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既に盟約は成されいる!(実は結構、早い段階で…)

 西方三領地と隣接する河川貿易の盛んな地域にて、グラディウスを基礎に新造されたクレイモアと呼ばれる第二世代騎の内、前衛の四騎が減速して左右に開けば… 隠れていた魔術特化の騎体 “グリダヴォル” の姿が露となる。


 麾下(きか)と似たような配色でも、臙脂(えんじ)の外套に包まれた細い躯体は正に魔術師のそれであり、左脇腹の近くで向かい合わせている両掌の間には眩い球体が生じていた。


『腕部の魔術機構、正常動作を確認。何時(いつ)でもいけますよ、ヴィエル』

『遅参の(そり)りは甘んじて受けよう。そして、此処(ここ)からは共に……』


 先祖代々の教育係でもあるエルフの義姉が後部座席より発した言葉を受け、直系親族で唯一の騎体適性を持つ侯爵家の嫡男が呟いて、急制動させた魔術騎の両足で大地に痕跡を残しながら、アークスフィアの魔法を撃ち放つ。


「「ギィイィィイイッ」」

「「グォオオォオォ!?」」


 左腕に刻まれた付与術式の増強効果もあり、激しく輝いた極光弾は網膜に与える負荷で瞳を閉じさせたまま、着弾点付近の小型異形ら二百匹(あま)りを灰燼(かいじん)に帰した。


 燃料たる魔力結晶の都合で数回しか扱えないが、中枢部に埋め込まれた天秤核(ライブラ・コア)の複製品は想定以上に魔力消費を抑えており、躯体調整に関わった義姉のフィリスが胸を撫で下ろす。


 “機械仕掛けの魔人(ブラキウム)” の魔導核を模した贋物(にせもの)()えども、本物に造詣(ぞうけい)のある森人族の熟練工が精魂込めて製作したのであろう。


 顔も知らぬ誰かに感謝を捧げていると、敵味方全ての注目が集まったのを機に義弟の次期当主は乗騎の外部拡声器から、戦域の隅々まで届くような大声を発する。


『既にアルマイン侯とゼファルス辺境伯の盟約は成った! 奮えよ、帝国の将兵ッ、我らには勝利の女神(ニーナ・ヴァレル)が付いている!!』


「「「うぉおおぉおおぉ――ッ!!」」」

「なッ、何なのよ! この状況は!?」


 急転直下の事態に見舞われ、思わず叫んだ西側城門の魔女ヒルデに紅い魔術騎が疑似眼球を向け、防御術式の刻まれた右腕を(かざ)せば市街地へ雪崩れ込もうとしていた猪人(オーク)や、深き者ども(ディープ・ワンズ)の末裔を圧殺して半透明の魔法障壁が展開された。


 その間にも前衛四騎のクレイモアは会敵(かいてき)を済ませており、雑草を刈るように薙ぎ払った両手用の大剣で、魔獣系中心の小型種を(まと)めて物言わぬ(むくろ)に変えていく。


 さらに追随(ついずい)してきた後衛の騎体も、とある技術者が皇統派内で広めた補助兵装のクラッカーを複数投げ入れ、爆散した無数の小鉄球で軍勢の中程にいた数百匹を死傷させた。


白狐(ファウ)殿の発明品、結構えぐいな……』


『あれ、人族の一般兵科にも非常に有効ですからね』

『硝石不足で火薬を量産できないのは良いのか、悪いのか』


 戦闘中行方不明(M I A)の扱いとなっている妖艶な淑女(レディ)が操縦者達の脳裏を(かす)め、雑兵を効率的に殺傷する無慈悲な装備に対して、汗ばんだ背筋を寒からしめる。


 心做(こころな)しか、圧倒的な体格差で小物を間引く巨大騎士(ナイトウィザード)隊の手も緩んだが、もはや健在な小型種の約八千匹と中型種の四十匹ほどで城塞都市を陥落させる事は不可能に近いため、師団長格の虎獣人は伝令の眷族らに撤退命令を与えて発煙信号弾も打ち上げさせた。


