表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/70

31 宮廷のクマ

 翌日から、翔一は宮殿で寝泊まりするようになった。

 ダナは養子ということもあり、チュペル家と宮殿の図書館を往復する。

 ある日の朝、翔一は皇帝に連れられて、宮廷に臨む。

 広間には大勢の家臣が並び、黒髪片目の宰相テオドールも控えていた。

 翔一は皇帝の傍らに座る。小さな子供用の椅子が用意されていたのだ。

「皇帝陛下、その熊は」

 宰相が怪訝な顔。

「この子はワシの友達だ。無害でかわいい奴だ。気にするな」

「あなた、そんな生き物を連れてくるなんて」

 豪華な衣装を着こみ、酷薄な目をした女が皇帝を睨む。

 これが皇后なのだ。

 思わずオーラを見た翔一はげんなりした。黒くて小さくて、消えそうなくらい弱い。心は弱いくせに、人を憎む感情だけは強いのだ。そんな雰囲気だった。

 皇帝は素知らぬ顔。夫婦などという親しさを感じさせない。

 様々な陳情と報告がある。

 翔一には嘘つきが多いような気がした。

 したり顔、作り笑いの下で舌を出しているような輩である。

「ご報告申し上げます。北部デイラン地方での激戦は我軍が連戦連勝。敵は砦を死守していますが、風前の灯火にございます。しかし、若干の兵力不足がございまして、三個師団の援軍を賜りたく……」

 北部の戦線、シンシア王国との戦争を行っている将軍の報告だった。翔一は彼の言葉に嘘があるように感じた。オーラは暗く引き歪み、極悪人特有の荒んだオーラだったのだ。

 たぶん、彼の指揮の元大勢の若者が命を落としている。

「皇帝陛下! シラード将軍の報告は間違っております。我軍は連戦連敗です」

 壮年の戦士風の男が突然前に出て膝まづく。

「無礼者! わきまえぬか!」

 宰相が叱責をする。

 下がれ、と皇帝はいいかけたが、翔一が手をモフっと握った。

「奴の話を聞けと?」

 ユアンは小声で翔一に問う。翔一はうなずいた。壮年戦士は白く輝くようなオーラだったのだ。

「いいたいことがあるのなら申せエルネスト将軍」

 ユアンは重々しく宣う。

「皇帝陛下、このような無礼な……」

 宰相はいさめようとしたが、皇帝の意思を否定することになると思い口をつぐむ。

「ありがたき幸せに存じます。現状、我が軍は敵陣地の攻略にことごとく失敗し、デイラン地方にわずかに入っただけで停滞しています。シンシア軍は必死の防衛を行っており、これ以上の攻撃は被害が大きすぎます。現に我が軍の死傷者が二万。既に敗北を喫したといえましょう」

