表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/143

戦況は絶えず移り行くものだ

「凄いものだな、こうやって見ると」

「本当だよね~」


 同意するレヴィアと巨大騎士(ナイトウィザード)の内部構造に感嘆かんたんを漏らせば、耳ざとく聞きつけたジャックス整備兵長がり向く。


「お、来たなレヴィアの嬢ちゃんにクロードッ」


 気さくな笑顔を浮かべ、機械油と鉄の匂いを(まと)いながら歩み寄ってきた職人気質の技師エンジニアだが… 筋骨隆々な団長殿にギロリとするどにらまれてしまう。


「うぉっほん、ライゼスの野郎みたいなことは言いたくないが…… 」


 流石さすがみなの前で王を呼び捨てるのが駄目なのか、それとも他国から派遣されている立場が問題なのか、分からないもののゼノスは言葉をにごして注意すべきだと伝えた。


「悪いな、陛下、元々住んでいた合衆国ステイツは封建的な支配階級がないし、こっちでは相応そうおうに苦労してるんだ」


所謂いわゆる、文化的な違いというやつだな」

「ふ~ん、王がいないって、ジャックスさんの祖国は共和制なんだ」


 異界(ちきゅう)の国家に好奇心の一端いったんを刺激されたのか、色の瞳を(きらめ)かせたレヴィアに苦笑しつつ、段々と話がれていくのをけるため、適当てきとうにはぐらかした整備兵長が本題を切り出す。


修理レストアしたクラウソラスのK型だけどな、嬢ちゃんに魔導核まどうかくの調整を頼みたい」


「あぁ、その件だが、少々(あつか)いの変更がある」

「えっと… 私達、そのまま四番騎を使おうと思うの」


「は? ゼノス団長、最初の注文オーダーと違うじゃないか!!」


 ちょっと待ってくれという風体(ふうてい)で眉を(しか)め、湿しめったジト目を向けるも、おっさん三銃士の筆頭は “戦況など絶えずうつりいくものだ” と(うそぶ)いて素知そしらぬフリだ。


 その様子に周囲の整備兵らが落胆する姿を(うかが)い、彼らが使い手である騎士達から無茶()りされて、わりを喰う事例ケースも多いのだろうとさっする。


「すまない、我が(まま)(まか)り通させて」


 一言だけびた後、王専用騎のK型をクラウソラスL型に改修する件や、二番騎と五番騎をゼファルス領に預け、そこで全般検査(オーバーホール)する件も耳に入れておいた。


「まぁ、クライアントの要望に従うのが俺ら技師エンジニアの仕事だからな。それは良いとして、改修後の指揮官騎は誰が使うんだ?」


 すでにL型を与えられているゼノス団長や、最新鋭騎を女狐殿からもらい受ける俺をのぞき、操縦者の適性がある騎士は銀髪碧眼の優男やさおとこロイド、個人的な事情で絡みにくいディノ、寡黙かもく朴訥(ぼくとつ)なザックスの三人だ。


 純粋な剣技の優劣で決めるなら新陰流をあつかうロイドだが、月ヶルナヴァディスの兄妹には此方こちらと同じく、受領予定の第二世代にあたる騎体きたい(あて)がうので、必然的に二択となる。


「確か、光属性の魔法が搭載とうさいされているんだったな、レヴィア?」

「ん、その通り」


「であれば、ディノとリーゼに使わせたいな」


 出会いがしらの決闘が尾を引いて、どうにもディノを気遣(きづか)くせがあるため、客観的な意見が欲しくて横目に団長殿の反応を(うかが)う。


「良いんじゃないか、あいつも近頃は筋肉美に目覚めてきたしな、ははっ」

「そ、それは別として、私も賛成かな?」


 若干、引きながらレヴィアも賛同するが、彼女も一度は騎体きたいを降ろされた幼馴染おさななじみい目があるので、あまり参考にならない。


 何やら、指標にする相手を間違えたかと思えど、特段の反対意見はないことから、その方向で取りえずは話をり合わせる。


 先にべた通り、K型に埋めまれている魔導核まどうかくの属性と、ディノの相棒である金髪緋眼(ひがん)の女魔導士は適合しており、搭載とうさい魔法の変更があるにしても初期化は不要だ。


それもあって、明るい表情になった整備兵達がキビキビと動き出す。


「ジャックスさん、リーゼの姉御あねごを探してきます」

「おう、頼んだ、さっさと終わらせて一杯いこうや」


「皆ッ、兵長の奢りだぞ」

「やった、ただ酒が飲めるぜッ」


「待てや、誰がおごると言った!」


 (にわ)かに気心の知れたゼファルス領出身の派遣組がき立ち、彼らに技術をおそわるリゼル側の者達も次々と便乗して、またたく間に工房内が活気づいていく。


 そんな様子に呆然あぜんとするヒスパニック系アメリカ人がひとり、片手で頭をおおいつつ、やりきれない声音こわねで言葉をつむいだ。


「おいおい、マジで酒代さかだいを持てと?」

「それでみなが頑張るなら良いじゃないか、後は任せる」


「くそッ、了解だ。非の打ち所がないほど、きっちり仕上げてやるさ!!」


 やけくそ気味にえたジャックスと整備兵らにより、旅次(りょじ)行軍の足手(まと)いにならない程度ていどに五番騎が修繕しゅうぜんされるかたわら、クラウソラスのL型()が組まれるも……


 有償修理にまわす二番騎と五番騎を歩かせる都合上つごうじょう、月ヶルナヴァディス兄妹とディノ達の二組が同行することになって、頼んでもいないのに何故なぜか、原型をとどめないほどチューンアップされたL型()しばらくお蔵入りとなった。


 ちなみに工房の連中が好き勝手しているおり此方こちらもブレイズ魔術師長が帝国領訪問にそなえた資金や物資などの準備、ライゼス副団長が巨大騎士に随伴(ずいはん)させる将兵の選抜を行い、騎兵と荷馬車を集めた小規模な部隊が編成される。


 その指揮はお目付け役がみずかるようで、補佐にアルド騎兵長を指名していた。したがって、軍部の留守居るすい組はゼノス団長と麾下(きか)の準騎士、デレス歩兵長らとなる。


 人選自体に問題は無いが、神経質で “石橋を叩き壊して渡らない” 副団長が同伴どうはんしてくれるのを面倒だとなげくべきか、いなかは微妙だ。

『続きが気になる』『応援してもいいよ』


と思ってくれたら、下載の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にお願いします。

皆様の御力で本作を応援してください_(._.)_

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