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痛いのは嫌なので防御力に極振り希望 by レヴィア

『レヴィアッ!!』

()()なさい、炸裂風弾!』


 着地に合わせて二人で駆るベルフェゴールの左掌を大地へ突けば、赤毛の魔導士娘が発動段階で維持していた中級魔法を恣意(しい)的に暴発させて、強烈な反動と颶風(ぐふう)を引き起こす。


 それに(じょう)じる形で背部バースト機構を噴かせて空高く跳躍し、綺麗な前方宙返りを決めながら、浮き上がったばかりの翼持つ “機械仕掛けの魔人(マギウス・マキナ)” に踵落としを叩き込んだ。


 瞬時に肉迫された有翼騎は迎撃の余地なく、左前腕に固定された軽量かつ小型のバックラーを(かざ)すも、強引に押し下げて頭部へ渾身の一撃を喰らわせる。


『うきゃあぁ!?』

『くぅうッ!!』


 外部集音器を通じて俺の耳元へ届いた愛らしいユニゾンの悲鳴に惑わされず、諸共に乗騎を降り立たせるや(いな)や、()り足で()めてボディブローを打ち放った。


 此方(こちら)の動きに即応した相手は躯体を半歩退()かせ、鳩尾(みぞおち)と左拳の間に突撃槍(ランス)のシャフトを挟んで衝突の火花など散らしてから、連続したバックステップで間合いを取り直す。


猿人(ニンゲン)風情が図に乗るなッ!』


 苛立ちを含んだ声と同時に繰り出された鋭い刺突の初動を見極め、円軌道の体裁きで躱し… 切れずに騎体の左脇腹を浅く(えぐ)られつつ、遠心力の乗った上段廻し蹴りで有翼騎の左肩装甲を陥没させて、内部の人工筋肉にも幾らかの損傷を与えた。


 数歩よろけて(かが)んだ敵騎は先程の物真似なのか、地面に突いた左掌で炸裂風弾(エアバースト)の魔法(・バレット)を暴走させ、生じた爆風を主副四枚の翼に受けて上空へ逃れる。


『…… なんか、ベルちゃんの動きがさっきのゴーレムなんだけど』

『うぐッ、近接格闘の癖が付いたのかもな……』


 都市ライフツィヒの南門で行われている殴り合いを持ち込んでしまい、ぼそりと呟いたレヴィアの揶揄(やゆ)に思わず苦笑していると、一定の距離を取って緩やかに旋回していた有翼騎が眼下へ向け、ヴァンブレイスに包まれた左腕を突き出した。


 言わずもがな、攻撃対象は某辺境伯領を治める女狐殿の飛空艇だが、追加で下がってきたクラウソラス改良型も含めた三騎が半透明の浮遊障壁を展開する。


 防御系魔法を搭載している巨大騎士(ナイトウィザード)を救援に当てたアインストの抜け目なさと、自騎を船体に寄り掛からせた密集状態となり、船橋を死守しているゼファルス騎士達の手際は見事なものだ。


『そして、こっちが狙われるんだね……』


 急遽、矛先を転じてきた相手に(なげ)くも、赤毛の魔導士娘は防御姿勢を取りながら掲げさせた乗騎の左掌より、密かに組み上げていた炸裂風弾(エアバースト)の魔法(・バレット)を解き放つ。


 微差で射出された双方の魔弾がすれ違う間際、元々は飛空艇への攻撃を減殺するためであろう内圧調整の効果もあり、此方側の風弾が一早く爆散して敵弾を巻き添えにした。


 ただ、事後に急上昇を見せた有翼騎は船体の真上まで到達しており、淡い魔力光の宿った突撃槍を逆手に持ち替えると、全ての翼を畳んで自由落下し始める。


『チェックメイト、です』

『『させるかよッ!』』


 護衛に付いていた騎体の操縦者達が()えて、其々(それぞれ)の浮遊障壁を鋼鉄の両腕ごと動かして重ね合わせ、必殺の槍撃を(しの)ごうとする緊迫した状況の下… 魔法の即時連射ができないと(たか)(くく)っている標的目掛け、俺は横合いから新規兵装の “有線式バーストナックル” を容赦なく撃ち込んだ。


