表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/138

79:もうすぐサービスが終了するあれ

挿絵(By みてみん)


sbnb様からいただきました!!

ありがとうございます!(^^)!

「それともう一つ」

「角田の件ですね?」

 即座に円城寺が返答する。

「……そう」


 和泉が気圧されている。

 その様子を見ているのは、周にとって少なからず小気味が良かった。

 日頃、なんだかんだと人をくったようなあの男が、ずっと年下の少年の手玉に取られている。


「報道では実名が出ていませんでしたが、彼が昨日、何者かに殺害されたという事件は存じ上げております。その件で間違いありませんか?」

「そう、なんだけど……」

「けど? なんでしょう」

 我慢できなくなって、周は思わず顔を背け、吹き出してしまった。

「なんで、知ってるの?」

「……そこはまぁ、多くを語ることはカンベンしてください」


「君は彼のことを、どう思ってた?」

「……幼稚だな、とただそれだけです。注目して欲しくて、好きな相手を振り向かせたくて、でもどうしたらいいのかわからない、そんなただの子供です」


 ああ、そういうことか。

 今になって周も理解した。

 性格が歪んでいるとか、親の躾がなっていないということもあるだろうけど。

 

 角田は単なる『幼児』だった。


「君も角田に、嫌がらせを受けたことがある?」

「ええ、そのきっかけとなったのは去年の夏です。角田が当時交際していた……別の学校の生徒さんですが、街中で偶然、僕は2人が一緒にいるところに出くわしたのです。角田はおそらく自慢したくて、彼女を僕に紹介したのですが……その彼女がどうも……僕の方に好感を持ってくれたようで……」

 そのあたりは一応、円城寺も17歳男子に相応しく、少しばかり言いにくそうにしている。

「連絡先を交換してほしいと言われ、特に断る理由もなく……そうしたら、よく彼女から電話が来るようになって。それ以降でしょう。角田が嫌がらせを始めてきたのは」

 知らなかった。

 それと同時に、以前担任教師から聞いた話が真実だったことに、少し驚いてもいた。


「ところで……君はSNS、やってる?」

 和泉はお茶を飲んで、気持ちを落ち着かせているようだ。

「噂には聞いたことがあります、SNSとやら。ですが我が家はご覧の通り、パソコンや通信費に回す金銭的な余裕などありません。かくいうこの僕は、未だにPHSを使用しています」

 ああ、もうすぐサービスが完全に停止するっていう。


「何ですか、学校裏サイトだとかなんとか。気に入らない生徒を攻撃する為に悪用されていると聞きます。角田が僕のことを、何やら掲示板とかいう公の場所に書き込んだと聞いていますが……」

「それを見た?」

「お節介極まりない同級生が、何度となく見せてきました。が……」

 円城寺は眼鏡を外す。


 周も初めて見る友人の素顔。切れ長の目に、すっと通った鼻筋。分厚い眼鏡の奥に隠れていた彼の素顔。

 なるほど、角田が嫉妬するわけだ……。


 彼は眼鏡のレンズを拭きながら、

「ハッキリ言って、取るに足りないただの誹謗中傷です。しかし。突き詰めれば名誉棄損で訴えることも可能です。ネット社会は匿名性が高いとはいえ、出所を特定することが不可能な訳ではない。その気になれば法廷へ持ち出すこともやぶさかではない」


「そう言えば周君から聞いたけど、弁護士志望なんだったっけ?」

「志望ではありません、既に確約された未来です」


 ああ、そうだ。

 この前向きさ、ひたむきさ。


 出会ってからそんなに時間は経過していないが、強く彼に好感を覚えるのはきっと、そういう要素あってのことだろう。


 和泉も同じように感じたのだろうか。

 いつにない、本物の笑顔で微笑む。


「君は、とっても賢いんだね。論理的、かつ理知的だ」


 すると。円城寺は頬を赤く染める。

 そんな表情は初めて見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