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ライフツィヒの戦い

 因みに(くだん)の岩人形はエルフ族が開発した “機械人形(マキナ)” や、“機械仕掛けの魔人(マギウス・マキナ)” の原型となった代物であり、並行世界の壁を超える際に次元の狭間へ囚われた某領主の御令嬢(ニーナ)造詣(ぞうけい)が深い。


 それ(ゆえ)にゼファルス領軍との連携用に調整された各騎への通信回線を通じて、総勢二十体に及ぶ巨大騎士(ナイトウィザード)麾下(きか)に置き、騎士国側の軍勢と並走させているアインストの声が脳内に響く。


『騎士王殿の(もと)には双子のエルフがいたので既知かもしれませんが、敵主力は騎士骨格(フレーム)に取り付けた黄水晶の(かたまり)を核として、地精霊(ノーム)を宿らせたものです』


『あぁ、形成された天然鉱物の外部装甲は多少脆くても、核を潰すまで止まらないんだろう?』


 他にも四肢を損壊させるなど行動阻害が有効な点を補足すれば、肯定の返事と続けざまに鳶色(とびいろ)髪の魔導士エリザも言葉を添えてきた。


『躯体の大部分が土類で構成されていますから、雷撃系統の魔法は地面に流されて効きません。皆様、存分に注意してください』


『ん、私の魔法と相性が悪いのは覚悟していた事ですけど… 御免(ごめん)なさい、兄様』

『気にしなくても良いさ、剣技で圧倒してみせる』


 平素より気負わない態度のロイドが妹魔導士に応え、いつもの如く二人だけの世界を創り出している間にも… 彼我(ひが)の距離は縮まり、中核都市の南側に展開した敵勢との交戦圏内へ突入する。

 

 疑似眼球ではっきりと捉えられるようになった巨大ゴーレム達の前面には、直径80cmほどの岩塊(がんかい)が幾つも浮かんでおり、迎撃準備が整っているのを想起させた。


『ッ、陣形の幅を狭めろ、速度も落とせ!!』


 土属性の魔弾 “ストーン・バレット” を警戒して、歴戦の騎士団長が義娘と駆るクラウソラスL型を自身の指示とは逆に加速させ、射程に踏み込む寸前で乗騎の位置を繰り上げる。


 そのまま友軍と肩を並べて、慎重にライフツィヒの都市防壁から約600mの地点まで差し掛かれば、敵前衛に立つ三十基ほどの格闘型と思しき岩人形が呼応して、体躯とは釣り合わない太さのアンバランスな両腕を突き出した。


「「「ウオォ…オォオオ……」」」

『総員、屈め!!』


 洞穴に吹く風音のような唸り声を上げて撃ち出された岩塊(がんかい)(あらが)うため、他の僚騎と同じく急制動を掛けつつも、素早く(ひざまづ)いた団長騎が大地へ右掌を押し当てる。


 接地するや(いな)や発動したフィーネの得意魔法 “ストーンヘンジ” の効果により、地中から瞬時に複数本の石柱が(そび)え立ち、二段構えの物理障壁となって質量のある初射を受け止めた。


『うぁ、重い… 抜けてくるかもしれません』

『… 下がらせて貰う』


 激しい衝突音に(まぎ)れて、短く呟いたディノは専用兵装の盾に取り付けられた反応装甲が意味なく爆散するのを嫌い、中腰状態のガーディアを此方(こちら)退()かせてくる。


 双剣仕様かつ回避重視なので、防御は騎体両腕の錬金製手甲に頼るしかない月ヶ瀬兄妹(ルナヴァディス)のベガルタも後追いして、術式維持の兼ね合いで動けない団長騎の正面にはスヴェルF型の二騎が割り込んだ。


 其々(それぞれ)が格闘戦の邪魔にならないよう左腕に連結された小振りな盾を(かざ)し、破損部分を狙った次射の岩塊(がんかい)に粉砕されて飛散する大小様々な残骸を凌ぐ。


 無論、敵勢の攻撃は騎士国のみを対象とせず、一定の距離を挟んだ右隣のゼファルス領軍にも向けられており、複数騎の魔導士が連携して積層状に半透明の浮遊障壁を構築していた。


 その光景を一瞥したのも手伝い、単独で術師数人に相当するフィーネは逸材(いつざい)だと再認識していれば、連携用の通信回線でアインストが語り掛けてくる。


『応射して吶喊(とっかん)する。如何(いかが)か、騎士王殿!!』

『承知した、付き合おう』


『攻撃が途切れました、錬成術式を破棄します』

『散開して反撃を喰らわせろ!!』


 暫時の会話を聞いていた騎士団長の義娘が七割方は崩壊している石柱群を砂塵に帰し、咆えた義父の指揮で楔形(くさびがた)に広がった各騎が搭載魔法を発動させようとするも… 全弾打ち尽くしたと思わせて、実は温存していた岩塊(がんかい)を四基の巨大ゴーレムが速射してきた。


 攻勢に転じる僅かな隙を突かれて被弾したらしく、後方から装甲を削る耳障りな擦過音や、金属板のひしゃげる音が鳴り響く。


『そんなッ… 噓でしょう、ダーヴィ!!』

『ッ……ぅ…………』


 悲鳴染みた琴乃(ことの)の叫びで、スヴェルS型二番騎の操縦者達が致命的な損傷を(かぶ)ったのは(さっ)したが、振り返って確認できるような状況でもないため、胸裏に湧き上がった諸々を強引に飲み込んだ。


 早々に割り切れない感情を抱えながらも、ベルフェゴールの外部拡声器に組み込まれた振動板を振るわせて、既に射撃体勢となっていた麾下(きか)巨大騎士(ナイトウィザード)達へ号令を下す。


『『総員、撃てッ!!』』


 飛び交う声を拾う限り、此方(こちら)と同様に犠牲者が出たらしき友軍の指揮官(アインスト)も怒声を重ねた事から、双方の陣営に属する射出系魔法を搭載した騎体が連鎖的に反応して、発動段階まで組み上げていた術式を励起(れいき)させていく。


 狙い定めた標的の背後に隠れた数少ない術師型の仕業なのか、数多(あまた)の土塊が大地より生じて壁となるのに構わず、次々と殺到した風や焔など複数属性による一斉攻撃は轟音と共に土煙を立ち昇らせた。

そう言えば、たいあっぷ様の方でも公開してますので、宜しければ応援してやってください(*'▽')

(https://tieupnovels.com/tieups/291)


私の作品に限らず、皆様の応援は『筆を走らせる原動力』になりますので、縁のあった物語は応援してあげてくださいね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主要メンバー初の戦死者!? [一言] 更新お疲れ様です 確かに乱戦なら味方にかまってる暇は無いですね…… とりあえず撤退するなら、島津の退き口がいいですね そうでないなら、第三次…
[一言]  戦闘開始。 まずはゴーレムVSロボ。
[良い点] 更新ありがとうございます! 次次話が楽しみです!
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