「…… 致し方無い。他部族の戦士を巻き添えにしてまで、(ましら)の子孫と刺し違える訳にいくまい、退き際を誤るのは許されない愚行だ」


 独り(うそぶ)いた虎男の動向を見逃さず、其々(それぞれ)に傾注していた各部族の獣人が特殊な呪具を握り締めて、指揮していた異形達に退却の意図を伝播させる。


 即座に(きびす)を返した亜人系の怪物や魔獣は殿(しんがり)の概念に乏しいようで、我先にと無防備な背中を見せて逃亡するも、小廻りの()かない騎体で対処するのは難しい。


 城塞歩廊(ほろう)から射撃を継続しているジグラント兵達も討って出ることなく、攻め寄せてきた小型種の軍勢は度重なる戦闘で(すさ)んだ旧穀倉地帯より、好き勝手に離脱していった。


「…… 撃退できたか」

「あぁ、紙一重だったけどな」


「これで晩飯が喰える、うちの隊は牡蠣のクラムチャウダーだった筈」

「余り期待するなよ、きっと御破算だと思うぞ」


 人的損耗の他にも貯蔵庫を焼き払われたのは(くつがえ)せない事実だが、窮地(きゅうち)を乗り越えた将兵数名の歓声が起こり、連鎖的に拡大して領軍全体が沸き立つ。


 ただし、2~3㎞先の荒野では領主アイロス麾下(きか)の三十数騎が押し込まれつつも防塁等を駆使して、大型種の魔獣らと綱渡りのような死闘を続けているため、主だった部隊長達は冷静に黒点の集合としか認識できない群影(ぐんえい)を眺めていた。


 若干、一般兵との温度差が生まれている様相(ようそう)に構わず、痩身の魔術騎を城門へ歩み寄らせながら、現場の統括(とうかつ)者を見定めていたヴィエル達は歩兵長と参謀役の魔女に一声掛ける。


此方(こちら)は続けて伯爵殿の援護に向かう』

『また後でお会いしましょう』


「貴公らの助力に心より感謝する」

「お二人の武運を祈らせて頂きます」


 やや社交辞令的な言葉ではあれども、丁寧に答礼した侯爵家の次期当主が乗騎のグリダヴォルを反転させると、大剣を装備した紅黒い巨大騎士(ナイトウィザード)(つど)い、主戦場の側面まで付き従っていく。


 そこから “滅びの刻楷(きざはし)” の横腹目掛けて各騎の搭載魔法を撃ち込んでいけば、鳥族の斥候(ハルピュイア)経由で城塞攻略の経過報告を聞き齧っていた荒獅子の獣人は(いさぎよ)く諦め、手駒の異形達を支配領域へ退()かせた。


 矢鱈(やたら)と連携攻撃に(こだわ)る三騎のベガルタ改を格闘戦で打ち破り、中破した一騎を仕留める寸前だった巨人形態の黒狼も口端など吊り上げ、“存外に楽しめたぞ” とだけ言い放って転進する。


 不幸にも逃げ遅れた少数の駆除を()って、どちらも相応の犠牲を出した数日に及ぶ侵攻は終息する運びとなり、西部戦線に再度の膠着(こうちゃく)状態が(もたら)された。

『マインの魂よ、空に飛んで永遠に……』(`・ω・´)ゞ(`・ω・´)ゞ

『別に死んでねぇンだわ!?』(´;ω;`)


という遣り取りがあったとか、ないとか。



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[良い点] クラッカー! 懐かしいです! 特化型は自機に合った状況なら強いですね!
[一言] 手榴弾とか実用化されてんのね。ま、火薬がまだまだ量産化できないから試作段階みたいだけど。 その内、ハーバーボッシュ法が確立されれば……
[一言] 戦後処理が済んだらラブコメに戻れるんですかね いや、ラブコメは傍流でしたかロボものとしては
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