闇精霊と手芸部員
ある日の昼休み、教室に残っている数少ない2—Aの生徒達は騒然としていた。
何故なら、滅多に揃わない手芸部員の全員がこの教室にいるからだ。
―――――—
今、僕の前には非凡人が八人、もとい手芸部員が八人いる。
僕も含めたら九人だけど。
「あの……何で此処にいるんですか?」
「俺の勘だ」
「未來の超直勘…か」
一人目、朝陽 未來。隣のクラスの二年生。超直勘という当たる確率がすごく高い勘を持っている金髪の不良……ではなく、不良に見える優等生だ。実際授業にも毎回出ているし授業態度も良好、成績だって僕よりも上だ。
兎も角、未來が此処に来た方が良いと言ったなら、確実に何かが起こる。前、風の強い日の授業中に急に廊下に出ろって叫ぶから全員で廊下に出たら、鉄骨が教室の窓ガラスを突き破ってきたという事件があった為、皆の彼の超直勘への信頼は絶大だ。
「ところで、俺様はいつまで此処にいればいいんだ?
そろそろ果たし状の相手に会ってやらないといけないんだが」
「ボクもなの~」
二人目、幡野 魁星。未來と同じクラスの二年生。眼鏡をかけている優等生に見える不良で俺様だ。彼は喧嘩が物凄く強い事と、沢山の女子と関係を持っている事で有名だ。遊びだと理解してる女しか抱いてないから問題は無いんだって。
三人目、青砥 奨。黄昏兄弟と同じクラスの一年生。美少女に見える女装をした美少年だ。アイドルグループNightParadeに所属しているアイドルだ。男だと理解しているのに惚れる男子が大勢いて、[ショーちゃんを見守る会]という物まであるという。可愛い見た目で可愛い口調だが、性格は男らしくて虫も余裕で触れる。たまに男子から果たし状を貰っている。
「ねぇ始、ほっぺ突いてるのに起きないね」
「そうだね終、全然起きないね」
「…んにぅ……」
四人目、西江 隼太郎。充希先輩と同じクラスの三年生。いつでも寝てるし何処でも寝てる、起きていたとしても寝ぼけている人だ。よく充希先輩に世話をされているのを目撃されている(そして腐女子が歓喜している)。学校で殆ど寝ているのに成績は何故か上位だ。流石にテスト中は起きているらしい。終わった途端寝始めるらしいけど。
手芸部の総部員数は九人。此処にいる手芸部員も九人。
つまりは手芸部員が全員此処、2-A教室に集まっている訳だ。うん、自由人な手芸部員が全員集合なんて、どんな一大事が起こるのか考えるだけでも恐ろしいね。
本当、何が起こるのか……っ!?
なっ!?体が動かない!!
……どうやらこの教室にいる全員が同じ状態になっているみたいだな。開いていた扉もいつの間にか閉まっているし……………なんか凄くこの現象に心当たりがあるな。これで床に魔法陣が──出てきちゃったよ。あぁもうこれ異世界召喚で確定だわ。
マジでどうしよう。体が動かないから召喚魔法陣の書き換えも出来ないしなぁ……。
=ガラガラッ=
っ!? 何だ?誰だ!?
「ただいまー……!?」
「侑真?……っ!?」
「何々どったの美崎っち……!?」
「三人共何かあったのか……っ!」
ワラワラと四人が入ってきた。
あの四人はこのクラスの中心グループで日々少女漫画のような四角関係を繰り広げている。そして四人も教室に数歩入って体が動かなくなり、背後の扉が勝手に閉まった。
そこまで見えた所で魔法陣が発動し終えたのか、視界が光に包まれた。
2-A中心人物達の少女漫画的な四角関係は周りを勘違いで巻き込んでくる為、とても面倒臭いというのが学年内共通の認識。