闇精霊の日常
ドカッ、ドカッ
「オラッ!何とか言ったらどうなんだ!」
僕はクラスメイトの谷崎 途織に蹴られ続ける。僕は日本で学生をしていると虐められる運命にでもあるのかな……。
あ、名乗り遅れたね。僕は華月 綾音。
異世界旅行中に学生生活を楽しもうと思ったけど何故か虐められている異世界の精霊だよ。因みに高校二年生だ。
正直に言って人間が嫌いになりそうだけど、僕が所属している部活の部長の充希先輩や後輩の虎徹君は優しいから、何とか人間全体が嫌いにはなっていない。谷崎とか虐めてくる奴は嫌いだけどね。
「けっ、このぐらいで勘弁してやるよ!」
おや、谷崎が自分から諦めるなんて珍しい。何か悪い物でも食ったのか…?
「綾音君!大丈夫かい?」
「綾先輩!大丈夫ッスか!?」
ああ、充希先輩達が来たのか。そりゃ逃げるよね。
……何故かって?それはね、この高校の手芸部には何故か非凡人が集まるからだ。充希先輩は有名な会社の社長子息で瞬間絶対記憶と高い暗算能力を持っているし、弟の虎徹君は古武術大会で何回も優勝している程の実力者だ。まあ、実際に僕っていうイレギュラーも所属しているしね。
「うん、大丈夫。充希先輩も虎徹君もありがとう」
「それなら良かったよ」
「元気が一番ッスからね!」
何故僕が手芸部員なのに虐められているかというと、僕が他の部員に比べて非凡さを出していないからだ。
っと、そういえば……
「充希先輩達はどうして此処に?」
「それが、始君と終君がね…」
「ああ、また黄昏兄弟の悪戯ですか」
黄昏兄弟というのは一年生にいる悪戯好きで有名な双子で何故か僕に懐いている。だからか、大概悪戯をした後に駆け込んで来るんだ。
因みにこの二人も手芸部員で、兄の始は楽器演奏の天才、弟の終は歌の天才だ。どうして吹奏楽部と合唱部に行かなかったんだろう。
「そうなんッス!部室に呼び出されたけど居なかったんで、綾先輩の所なら二人が居るかと思ったんスよ!」
「フフ、今日という今日は許さないよ……」
や、ヤバイ……あの温厚な充希先輩が、三年生の間で怒らせて敵対すると危険だと言われている充希先輩が怒ってる……!
「そ、そうですか。でも今日はまだ来てな」
=ガラッ=
「「綾くーん!匿ってー!!」」
「「「…………」」」
僕は、教室に入り周りも見ずに飛び付いて来た哀れな双子の首根っこを掴み充希先輩に笑顔で差し出した。
「「えっ……?」」
「充希先輩、どうぞ♪」
「ありがとうね、綾音君」
「「ご、ごめんなさいぃーーー!!!!」」
その日、校舎中に悲鳴が響き渡ったとかなんとか。




