 翔一は眼鏡を出す。

「これは会話を録音する魔法の装置クマ」

 翔一は皇帝の解任発言を再生する。

「何と本物なのか。これで奴は宰相ではなくなったな」

 デリクがニヤリとする。

「寝ぼけていってるだけだから、閣議でも開かれたらあっさり覆されませんか」

 ミレーヌが不安な顔。

「それでも、形だけでも皇帝が解任したから、奴の秘儀の体系は崩れたかもしれない。今はそれに賭けるしかないだろう」

 そこで、皆、押し黙る。

 そっと武器の準備を行った。

「何かが来るわ」

「これはこれは、ミレーヌではないですか。それに、懐かしい、デリク殿」

 明朗快活で爽やかな青年の声。

 部屋の外、宮殿の中庭東側。東側の穀倉地帯と黒龍山地を眺望できる絶景の場所に、漆黒の塊が浮かんでいた。

 一つの目だけが異様に爛々としている。

「呪詛王、魔王というべきか、久しぶりだな。今度もあなたを討たせてもらう」

 デリクが中庭に出る。

 聖剣の主二人も彼の後を追う。

 漆黒の塊が消え、美しい青年テオドールが待っていた。

「討魔のマナを持つ御仁が居られないようだが。今回も上手くいきますかな?」

 テオドールは皮肉をいう。

 ミレーヌは無言で聖剣『エルヴァルド』を抜く。

 翔一も『フェルシラ』を出した。

 赤い精霊を出して、喰らい、大型の熊になる。

「ほう、君は人獣だったのか。ああ、思い出したよ。一度見た。エパットに噛まれたのに奴隷になっていないのだよね。因果を消したので僕自身も忘れていたよ」

「リリーをどこにやった!」

 翔一は叫ぶ。

「リリー? ああ、また因果を飛ばしたからね。たぶん、ハイエルフの少女だろう。ええっと、どうしたのかな。そうだ、天罰騎士団だ」

「天罰騎士と何が関係ある!」

「……うーん忘れたよ。どうでもいいことだと思うのでね」

「どうでもいいなんてない! あの子はとっても可愛くて優しい子で、僕とユアンおじさんの友達だった!」

「ユアン、あのぼんくら。フフフ」

 テオドールは漆黒の剣を抜く。鞘を捨てた。青く光る美しい鞘。

(あ、あの鞘は……)

 翔一は鞘に見覚えがあった。

 しかし、それ以上考えている暇はなかった。テオドールは腕を鞭のように腕を伸ばすと、三人を薙ぎ払う。

 ミレーヌとデリクは回避し、翔一は正派剣術で受けた。

 翔一は吹き飛ばされる。

(なんて破壊力だ)