 二万の死傷という言葉を聞いて、宮廷にどよめきが走る。

「二万の死傷というのは本当ですかシラード将軍」

 宰相が何か諦めたかのように問う。

「え、そ、その、つまり、それは事実でございますが、わが軍は確実に地歩を固めて……」

「砦を建設しただけではないか。敵の砦は一つも奪っておりませんぞ」

 エルネスト将軍が声を上げる。

 人々はひそひそ話し合う。

 シラードを批判する声がかすかに聞こえてきた。

 皇帝は意を決すると、

「宰相、シラード将軍をどうするべきか」

「シラード将軍、追って沙汰を出す。謹慎せよ。エルネスト将軍は軍を纏めて待機するように」

 宰相は事務的に告げる。

「しかし、宰相閣下、私は、あなたの……で……」

 シラードは何かいいかけて沈黙してしまう。二将軍は頭を下げて下がる。

「エルネストの首を取れ、今夜だ」

 宮廷のどこかから微かに聞こえる。

 翔一の動物の耳は小さなつぶやきも聞き逃さない。


 その一幕からしばらく、小さな案件が続く。何かの建設許可や、農業振興の予算の話……等々である。

 若干、暇な話だなと思いながらも、翔一は彼らのオーラを見つづけた。

 嘘に引き歪んだ魂を持つ輩は信用しないように、皇帝の手を握る。

 皇帝は最初は戸惑っていたが、翔一が不満を持つ相手は、概ね碌でもない人間だと看破したのか、正論を吐く人間の提案だけを承認するようになった。

 それが宰相の思惑とは違うのか。宰相は翔一を睨みつける。

 翔一は動物の振りをしてそ知らぬ顔をした。

「孤児院の予算を増額して頂きたく……」

 痩せて貧相な老人が来る。

 彼は公立孤児院の院長である。

 翔一はぞっとした、彼の後ろには大勢の子供の幽霊が立ち並び、彼を睨みつけている。

「子供たちを助ける仕事です、陛下御許可を」

 宰相はさわやかな笑顔で促す。

 翔一は手を握って首を振った。

「何故だ、よいことではないのか」

 皇帝も怪訝な顔をした。翔一は思わず観相精霊を飛ばす、院長の後ろに立ち並ぶ、恨みを持った子供たちの群れの映像を。

 皇帝はショックを受けたような顔をした。

「待て、この件は追って沙汰を出す」

 皇帝はそう述べるだけにとどまった。


 それ以降は可もなく不可もないというような小さな陳情が続き、閉廷時間が迫ってくる。

 その日の最後の謁見者に人々のどよめきが起きる。

 宮廷は午前中だけである。

 昼前、閉廷の直前に高価な鎧に身を固めた一団がやってきたのだ。武器は持っていない。

「勇者一行のお成り!」

「なんと! 現代の英雄じゃないか」「素晴らしい鎧だな。魔力の無い人間でも力を感じる」「勇者殿はあの白い鎧の男か」「お供たちも伝説の英雄ばかりですぞ」

 人々が興奮した声で噂する。

「先進国会議公認勇者ヴィック・カース様、戦士スレッソン様、魔法使いゲオルギーネ様、僧侶エンケ様。第十回天罰騎士団団長エウヘニョ様」

 係りの者が身分を読み上げる。

 四人の手練れ冒険者と天罰騎士団団長は頭を下げる。

「皇帝陛下に相まみえまして恐悦至極に存じます」

 公認勇者ヴィックは膝まづき頭を下げる。

「その方らに、イスカニア帝国より下賜するものがある」

 宰相はそういうと、彼らに翔一の持っている身分証と同じものを渡す。

「これは?」

「帝国内、宮廷問わず、身分を保証する証である。天罰騎士団団長は既に持っておるな」

 酷薄そうなエウヘニョはにやりと笑ってお辞儀する。

「天罰騎士団は午後から出征式を行い、南方の魔禍、ガルディア、レイド王国近辺の魔を討ち滅ぼす遠征に出立いたします」

 宰相が高らかに宣言する。感謝や感動の声を上げる人々。

「我ら一行は天罰騎士団と同道し、魔を打ち払い、人々の憂いを祓う所存です」

 勇者は翔一を見て怪訝な顔をしていたが、慌てて、宰相の言葉に続く。

「うむ、ご苦労。活躍に期待しておる」

 皇帝はそう述べると暇そうな顔をする。

 去っていく彼らを翔一は霊視した。勇者一行は恐ろしく強いオーラを持っている。確かに腕前は確かなのだろう。だが、不思議と荒んだ空気も持っていたようだ。特に勇者は大きくねじれていた。尚、天罰騎士団団長のオーラは弱く暗く引き歪んでいる。

 翔一は彼らが正義の味方なのだろうかと疑問を感じた。しかし、正義のために戦う全ての人間が白くてきれいなオーラを持っているわけではない。当然、その逆も然りである。正義と信じて悪事を行う人間も多いのだ。

 勇者一行が視界から消える直前、翔一は小さな光を見た。勇者の手に光っているものがあった。

(黄金の指輪……?)


