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白兵戦まであと何マイル?

|º▿º*) 今回はゼファルス領の騎士長アインスト&エリザと、リグシア領の騎士長ヴァルフ&フィアナのお話です。

 暫(しば)しの時を遡(さかのぼ)り、騎士国の軍勢が皇統派の一角と戦端《せんたん》を開いた直後……


 先陣を切っていたゼ(・)フ(・)ァ(・)ル(・)ス(・)領(・)軍(・)の騎士長アインスト・レンベルクは薄く微笑み、斜行《しゃこう》する自騎《じき》に照準を追尾させていた砲撃騎のうち、片方が爆炎に包まれる光景を眺《なが》めていた。


『あの稀人(まれびと)、やはり信頼できる』


 突発的な援護射撃を同盟関係にある騎士王(クロード)らの仕業《しわざ》と考えながら、素早くベガルタL型を左斜めに飛び込ませつつも、中型盾の裏から引き抜いたナイフを右斜め上空へ投擲(とうてき)して地面に伏せ込む。


 傍(はた)から見れば滑稽(こっけい)だが、落下までの数秒間に残存する敵騎《てっき》が奔(はし)らせた魔導砲の紫(・)電(・)は大きく逸(そ)れて、属性魔力の付与で “極度に偏《かたよ》りのある荷電状態” となった魔法銀《ミスリル》製のナイフを射抜き、騎体《きたい》に深刻な影響が生《しょう》じない範囲で側雷撃を発生させた。


『流石《さすが》は筆頭魔導士のエリザ殿ですね』

『即座の対応、見事の一言に尽《つ》きます』


『初見(しょけん)で雷属性に気付けたのとアインストの技量、あとはニーナ様のお蔭(かげ)です』


 僚騎(りょうき)の称賛《しょうさん》に謙遜《けんそん》した鳶色(とびいろ)髪の女魔導士は領内の主要施設(インフラ)に対して、博識な領主令嬢が “避雷針” なる物の設置を指示した折(おり)、先行放電(ストリーマ)の現象に関しても聞き及(およ)んだ経験がある。


 偶々(たまたま)、扱える魔法の属性が水(・)と雷(・)だったので興味深く拝聴《はいちょう》して理解を深めた結果、彼女が考案した威力の高い直雷撃を避ける誘導体の精製法と、側雷撃を凌(しの)ぐ魔法障壁の併用は防ぎ難い雷撃魔法の対策として魔術師らに広まっていた。


 巨大騎士(ナイトウィザード)で実践する場合は単(・)属(・)性(・)の魔法しか搭載できないため、雷属性の魔導核を埋め込まれている事が前提条件となり、他属性の魔法による障壁は張れないので危険極(きわ)まりない。


『タイミングとか際《きわ》どいから、もう御免被(ごめんこうむ)りたいけど……』

『件(くだん)の補助魔導核とやらが完成したら、話は別だがな』


 徐(おもむろ)にアインストが言及したのは出向させているジャックス技官らを通じて、騎士国から自領に齎(もたら)された研究開発中の新技術であり、実用化すれば騎体性能を一段階引き上げてくれるはずだ。


 密かな期待を抱きつつも魔法術式の構築をエリザに頼み、彼は歴戦の騎体《きたい》と共にベガルタL型を通常魔法の有効射程まで踏み込ませて、着実な効果を狙う相手方との我慢比べ(チキンレース)に興じていく。




 先に動いたのは “滅びの刻楷(きざはし)” に属する異形《いぎょう》と交戦した経験が少ないリ(・)グ(・)シ(・)ア(・)領(・)軍(・)で、陣頭指揮を執《と》るヴァルフ・ベルガーの号令に前衛組の騎体《きたい》が従い、一斉に豪焔弾やら連風刃などを撃ち放った。


 相対距離にして約600mでの第一射は次を意識したものだろうが、多少の距離があるため中型盾の突破は儘(まま)ならず、受け流されてしまえば有効な損傷《ダメージ》を与え難(がた)い。


『ちッ、効果が薄い! 前衛は第二射の準備、後衛は連中の動きを見逃すな!!』

『『『承知ッ!!』』』


 悪態を吐いた精悍《せいかん》な武人はすぐさま現状に対処するも、人工筋肉経由で間接的に繋がる魔導士フィアナは焦《あせ》りを感じたのか、グラディウスMr-Ⅱの後部座席から静かに語り掛《か》ける。