 聖剣でなければ剣は折れていただろう。

「おや、ハルベルトが来ませんねぇ」

「やつなら、そのクマさんが倒したよ。一撃でね」

 ミレーヌが神がかった速さで踏み込むと、魔王を一閃する。

 しかし、

「可哀想に誰かが死にましたよ」

 にんまり笑う魔王。

「死んだのはお前が邪悪な怪物と知っている直属の人間だけだ。しかも支配関係のない奴には秘術は効かない」

 ミレーヌはそういいながら、油断している魔王を連打で斬りまくる。

 翔一はフロールに頼んで再生してもらう。

「『宰相テオドールは呪詛者だから解任クマでいいんですね』『ああ、そうだ、宰相は解任だ……』」

「なんだそれは、異世界の装置だな」

 ギロッと魔王は怒りをあらわにして翔一を睨んだ。

「これでお前は宰相を解任された! ユアンおじさんはお前の正体を知ったんだ!」

「それがどうした。そんなもの、明日の閣議で覆してやる」

 魔王は剣を振り回して、翔一を打つが、あっさり躱した。

 その無駄な一撃の間に、ミレーヌにさらに何度も斬られる。

 魔王はさっと間合いを開けた。

「それでも、今は宰相じゃないぞ!」

 デリクが矢を連発する。魔王にぶすぶす刺さるが、痛くも痒くもないらしい。

「白虎一剣!」

 翔一は隙ありとみて突撃した。

 ミレーヌの速さにも匹敵する速度で魔王を斬る。

 魔王は剣を戻すのが間に合わず、左手でうけるが、腕ごと唐竹割に真っ二つにした。そのはずだった。

「ぐはぁ。なんだそれは、それも聖剣なのか」

 翔一は魔王の背後に出るが、魔王はまだ死ぬ気配がない。

 魔王の手下が死んだだけなのだ。

 黒い魔法の球を連発して撃ち込んでくる。ごろごろ転がりながら回避する翔一。

 何発か命中したが、毛玉お守りが膨らんだだけだ。

「この獣、呪詛に強いな」

 魔王のつぶやき。

 ぶすぶすっと、矢が顔に刺さる。左手で抜こうとしたが、左手はなかった。

 翔一の剣が斬りおとしていたのだ。

「馬鹿な、私が崩壊し始めている……」

 ミレーヌが魔王を真っ二つにする。しかし、まだ、そのダメージはどこかに飛んでいくだけだった。

 魔王の魔剣が器用に突き返されるが、ひらりと躱して距離を取る。

 デリクは、矢が無くなると、手裏剣を投げる。

 見事命中するが、魔王は素知らぬ顔だ。

 翔一も連打を浴びせ続けるが、魔王は平然としている。

「無駄だ、俺に直接に忠誠を誓う人間が何人いると思っているのだ」

 ふわっと浮かび上がる。

 魔王の漆黒の左手がズルズルと生えて来る。

「翔一、呪詛には呪詛の返しというものがある。呪詛は解かれたら呪った本人に向かっていくのだ」

 精霊界からダーク翔一の声。

「……」

「あいつは極悪人だ。あいつの呪詛で理不尽に殺された奴らの怨念は行き場を失っている。死霊共を召喚しろ、それが奴の呪詛の返しになる」

「そんなの呼んだことないよ」

「センターキャストは俺がする、お前は簡単でいいから魔法陣を描け、瞬速でやるんだ」

 翔一は、何か術を始めた魔王に対抗するように、高速で地面に魔法陣を描く。

 簡単な五芒星だ。

 ミレーヌは魔王に馬乗りになると、剣でズバズバ刺しているが、魔王は薄ら笑いを浮かべるだけだ。

 デリクは石ころを拾って投げている。なかなかの威力で普通でも大けがしそうな威力だが、魔王は無視して何かの術を行っている。

 ブオンとダーク翔一が具現化する。『名もなき祭祀書』を持ち、何らかの術を発動する。

「冥界の王よ、今、この者に恨みなす怨霊どもを解き放て。地獄のダイヤを捧げよう。さあ、ゲートを開けろ!」

 ダーク翔一は地獄のダイヤを粉砕する。

 すると、そこから異界の門が開いて、無数の怨霊が飛び出してきた。

「……因果を断て、今この者たちと我を」

 魔王の声が聞こえる。術をかけていたのだ。

 ダイヤの粉砕と魔王の術はほぼ同時だった。

 ミレーヌはきょとんとした顔をして、さっと地面に降りる。そして、剣をしまう。

 デリクも拾った石を見て、意味が分からないという顔をした。

「あれ、僕は何をしているクマ」

 翔一は自分が何のためにここにいるのかわからなくなった。

 ふと、足元を見ると、綺麗な剣の鞘がある。

 翔一は何気に拾うと、聖剣をそれにしまう。まるであつらえたようにぴったりと収まった。

「おい、翔一、しっかりしろ」

 誰かの声がするがここがどこかもわからない。

 ゲートは開き、無数の怨霊たちが湧きだしている。

 怨霊たちも行き場を失ったのか、中庭に充満していくだけだった。

