表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/143

白兵戦まであと何マイル?

|º▿º*) 今回はゼファルス領の騎士長アインスト&エリザと、リグシア領の騎士長ヴァルフ&フィアナのお話です。

 (しば)しの時を(さかのぼ)り、騎士国の軍勢が皇統派の一角と戦端を開いた直後……


 先陣を切っていた()()()()()()()の騎士長アインスト・レンベルクは薄く微笑み、自騎に照準を追尾させていた砲撃騎の内、片方が爆散する光景を眺めていた。


『あの稀人(まれびと)、やはり信頼できる』


 突発的な爆発を同盟関係にある騎士王(クロード)の仕業と考えながら、念のためベガルタL型を横っ飛びさせると同時に右腕も振るい、中型盾の裏に仕込まれていたスローイングナイフを斜め上空へ全力で投擲(とうてき)する。


 (はた)から見れば滑稽(こっけい)だが、落下までの数秒間に残存する敵騎が(はし)らせた魔導砲の()()は大きく()れて、属性魔力の付与で()()()()にある軽硬化錬金製のナイフを意味なく射抜き、騎体に深刻な影響が生じない範囲で側雷撃を発生させた。


『… 流石は筆頭魔導士のエリザ殿ですね』

『即座の対応、見事の一言に尽きます』


初見(しょけん)で雷属性に気付けたのとアインストの技量、あとはニーナ様のお(かげ)ね』


 僚騎(りょうき)からの称賛に謙遜した鳶色(とびいろ)髪の魔導士は領内の主要施設(インフラ)に対して、博識な領主令嬢が “避雷針” なる物の設置を指示した(おり)先行放電(ストリーマ)の現象に関して聞き(およ)んだ経験がある。


 偶々、扱える魔法の属性が()()だったので興味深く拝聴して理解を深めた結果、彼女が考案した貫通力の高い直雷撃を避ける浮遊雷球の魔法と、側雷撃を(しの)ぐ魔法障壁の併用は防ぎ難い雷撃魔法の対策として魔術師らに広まっていた。


 巨大騎士(ナイトウィザード)で実践する場合は()()()の魔法しか搭載できないので、雷属性の魔導核を埋め込まれている事が前提条件となり、基本的な機能の応用で準備した誘電体を投じる他ない。


『タイミングとか際どいから、もう御免被(ごめんこうむ)りたいけど……』

(くだん)の補助魔導核とやらが完成したら、話は別だがな』


 (おもむろ)にアインストが言及したのは出向させているジャックス技官らを通じて、騎士国から自領に(もたら)された研究開発中の新技術であり、実用化すれば騎体性能を一段階引き上げてくれる筈だ。


 密かな期待など抱きつつも魔法術式の構築をエリザに頼み、彼は歴戦の騎体と共にベガルタL型を通常魔法の有効射程まで踏み込ませ、着実な効果を狙う相手方との我慢比べ(チキンレース)に興じていく。



 先に動いたのは “滅びの刻楷(きざはし)” に属する異形種と交戦した経験が少ない()()()()()()で、陣頭指揮を執るヴァルフ・ベルガーの号令に前衛組の騎体が従い、一斉に豪焔弾やら連風刃などを撃ち放った。


 相対距離にして約600mでの第一射は次を意識したものだろうが… 多少の距離があるため中型盾の突破は(まま)ならず、受け流されてしまえば損傷を与え(がた)い。


『ちッ、効果が薄い! 前衛は第二射の準備、後衛は連中の動きを見逃すな!!』

『『『承知ッ!!』』』


 悪態を吐いた精悍な武人はすぐさま現状に対処するも、人工筋肉経由で間接的に繋がる魔導士フィアナは焦りを感じたのか、グラディウスMr-Ⅱの後部座席から静かに語り掛ける。


『エルネア達の言ってた通り、決め手は()()なのかもね』

『だが、事前に与えた微細な損傷が勝敗を分けるのさ、個人戦でも集団戦でもな』


 常日頃から考えている持論を口遊(くちずさ)み、いつもの雰囲気をヴァルフが(まと)わせたところで、距離300~360mに迫ったゼファルス領軍の複数騎が片腕を突き出す。


 秒に満たない刹那の時間を稼ぐため、判断を委ねられていた後衛組の魔導士らが呼応して、騎士達が身構えさせている乗騎より防御系の魔法を発動させた。


 自陣の手前には複数本の巨大石柱(ストーンヘンジ)が瞬時に(そび)え立ち、隙間を埋めるような半透明の浮遊障壁が幾つも顕現(けんげん)して… 受け止めた射撃系の魔法で破壊されていく。


 石礫(せきれき)が近くにいた騎体の装甲など傷つける(かたわ)ら、光り輝く稲妻が前衛一騎を穿(うが)ち、側雷撃で右隣にいた僚騎(りょうき)の左半身も蒸気爆発させた。


『ッ、護りが抜かれたのか!』

『それでこの威力かよ!?』


『… 魔女エリザの “裁きの雷(ジャッジメント)”』


 規格外の効果に後衛組の者達やフィアナが息を呑み、皇統派の内部で()()()()()()()の右腕が冷徹な騎士長アインストなら、左腕だと噂される才媛が編み出した固有魔法の名を呟く。


 相棒の魔導士から伝わってきた驚きには同意すれども、リグシア領軍の騎士長たるヴァルフは動揺を見せる訳にいかない。


 前衛組の行動を阻害しないよう、術者らの手で即座に砂礫(されき)化されて大地へ還る石柱の先、数秒もすれば剣戟が届く範囲に迫ったゼファルス領の騎体を睨み付けた。


『第二射放てッ!!』


 果敢な指揮官の声に応えた十数騎のグラディウスが魔法射撃を敢行する最中、(たお)された前衛騎越しにナイトシェード・羅刹も四本腕を構え、全ての掌から豪焔弾を解き放つ。


『借りは返させて貰うぞ、女狐……』


 本侵攻に()ける副官レオナルドの信念を示すかの如く、燃え盛る火球は僚騎(りょうき)の攻撃で浮遊障壁を剥がれた二騎のベガルタに着弾して、燐光を(まと)う盾ごと左腕や脚部を破砕したが…… 大半の魔法は新兵装らしき面妖な盾に(はば)まれてしまう。


 歩速を落としたのも束の間、数的不利など(いと)わず吶喊(とっかん)してくるニーナ・ヴァレルの手勢を迎え撃つため、白兵戦に挑む各騎が得物の刃を正面に向けていく。


『総員突撃ッ!!』


 戦場に響き渡る命令を聞くや(いな)や、先駆けて前衛組に(まぎ)れ込んだ複腕騎が鉄槍の刺突を躱しながら、(なお)もタックルなど試みる相手騎体の首元に右主腕の鉄剣を突き刺し、右副腕の短槍で黒塗りの胸部装甲も貫いて確実に仕留めた。

皆様の応援は『筆を走らせる原動力』になります!!


『面白い』

『頑張ってるな』

『応援しても良いよ』と思って頂けたら


下記の評価欄から応援をお願いします。

※広告の下あたりにポイント評価欄があります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] サブタイトルに吹きました!(*'▽'*) また、じっくり読ませて頂きますね。 こんな感想で申し訳ありませんm(_ _)m
2021/02/21 00:25 退会済み
管理
[良い点] 雷撃……避雷針…… つまり、アッザッムリーダーならなんとかなるかも [気になる点] そういえば 空自に旧式のF4でF15を模擬戦で墜したパイロットがいるとか 敵にもエースいそうですね …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