 宮廷が終わる。

「やれやれ、宮廷なんぞいつもこんな感じだ。何が正義やら悪やらワシにはわからん。どうせどう判断しても大差がないのだ。宰相や家臣がこっそり後から変更したり無視したり」

 ため息をつく皇帝。

「……」

「でも、今日は面白かったぞ。クマよ、お主不思議な力を持っておるな。今後もわしに力を貸してくれ」

「皇帝陛下、昼食は大臣たちと会食、その後は天罰騎士団の出征式を見学することになっています」

 執事がやってきて、予定を一方的に報告する。

「それが終わったらクマと遊ぶ。宰相に伝えておけ……それと、そうだ、北部遠征軍の被害と孤児院の調査も宰相に命じるのだ」

「御意」

 執事はそういうと引き下がる。

 食事は別々だったが、出征式には翔一もついていった。

 宮殿の東側は練兵場になっており、そこには広大な広場。一万近い軍勢が並んでいた。

 彼らはイスカニア帝国だけではなく、さまざまの国から魔を討伐するという名目で集まった戦士たちだった。

 装備はかなりまちまちである。立派な重装備もいれば、棍棒以外持っていない若者もいる。

 彼らの目的は魔の討伐だけではなく、遠征によって略奪をし、金持ちになるという正義とはかけ離れた理由の人間も多かったのだ。

 騎士団はローヴィエの神官戦士や僧侶といった者たちが指揮している。

 翔一は背が低いので広場を見下ろすバルコニーから彼らが見えなかったが、気を利かせた誰かが小さな箱を貸してくれる。翔一はそれに乗ると何とか騎士団の全景を一望できた。

「イスカニア帝国皇帝陛下、シンシア王国、ルート大公国……」

 スポンサーの国家や組織の名が読み上げれられ、彼らが国際的な義勇軍である事を告げる。

「『盲目の天使』を掲げよ!」

 人々が叫ぶと、御神輿のようなものが現れる。大型の車輪が付けられ、馬で引ける祭壇馬車だ。

 その上に女性の像が儀式的に設置される。

 像は目隠しをした天使が鎖で柱に縛り付けられている形である。その天使から伸びた鎖が、神輿を引く者たちをつなぎとめている。何かの象徴なのだろう。

 天使像からは、不思議と、息づくような力を感じる。

 服を着て、生き物のような彩色が施されていた。

 しかし、生きている何かではない。

 天使像の胸には木製の杭が何本も突き刺っさている。人間なら確実に死亡しているだろう。

「あの目隠しをした天使は『盲目の天使』といってな、ローヴィエの魔物に対する非情の決意を示すものなのだ。悪を討つためには小さいことには目をつぶり、己を犠牲にしててでも悪を打ち払う。あの天使はその決意の象徴なのだよ」

 皇帝が嬉しそうに翔一に教えてくれた。

 皇帝の目は翔一を息子として見るように感じる。

 翔一はうなずいた。

 天罰騎士団には勇者一行も合流しているようだ。見覚えのある派手な冒険者の姿も見えた。

 式典が終わり、南に向かって静々と進んで行く。

 沿道は意外と静まり返っている。庶民は関わり合いたくないのだろうか。

(クマちゃん)

 翔一は何か声が聞こえたような気がした。


 その日の夜、翔一はエルネスト将軍の後ろにいた。

 彼の匂いをたどり、何とか彼の寝所を突き止めたのだ。

 隠密精霊の強力なものを呼んで纏う。誰も気が付くことはないだろう。

 将軍と配下数人が夜景を見るためか、外に出ている。

「帝国はここから見ると安泰のように見えるが、いつ滅んでもおかしくない状況だよ」

 エルネストは腕を組み夜景を眺める。

「皇帝陛下は君側の奸に惑わされています。しかも、シンシアは我が国を虎視眈々と狙っています」

 配下の一人が述べる。

「おいおい、声に出してはならんぞ」

 別の配下が彼をたしなめる。

「明日、早朝にはここを出る。陛下の裁定があったのだ、軍に子細を報告せよ」

「は」

 三人の武人は瀟洒で眺めの良いあずまやにいたが、その小さなあずまやを取り囲むように、人の気配があった。

 翔一は十人くらいだと感じた。

 消音と透明、この二つの魔術を使っている。しかし、オーラは隠しようがない。

 刺すようなおぞましい臭いがした。

(この臭いは……毒!?)