 (おおよ)その目算でしかなかったものの、亜音速で斜め上空へ飛翔していった剛拳が左主翼の付け根に直撃して()()り、“機械仕掛けの魔人(マギウス・マキナ)” の落下軌道を弾き()らす。


『なッ!?』

『うぁ…』


 バランスを崩した躯体は水平方向に輪転して、まともな受け身も取れずに飛空艇の側面方向へ墜落した。


 千載一遇と言える好機を逃さず、近くにいたクラウソラス改良型が襲い掛かり、無骨な鉄剣を袈裟に振るうが、惜しくも左腕部のバックラーに(はば)まれる。


 そんな光景を垣間見つつ、左上腕に内蔵されている多連装式リールの鋼糸巻き取りで戻ってきた前腕部を接続して、加勢するために乗騎背部のバースト機構を噴射させて飛び上がれば、視界の一角で友軍騎の胸郭(きょうかく)へ突撃槍を手放して添えられた有翼騎の右掌が(まばゆ)く輝いた。


『… 致命傷か』


 風魔法に穿(うが)たれて(たお)れる騎体より離れ、地面へ衝突した(おり)に各部を損壊させた()()()()()は大きく飛び退きながらも、いつの間にか把持(はじ)していた手榴弾を放り投げ、追随(ついずい)しようとしたベガルタの操縦席付近を爆破する。


 まさに窮鼠猫を嚙むといった様相に腰が引けた残る一騎の斜め前方、船体を越えた先へ両脚の人工筋肉を(たわ)めて降着するも、更なる後方跳躍で彼我(ひが)の距離を開けられてしまった。


 僅かな静寂を挟んで、歪んだ装甲の隙間より淡い燐光を漏らした有翼騎は暫く不動の状態となり、魔人の(つか)()らが転移離脱(ベイルアウト)したという判断からベルフェゴールを歩み寄らせた瞬間… 迅雷の如き神速で抜き打ちされた剣身が陽光に(きら)めく。


()もありなん、だが……』

『なんで痛いの!? 防いだのに!!』


 全て想定の範疇(はんちゅう)なれども、純粋な魔力を(まと)刃金(はがね)は腕盾を()()して、右前腕の騎士骨格(フレーム)まで届いており、感覚共有で伝わってくる想定外の理不尽な激痛にレヴィアも()れた。


 その叫びに応えるより先に左剛腕を振り抜き、前腕部のバースト機構も駆使した自損覚悟の凄絶な剛拳を有翼騎の脇腹へ喰い込ませて、外部装甲ごと内側の魔導炉を圧壊させる。


『… 退き際です、ラムダ』

『うぐぅ、いずれ借りは返す、騎士王!』


 再度、歪みの酷くなった胸郭(きょうかく)から蒼白い閃光が溢れて、捨て台詞(ぜりふ)を残した人外達の異質な気配だけが雲散霧消していく。


 一息吐いて周囲を見渡すと黒煙を(くす)ぶらせている飛空艇や、大破した友軍騎数体の残骸が目に留まり、敵騎撃破の対価として軽微とは言えない損失が出ている現状に歯噛みした。

魔力を纏わせた斬撃はオー〇斬りのようなものだと思ってください。クロード達は気付いてませんが、機械仕掛けの魔人に於ける基本技能なので自騎も使えたりします。日々の応援に感謝 (୨୧•͈ᴗ•͈)◞ᵗʱᵃᵑᵏઽ*♪


私の作品に限らず、皆様の応援は『筆を走らせる原動力』になりますので、縁のあった物語は応援してあげてくださいね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 機械仕掛けの魔人がまさかの死んだふり(言い方!) 迫力の攻防でした! [一言] 更新ありがとうございます!
[良い点] とりあえずゴーレムの残骸やパージされた飛行ユニットもしくは墜落した騎士の残骸の解析ですね。 [気になる点] 防空艦必要ですね。あと空母もしくは直掩機とかの開発にとっさの騎士からの脱出訓練と…
[一言]  趣味の極みロケットパンチ、実戦初使用。
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