「ハハハ、私と君たちの因果を切断しました。ここは平和に分かれましょう。また会う日まで」

 魔王は満面の笑みを浮かべる。

 美青年の顔が異常で気持ち悪く引き歪んでいた。

「見つけたわ! 私を呪ってる奴!」

 突然、場を切り裂くような少女の声。

 ダナだ。

 ブンブンという音と共に、光の矢のようなものが魔王を打つ。

「なに!」

 光の矢に貫かれて、動きが止まる魔王。

「ダナちゃん、彼が呪詛の元凶クマ?」

 翔一は怪訝な顔で聞く。

「そうよ、こんなに近くにいたら誰でもわかるわ。私の肩に食いついている奴。それがこいつ!」

 ダナが指さす先には美青年の姿を取る魔王がいた。

「怨霊どもよ、その男がお前たちの恨みの行き先だ。人を呪えば因果はまたつながる、因果を呪っても無駄だよな。自分で墓穴掘ったぞ、魔王」

 ダーク翔一の声。蔓延する怨霊たちはそれを聞いて、一斉に魔王に迫っていく。

「ち、鬱陶しい奴らめ」

 魔王は怒って群がる怨霊どもを払いのけるが、無数に湧く彼らは魔王に食い下がる。

「クソ、動けない」

 魔王が今まで殺してきた奴らが、怒りの塊になって、魔王に噛みつく。

 ほとんどダメージはないようだが、彼は動きが取れないようだ。

 デリクとミレーヌはキョロキョロしていたが、徐々に状況がわかってきたようだった。

「ああ、いつもの因果とばしを喰らったのか」

「そうみたい。じゃあ、僕たちはあいつと戦っていたんだね」

 ミレーヌは魔王を指す。

 東の黒龍山地から、薄く明るくなってきた。夜明けが近い。

 怨霊に噛まれ続ける魔王は、体がボロボロと崩壊していく。

「この私をここまで追い詰めるとはな、だが無駄だ。呪詛は不滅。人が人を呪う感情を持つ限り不滅だ」

「おまえ個人を倒すことは不可能ではない」

 ミレーヌが叫ぶ。

「だが呪詛は残る。それを教えてやる」

 崩れていく闇、ニヤリと笑う。

 ダナがうっと声を上げてしゃがみ込む。

 どこかで無数の悲鳴が上がった。

 大勢の死。

 大虐殺が起きたのだ。

「何をやった貴様!!!」

 デリクが激怒している。

「私の部下を皆殺しにした。これで対等だな」

 にんまり笑う。

 魔王は漆黒の巨人と化していく。

 纏わりつく怨霊たちも、悪のオーラの凄まじさに勢いが落ちる。

 一つ目の漆黒の巨人。

 黒い巨剣を持ち人々を打つ。

 ドゴォ! ドゴォ! と魔王の剣は土煙を上げて叩きつけられる。

 必死に躱す、デリクとミレーヌ。

 翔一は大地を打つ巨剣を躱しつつ、ダナを拾って大きな庭石の陰に隠した。

 ミレーヌは巨人を何度も斬るが、あまりに大きすぎて足元を斬るだけだった。

 ダメージは入っているが、巨人はたいして何も感じていないように見える。

「あの目を潰さないとダメよ。クマちゃんエアーエレメンタルに乗って」

 ダナがエレメンタルを召喚する。

 翔一はエレメンタルに乗った。エレメンタルは器用に敵の攻撃をかわせないだろう。

(一撃で決めないと……)

 十分な上空に上がった時点で、

「魔王、貴様を曙光の一撃、天照岩割剣あまてらすがんかつけんで倒す!」

「何をいっている」

 あざ笑う魔王。

 翔一は渾身の大型の赤い精霊を呼びジャンプした。

 上空で赤い精霊を喰った瞬間、巨大化する。

 人々の怒り、正義の希求。

 そういったものを纏いながら翔一は自分で思っている以上に巨大化した。

 剣を打ち下ろしながら、落下する。

「鞘のついた剣で我を打つか!」

 魔王の笑い。

 翔一は鞘で魔王を打つ、魔王はさっと魔剣で受ける。

 たわむ魔剣。

 鞘に敵の魔剣が食い込み、翔一の剣はそのまま抜けていく、敵の受けを使って鞘走らせたのだ。

 パキ!

 微かに魔剣の刃が割れる。 

 翔一は地面についた瞬間に大いなる力が沸き上がってきた。精霊界から太陽のような光。

 聖剣が光を激しく纏う。

 渾身の突きを敵の目に入れる。

 巨熊化していたので届いたのだ。

 それでも、魔王はとっさに魔剣で受けたが、魔剣は砕け散り、聖剣は根元まで深々と目を貫く。

 魔王は闇の隙間から光が入り込み、そのまま青く輝く光に貫かれたように感じた。

「光が、剣の隙間から……」

 聖剣をぐりぐりとねじる。魔王は動かなくなった。

 曙光が魔王を刺す。

 消滅していく漆黒の巨人。

「呪詛は、消えない」

 翔一の耳に、微かに彼の声が聞こえた。




2020/6/28~2022/12/01 微修正

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