 翔一は聖剣を精霊界から出す。久しぶりだった。青い発光は消した。

(手加減できる状況じゃない!)

「何奴! 暗殺者か!」

 無言で将軍たちを取り囲む黒衣覆面の暗殺者たち。動きがい。訓練されていた。

 翔一は全力疾走で彼らにとびかかると、一気に三人を斬り倒した。

「は」「ぐふ」

 殆ど声も立てずに死ぬ。そこまで訓練をされているのかもしれない。

「将軍を守れ!」「狼藉ものだ!」

 将軍の配下が叫ぶ。

 しかし、守りに飛び出してくるものはいない。乱戦が始まる。

 翔一は小柄で動きが異常に早い。夜目も効く。

 暗殺者たちは暗闇の中、なぜ自分が死ぬのか理解できずに倒れて行った。

 青く光る剣の煌めきを見たのが彼らの最後の記憶になった。

 三本の毒付きの短剣が飛んできたが、当たっても何も変化がない。胸の毛玉お守りが膨れただけだ。被害を呪詛に変換して吸い込んだのだ。

 毒が効かない事実に驚いた顔をしたまま、翔一の剣によって暗殺者は胸を斬られて絶命する。

 将軍と部下は必死に守りを固めていた。

 一人は毒を喰らって青い顔になっている。

 翔一は後ろの奴らを全員倒したので、将軍に食い下がる奴らを一気呵成に叩きのめした。

 彼らは最後の最後まで将軍を殺すために身を捨てて襲っていたが、翔一の連打の前に即座にものいわぬ骸になる。

「お、お主は、陛下の熊……」

 血塗れで青い剣を持つ翔一に気が付いて、エルネスト将軍は絶句する。

 配下の一人が守るように割って入るが、将軍は彼を制する。

「この子熊は我らを助けてくれたのだ。礼をいうぞ」

 将軍の言葉を聞いてうなずく翔一。

 翔一は毒で死にかけている配下の一人に、治癒精霊と解毒精霊を送る。怪我は大したことがなかったが、毒はかなり強烈だった。

 しかし、翔一の解毒精霊は非常に強力で、彼を素早く回復させていく。

「将軍、何故か、毒が消えて……」

「これもこの熊の力か、この毒はカーカサシルの毒だ。一筋の怪我でも死ぬという……」

 翔一は口に手を当てて、黙っててという仕草をすると、剣をしまって草叢に消える。

「このことは誰にもいうなということだろう」

 将軍のつぶやき。

「助かりました。しかし、なぜ護衛達は出てこなかったのか」

「残念ながら、殺されたのだ。信用できるものがいるから、彼の元で今夜は過ごし、明日、急いで退去しよう」

「死骸はどうしますか」

「今は放置するのだ。味方のものもな。首謀者の奴が勝手に始末してしまうだろう。それに、ここは危ない、居場所が知れている。失敗したとわかれば次の暗殺者が来る可能性がある」