『エルネア達の言ってた通り、決め手は物(・)理(・)なのかもね』

『だが、事前に与えた些細《ささい》な破損が勝敗を分けるのさ、個人戦でも集団戦でもな』


 常日頃から考えている持論を口遊(くちずさ)み、いつもの雰囲気をヴァルフが纏(まと)わせたところで、300~360m の距離に迫《せま》ったゼファルス領軍の複数騎が片腕を突き出す。


 秒に満たない刹那《せつな》の時間を稼《かせ》ぐため、判断を委《ゆだ》ねられていた後衛組の魔導士らが呼応して、騎士達が身構《みがま》えさせている乗騎の両掌《りょうてのひら》より防御魔法を発動させた。


 次の瞬間、自陣の手前に複数本の巨大石柱(ストーンヘンジ)が瞬時に聳(そび)え立ち、隙間を埋めるような半透明の浮遊障壁が幾つも顕現(けんげん)して… 受け止めた投射系の攻撃魔法で破壊される。


 石礫(せきれき)が近くにいた騎体の装甲を傷つける傍(かたわ)ら、水平に奔《はし》る稲妻が前衛組の一体を穿(うが)ち、側雷撃で右隣にいた僚騎(りょうき)の左半身も蒸気爆発させた。


『ッ、護りが抜かれたのか!』

『それでこの威力かよ!?』


『…… 魔女エリザの “裁きの雷(ジャッジメント)”』


 規格外の効果に後衛組の者達やフィアナが息を呑み、皇統派の内部で帝(・)国(・)を(・)蝕(・)む(・)女(・)狐(・)の右腕が冷静沈着な騎士長なら、左腕だと噂《うわさ》される才媛《さいえん》が編み出した固有魔法の名称を呟《つぶや》く。


 従妹の魔導士から伝わってきた驚きには同意すれども、リグシア領軍の騎士長たるヴァルフは動揺を見せる訳《わけ》にいかない。


 苛烈な攻勢を凌《しの》いだ後、前衛組の行動を阻害しないように術者らの手で砂礫(されき)化されて大地へ還《かえ》る石柱の先、数秒も経《た》てば剣戟《けんげき》が届く位置まできたゼファルス領所属の巨大騎士《ナイトウィザード》を睨《にら》み付ける。


『第二射、放てッ!!』


 果敢な指揮官の声に応《こた》えた十数体のグラディウスが魔法射撃を敢行するのに合わせて、斃(たお)された前衛の躯体越《くたいご》しにナイトシェード・羅刹も四本腕を構《かま》え、すべての掌《てのひら》から豪焔弾を解き放つ。


『借りは返させてもらうぞ、女狐……』


 本侵攻に於(お)ける副官レオナルドの信念を示すかの如《ごと》く、燃え盛る火球は僚騎(りょうき)の攻撃で防御魔法による浮遊障壁を剥《は》がれた二体のベガルタに着弾して、燐光を纏(まと)う盾ごと左腕や脚部を破砕したが… 大半の攻撃魔法は新兵装らしき、面妖《めんよう》な盾に阻(はば)まれてしまう。


 歩速を落としたのも束《つか》の間《ま》、数的不利など厭(いと)わず吶喊(とっかん)してくるニーナ・ヴァレル辺境伯の手勢を迎え撃つため、白兵戦に挑む各騎《かっき》が得物《えもの》の刃を正面に向けていく。


『総員突撃ッ!!』


 戦場に響き渡る命令を聞くや否(いな)や、先駆《さきが》けて前衛組に紛(まぎ)れ込んだ複腕騎が鉄槍の刺突を躱《かわ》しながら、猶(なお)もタックルなど試《こころ》みる相手騎体(きたい)の首元に右主腕の鉄剣を突き刺し、右副腕の短槍で黒塗りの胸部装甲も貫いて確実に操縦者らを仕留めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サブタイトルに吹きました!(*'▽'*) また、じっくり読ませて頂きますね。 こんな感想で申し訳ありませんm(_ _)m
2021/02/21 00:25 退会済み
管理
[良い点] 雷撃……避雷針…… つまり、アッザッムリーダーならなんとかなるかも [気になる点] そういえば 空自に旧式のF4でF15を模擬戦で墜したパイロットがいるとか 敵にもエースいそうですね …
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