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9.『Your heart is the only and last sanctuary.』

Your heart is the only and last sanctuary.(心は最後の砦だ)







 よし、コマンドを変更しよう。


   『バッチリがんばれ』

 ⇒ 『いのちだいじに』 


 ライフゲージがやばい。命大事にしよう。


 失言して怒ってないとか油断していたら、後から仕返ししてくる人だわ、この意地悪王子様!

 怖い!てか手が早いよ王子様! 乙女の唇をなんだと思っているんだよ!

 なんでこんなに手慣れているの!?

 やっぱりメイドなの!? 年上メイドに手を出しちゃうような人だったの!?

 お色気メイドのお姉様たちとあんなことやこんなことしちゃったの!?

 いやむしろメイドのお姉様から、

『いけない王子様、クス♡ 私がお・し・え・て・あ・げ・る、ふふ♡ 』

 みたいな!?


 くっ、なんて(ただ)れた王室の恋愛環境!

 こんなところにレッティを放り込もうとしていたなんて!ごめん、お姉ちゃんまちがっていたかもしれない、レッティ!


 私はちょっと涙目になった顔を両手で挟み込みんで悔しさにそんなことを考える。


「アリシア?」


「いえ、なにも考えていません。」


 学習したのでキリリと顔を作り、とっさに首を振る。


「そう?あまり変なことを考えているようだと、お仕置きするからね?」


「怖い!」


はっ、また素直に考えていること口にしちゃった!


「おや。私は完璧な王子様なんだろう?怖いだなんて心外だな。」


 完璧な王子様なんてここにはいない!とさっきまでの思い込みはさっさと撤回する。


「はは、さっきまでの貴族たちに見せていた仮面は私の前ではつけないのか。」


 そう言って私の頬を優しく摘まんで、柔らかさを確かめるようにふにふにと触る。


「あれは、対外的なものですもの。必要に応じてですわ。」


 仮面を被ることくらいはさすがに辺境伯の娘として学んではいるが、そういえば彼の前ではつけ忘れていたな。すっかり素のままで対応してしまっている。

 王子様に失礼すぎたかな、と今更ながらに心配になる。


「仮面、つけた方がいいですか?」


「いや、このままでいいよ。今更被られても胡散臭いだけだしね。」


いやまぁそれはそうだよね。


「貴族令嬢の中でこんな自然体で接してくるのは君くらいだろうな。」


ううん!それは褒めてないよね!?やらかしてしまっているだけじゃないですか。それは謝りますから、ちょっと!


「あの、頬っぺた伸ばさないでください。」


初めは遠慮がちに触っていた手が、両手で頬を伸ばすように引っ張られている。


「いや、本当柔らかいからどこまで伸びるのかなぁと思って。」


こんないたずらするなんて、意外とお子様なんですね?


「そんな簡単に、私に心を許して心配になるけどね、アリシア。」


「え?」


「さっき君に対してひどく言ってしまったけど、君から好意を向けられるのはそれほど悪い気はしない。」


 悪い気はしない、ってえ?え?

 理想を押し付けられるのは不快だけど、好意は少しは嬉しい、ってこと?それは拡大解釈しすぎかな。

 でもそうとしか……っていや待て待て、落ち着けアリシア。

 くそう、そんな意味深な言葉を吐かないでくださいよ!貴方はレッティといずれ結ばれるんでしょう?ぬか喜びはもう要らないですよ!?聞かなかったことにしよう。


 頬から手が離されて、私は熱くなった頬を自分の手で冷やしながら心頭滅却する。


「……玉座とはひどく空虚なものだ。」


 ん?急に何のお話ですか?首を傾げてウィルを見る。


「王なんてものは本来、国のためにすべてを捧げる存在だ。私だって、幼少時よりなにが好きで嫌いかなどより、なにが国のためになるのか考えるよう教えられてきた。自分のものだっていうのに、この身も、心すら、私だけのものではない。私の自由にものになるものなんて、ほんの僅かなものだ。」


 いつも強く自信に満ちている赤い瞳が伏せられ、思わずどきりとした。

 いつもより表情も声も柔らかい。

 これは、ウィルの弱音、なのかな。


「君は私の婚約者になった。否が応でも、唇も、その体も、私に捧げることになる。」


 頬に添えていた手を取られ、中指の爪にキスを落とされ、そのまま指を甘噛みされる。

 慌てる私に、ウィルが笑う。

 彼の手が伸び、親指の腹で唇を押され、先ほどの口づけを思い出す。


「心は最後の砦だ、アリシア。どうせ政略結婚だ。憐れにも婚約者になる相手には、心くらい好きにしたらいいと思っていた。けれど、もし君が私に心まで許すなら。唯一君に残され自由となるその心まで私に明け渡すと言うなら。」


「うわ、」


 唇を押していた手が離れ、とさりとソファに押し付けられて淑女らしくない悲鳴を上げる。

 ふかふかソファのため、痛みはない。けど、急にふわっと持ち上げられて驚いて目を瞑ってしまった。

 恐る恐る目を開くと、すぐ間近に彼の赤く光る美しい瞳があり、ぎくりと体が強張った。

 彼の瞳に怯えた自分が映り込む。


「覚悟して。私は数少ない私のものに執着する。きっと君は君の欠片ひとつすら、自由になるものはない。」


 その獰猛な目に射抜かれ、涙目でふるふるとぎこちなく首を振って怖いと伝えてみる。

 それを見て、ウィルはふっと小さく息を吐いてぽんぽんと頭を優しく撫でてくれる。

 その優しい動作にほっとしたのも束の間だった。


「それは、煽っているの?」


 眇められた目から、鈍く光る瞳が覗く。

 こわいこわいこわいいいいい!むりむりむり!!

 ちがいます!と否定の言葉を吐く前に、唇に彼のそれが重ねられた。

 強い力で手を掴まれて、呼吸ができないほど激しく角度を変えて責め立てられて、抵抗しようとした腕は力を失って彼に縋りつくようにウィルの服を掴む。

 だめだ、ウィルの服に皺ができてしまう。

 ぼんやりしてきた頭で、そんなことを考える。

 私はこの状況に溺れないようにするのが精いっぱいで、扉の向こうの喧騒に気がつくことができなかった。


「……来たか。」


 ウィルが私から唇を離してそう呟く。

 はっ、と荒く呼吸をしていたら、ウィルが私の腕を取って起き上がらせてくれる。

 彼は既に何事もなかったのように涼しい顔をして、扉の方を見ていた。

 なんか悔しい!経験値の圧倒的な不足!



 バタ──ンッ!



 とか悔しがってウィルを睨みつけていたら、それはもう叩きつけるような勢いで扉が開かれた。




 え?

 今お伺いも挨拶も何もなかったよね?

 第一王子様のお部屋をそんな断りもなく、しかもこんな叩きつけるようにドア開ける不敬過ぎるやつ、いるの?




 あまりのことに目を瞠ると、そこにいらしたのは第ニ王子のユージーン様だった。

 おっとぉ、攻略対象者その2じゃないですかー!










『Your heart is the only and last sanctuary.』直訳すると、「心は唯一最後の聖域だよ」ってところですかね。「最後の砦」は、"last bastion","last stronghold"とか使います。が、今回はちょっとニュアンスが違うなぁと思って、このタイトルになりました。


たまに我に返ってなに書いているんだ自分(恥)ってなりますけど、そんなの気にしたら負けですよね!

コマンド選択 ⇒『ガンガンいこうぜ』


お読みいただきありがとうございます☆

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