 エルネスト将軍はそういうと急いでどこかに消えてしまった。

 翔一は彼らが去ってから、暗殺者の幽霊を尋問する。

「我々は、ヘルベルトの配下。仔細は知らない。ただ、エルネスト将軍が目障りなので殺せと」

「ヘルベルトとは誰だ」

 ダーク翔一は幽霊を締め上げる。

「やめてくれ、喋るから。ヘルベルトは宰相テオドールの部下、隠密の頭だ」

「ヘルベルトはどこにいる」

「テオドール様の傍にいるが、普段は宮殿の地下、地下監獄にいる」

 宮殿は首都の北部の丘の上にあり、丘の内部は上古人が作った地下遺跡がある。その頑丈な石組みの上に現状の宮殿が建設されているのだ。

 幽霊たちは消失していく。地獄にでも行くのだろうか。今まで殺してきた人々の怨念が彼らを掴み、どこかに引きずりこむ。

「た、助けてくれー」

「自業自得だろ」

 ダーク翔一は冷たく突き放す。


 それからしばらく、翔一は皇帝の傍らで一緒に宮廷に出るようになった。

 大勢の人を見て、嘘や自己本位だけの連中と、本当に民を思って皇帝の前に出る人間との差がわかるようになってきた。

 ゆがんだ奴らの意見が全部間違っているわけでもないが、やはり、必ず自分が得をしたらそれでいいという嘘が隠してあるのだ。

 心が読めるわけではないが、歪んたオーラの人間の言葉はよく考えるとおかしなことが多い。

 最も、言葉爽やかで嘘が多いのは宰相だった。

 悉く、間違った奏上は宰相と何か絡みがあり、翔一が皇帝を止めるたびに、宰相の憎悪は翔一に向かうようだった。

 しかし、皇帝は翔一のことを余程気に入っているのか、いつも一緒にいる。

 結果論ではあるが、宰相は翔一に手が出せなかった。

 皇帝は複数の愛人がおり、翔一は彼女達とも仲がよかった。


 その日は、皇帝も忙しいのか居らず、翔一は皇帝の愛人達と過ごしていた。

 美女たちは動く子熊がお気に入りの様子で、しきりに抱っこしたり、撫でたり、一緒におやつを食べたりする。

 彼女達にはスタイリストのベアトリスが服を売りに来る。

「あら、クマちゃん。今日もご機嫌ね」

 翔一がお気に入りのタコ神像で遊んでいると、ベアトリスがやってきた。

 彼は返事もしないが、ベアトリスは勝手にしゃべる。

「そうそう、以前噂になった孤児院の院長だけど、逮捕されたわよ。子供を大勢殺していたんだって。殺人鬼だったのよ、最悪よねー。院長はあの宰相が推挙したの。それに、シンシアと和平交渉もしているけど、元々、開戦を望んだのは宰相なのよね。戦死者遺族たちは公然と宰相を批判しているわ。人々は宰相の才覚を疑い始めているの。瓦版でも宰相批判書くと売れるみたい。それに比べて皇帝の評価は上がってきたわ。小さいけど、よくなってることが増えてきたから」

「……」

「リリーって女の子のことだけど、よくわからないわ。ハイエルフのことはちょっと外からでは調べられないのよ。でも、西区の病院にはいないわね」

 翔一は彼女にリリーのことを調べてもらうように観相精霊を送っていた。

「……」

 翔一は心配になる。

「フロールタマゴは元気よ。ヤクザ組織を三つも壊滅させたのよ。びっくりよね。今はもうちょっとマシな自警団があのタマゴの配下になって街を守ってるわ」

「……」

 翔一は作っておいた毛玉お守りをベアトリスに渡す。渡した瞬間に、使い方を観相精霊のビジョンで教える。

「……え、ええ、悪いことはこれにたまっていくのね。そして、膨れ上がったら、清流で絞ると……ありがとう。大事に使うわ」

 フワフワの毛玉を撫でるベアトリス。

「あ……そういえば、以前、同じものを拾ったわ」

 ベアトリスは何か思い出したかのように、ウエストポーチから同じものを出す。

 翔一は手に取る。

 今ベアトリスに渡したものと一緒だ。しかし、紐が引きちぎられていた。

 翔一は匂いを嗅ぐ。

 リリーの優しい匂いがした。


 そして、血の匂いも……。

 

「リリー!!」

 翔一は大声を出した。

「え、喋ったの?」

 ベアトリスは少し驚く。

 そして、翔一の声を聞いて数人の美女たちがこちらを向いた。

 翔一はいてもたってもいられなかった。

「待って、どこに行くの!」

 女性たちの声が聞こえたが、翔一は部屋を飛び出した。

 テラスから中庭へ入る。

 翔一は四足歩行になると、ダッシュで駆けた。

 彼がこの状態になったら、人間で追いつくことはできない。

 ハイエルフ領へ跳ぶように向かった。




2020/11/29~2025/2/2 微修正

いつも評価ブックマークなどありがとうございます。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